表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/505

第9話 届かぬ願い

 クマちゃんは現在一人でお留守番をしている。


『俺達はしばらくギルドの会議で戻れないから、ドアをカリカリしないように』


 最近小言が多いリオの言い付けを守り、ドアには近付いていない。

 再びルークに置いていかれてしまったのは悲しいが、クマちゃんにもやらなければいけない事があるのだ。

 

 リュックの中から見つけた小さな本を開く。


《はじめての工作》 


―初級編―


・元になる素材と魔石を用意し、作りたいものを想像する。

・杖で魔力をそそげばできあがり。


 なんだか簡単そうに見える。

 うむ、と頷く。


 この本によると、作りたい物に合わせて素材を探さなければいけないらしい。

 魔石の入手はどうすればいいのだろうか。

 とりあえず部屋の中を探索してみよう。



「ただいま~。って部屋暗!! この部屋めっちゃ暗いんだけど!!」


 リオはドアを開けてすぐに部屋の異常に気が付いた。

 いつもは自動でつくはずのランプが消えている。

 そして暗闇の中で白っぽい何かが動いている。


 同時に部屋に戻ってきたルークは夜目が利くのか、しなやかな動きで暗闇の中にいるクマちゃんを掬い、腕に抱えた。

 もふもふの顎の下を撫で、長い指を器用に動かし曲がっている赤いリボンを直す。


 そして、そのまま何も言わずに部屋を出ていった。 


 

「ぜってー飯食いに行っただけでしょあれ」


 今朝方期待を踏みにじられ心が擦り切れているリオは、暗い闇に包まれた部屋の中で、孤独に呟く。

 そろそろ夕食の時間だ。

 あのルークが部屋の明暗ごときを気にするはずがない。



 リオの中で容疑者は一人しかいない。

 だが証拠がないため捕まえることが出来ない。

 あの小さなもふもふがひとりで、届かないはずの壁の魔石をすべて外せるとも思えなかった。


 捜査を打ち切り、ギルド職員に冷たい目で見られながら、始末書を書く。


 嘘はよくない。

 理由もなく〝全部なくしました〟と書くわけにもいかない。


 真実は後でマスターに報告しよう。

 今はとにかく魔石が欲しい。



 リオの願いも虚しく、外壁に並ぶその窓は、ひとつだけ、ずっと暗いままだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ