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第11話 着々と

 クマちゃんは、実用的で格好いいそれから出る癒し成分に思いをはせていた。



 二人に置いて行かれてしまったクマちゃんは、扉をカリカリしている。


「危ねぇから着いていけねぇぞ。お前戦えないだろ」


 渋い声がクマちゃんに戦力外通告を言い渡す。

 マスターは扉と戦う最弱のもこもこを拾い、執務用の大きな机の上に乗せると仕事に戻った。



 忙しそうなマスターの机の上にいるクマちゃんは、周りの様子を観察している。

 隣の部屋には女性職員達がいるらしい。


「最近肌の乾燥が気になるんですよね」

「わかる~私も乾燥でガサガサだし~、ちょっとのども痛くて~」

「そういえばいつもと少し声が違いますよね、かすれ気味っていうか」


「そう~。だから事務所に加湿器が欲しいって言ったんだけど~、検討しますって~」

「それ絶対検討してないやつじゃないですか」

「ほんと検討しますって言って検討してるの見たこと無いんですけど~」



 机の上にはペン立てや書類が置かれている。

 紙を押さえる重しは動物の形のようだ。


「それが気になるのか?」


 クマちゃんがじっと見ている置物に気付いたマスターが、猫のようなお手々にそれを渡す。


「欲しいなら持っていっていいぞ。熊の形だから気になるんだろ」


 貰えるものは貰うタイプのクマちゃんは、早速それをリュックに仕舞う。

 意外と可愛いものが好きなマスターは、机の上でもこもこしているクマちゃんに手を伸ばし、膝の上に乗せた。


 クマちゃんは仕事の様子を眺め、時々頭を撫でられつつ、二人が帰ってくるまでの時間を過ごした。



「まじ疲れた~。もー最近会議多すぎでしょ」 


 疲れからかいつもよりかすれた声のリオは、暗闇のなか椅子に座り、テーブルに凭れている。

 森から帰ってきた二人はクマちゃんのお迎えに行き、自室に到着してすぐ、マスターに呼び戻された。


 最近問題になっている大型モンスターの増加。

 奴らのせいで会議の回数が通常の三倍以上だ。


 ルークはいつものようにベッドに腰掛け、膝にいるクマちゃんを撫でている。

 彼は疲れているようには見えない。


「あれ、コップが一個しかない」


 水が飲みたいリオがコップを探す。

 いつもはテーブルの上に二つあるはずのコップが、一つ足りない。


「えぇ……これ、また俺が事務の人に冷たい目で見られるやつじゃん」


 リオがかすれた声で呟く。

 悲し気な男は事務の人と戦うため、暗闇から光のもとへと旅立った。 



 クマちゃんはテーブルの下に置かれた熊の置物を、つぶらな瞳でじっと、見つめていた。

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