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第198話 クマちゃんニュース!

 リオが抱き上げたもこもこしたリポーターが、子猫のような声で「――クマちゃ――」と言った。


『――もっとちゃん――』と。


 もっと増やしましょう、という意味のようだ。


「えぇ……。つーかこれ増やしてどうすんの? みんなで振んの?」


 金髪の現地人は思いついたことをそのまま尋ねた。

 腕の中のリポーターがハッとしたように、もこもこした口元を右手の肉球で押さえる。


「何その『凄いこと聞いちゃった!』みたいな反応」


 リオはもこもこしたリポーターに、怪しいもこもこを見るような視線を向けた。

 リポーターはゆっくりと頷き、集音魔道具を通した声を「――クマちゃーん!――」と響かせた。


『――クマちゃんニュース!――』


 エンディングテーマである。


「うるさっ! ちょっとクマちゃんいきなり歌い出すのやめてほしいんだけど」


 クレーマーは現地にもいたようだ。


「――クマちゃん、クマちゃん――」キュ――、キュ――、キュ――、キュ――。


『――クマちゃんニュース、お時間ちゃん――』


 曲は始まったばかりで唐突に盛り上がる。可愛らしい歌詞は『クマちゃんニュースのお時間です』らしい。

 子猫のような歌声が森の中に響いている。増殖中の草が、キラキラと輝きを増した。


「……めちゃくちゃ光ってんだけど。何その変な歌」しつこいクレーマー。点灯中の赤いランプ。


「――クマちゃん、クマちゃん――」キュ――、キュ――、キュ――、キュ――。


『――クマちゃんニュース、お時間ちゃん――』


 嫌がらせにも負けず繰り返される『クマちゃんニュースのお時間です』

 ピンク色の草はどんどん増えてゆく。


「――クマちゃーん!――」


 始まったばかりの曲は、最高のラストを飾った。



『――クマちゃんリオちゃんニュース!――』と。



「いや俺の名前は入れてくれなくていいから!」


 彼の腕の中からエンディングテーマを叫ぶもこもこ。「つーかマジでうるさいんだけど!」叫ぶ現地のクレーマー。

 シンガーソングライターの新曲『クマちゃんニュースwithリオちゃん』にごく一部の現地人から苦情が殺到している。


「つーかなにクマちゃんニュースって」


 文句を言う現地人。現在撮影中で彼も出演中である。


 忙しいもこもこはリオの質問に答えない。

 リポーターは彼の腕に魔道具を置き、可愛らしい肉球で一生懸命拍手をしていた。

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