5~1章~
馬車を囲む魔物達の群れ。
車軸が壊れた馬車を守るかの様に次々と出現する土壁、
その土壁を壊す大型種の魔物。
土壁の内側には倒れている護衛、
壁の隙間には近づけない様に懸命に守る騎士達。
そして壁の外に2人の騎士が魔物を次々と切り刻んでいる。
(魔物の血の匂いか?まだ離れているが異様な匂いがここまで匂う)
間に合え!とばかりに地面を蹴った。
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今迄に散々プチプチと潰してきたが、
ここまで血の海だと何かくるものがある。
私は馬車を周りにせり出した土壁、
その壁を守る騎士達の外側を周回しながら機銃を乱射する。
『爺ーーーーーー!』
子供にこんな血生臭い場面を見せるべきでは無いのと、
危険だからと車内に入れておいたのだが。
幼女の掛けているゴーグルは、
私と視界が共有しているのを忘れていた。
泣きながら砲塔ハッチから飛び出して馬車の方に駆けだす。
まだ魔物が沢山居る危険な場所。
飛び出した幼児を捕まえようとするがすり抜けて行く。
(あ~~~もう!)
こうなったら一刻も早く、残る魔物を殲滅するしかない。
大型種には主砲を、中型種にはM2重機関銃を
小型種には7.62mm機関銃をと乱射していく。
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銃音が鳴り止む頃に幼女が叫んでいた。
「¥09@:・¥!」
「#$%&<>?@」
幼女の発する音声では何を言っているのか分からないのだが
私の頭には今迄の幼児の会話と一緒で
『爺ー!』『爺ーー!』『しっかりして!』と聞こえるのだが…。
ショルダーポーチから取り出した瓶を幼女が爺に必死に
飲ませてたり傷口に掛けたりしてる。
『メディ!』
幼児の両手が淡く光る。
『メディ!』
『メディ!』
『メディ!』
『メディ!』
「ごばっ!」
「$%=~<>?@;」
(『爺ーーーーーーー!!!』)
息を吹き返したのか、幼児が涙ながらに縋り付いた。
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ー戦闘後ー
爺さんの飲んだ物はポージョンみたいな物だろうか?
それも可成り高級な品みたいだ。
しかし、完全では無いらしい、未だに傷口はうっすら開いているみたいだし
顔色も悪い。が、息は安定している。
それと幼女が唱えていた『メディ』とは何だろう?
ヒールみたいな物だと考えるのが妥当だろう。
そして…もう二人。
女性の騎士と女性の従者が、爺の横で並んで横になって眠っている。
最初、焦りましたよ。戦闘が終わった後に2人の騎士が近づいて来て
「姫から離れろ!!」と、
血に染まり淡く光ながらユラリユラリと近づく女性の姿に。
どう見てもソレ両足が折れているよね!腕折れてるよね!
折れている腕に剣を縛り付けて振り回してたなんて頭オカシイ。
それに、足が折られて骨がむき出しなのに立って動くって…。
そこに「めーーーーーっ!」
私に近づく2人に幼児は私の前で、
両手を広げて「とおせんぼ」と立ちはだかる。
2人は「「姫様…」」目を見開く、
急に力が抜けた様に足取りを止めると気が緩んだのか二人は気を失った。
折られた足で立ち上がり歩くって…気合でどうにか成るものでは無いのだが…。
(解らんでも無い、突然現れた戦車が守るべき馬車のまわりを周回し)
(派手な音を立てながら魔物を殲滅しているんだから…)
(敵か味方かも判らん奴が、自分たちの大事な姫?を危険な場所に連れてきたんだし)
(しっかし…なんだ???)
(「めーー!」の時に幼女の半径50mの死んだ魔物どもは)
(のしイカみたいにペシャンコになったゾ)
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ポーションの量が足りてないのか
横たわる騎士達はまともな治療さえされてはいない。
怖い2人も爺たる人物も横たわったままだ。治療をする人が居ないのだ。
ん~~~
医療車両を出せるかな?
と思いヘンタイ(変形)しようとしたが出来なかった。
【ヘンタイ要素が足りません】
なん…だ…と…。
ん~~~。あっ!有った有ったヘンタイ的なのが。
何とか脳内で合成して目的の日本医療車両にヘンタイする事が出来た。
米軍の衛生兵。彼らはガチで戦う事が出来る。
日本の衛生兵の品が8品目とすると米国の衛生兵の所持品は20品目を越える。
衛生兵に関しては日本は1988年まで可成り遅れていた。
米軍の衛生兵には便利なコンバットガーゼや添え木の代わりや多々に使える
SAMスプリント。チェストシート、直接打ち込む点滴等など。
ベトナム、カザフスタン、イラクと言う戦歴は伊達じゃ無い。
今ではゲル注入剤もあるんだっけか?
包帯を巻くとか簡単な治療は私でも出来るのだが、
片っ端から医療車両にぶち込む。するとどうでしょう?
3分も経たずに治療済みの騎士達が出来上がり♪意味解らん。
最も、日本の医療車両に拘ったの訳があるのだが…。
米軍の治療が優れているのは緊急はそうだが、
安全な後方に一級の医師たちが控えているからなんだよなぁ~。
まぁ…4台1セットの日本の医療車両、Getだゼーーー!!
治療を開始していたら、途中で幼女が一度目覚めた。
幼児のお腹が鳴ったので、馬車に残っていた物を渡したのだが、
食べずに
両手に干し肉を握ったままバンザイの姿で寝てる姿を見るとニヤけてしまう。
取り敢えず、火を絶やさないで…と、皆には毛布を掛けておくか。
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自分の身体は食欲や睡眠欲が無いのかなぁ~。
改めて思う。転生か?転生なのか?そして戦車なのか??と。
4人が寝ている横で今更ながら自問自答している。
一つ 何故、草原で一人で居たのか。
一つ 街道にあんなに魔物が居るだろうか?
一つ 幼女の言葉が訳の分からない音声に聞こえる。
一つ アノ2人、幼女に対して「姫様」と言ってたな。
それはそうと何かログが出ていたな。
ステータスボードを出して確認してみる。
【条件を満たしています M4(シャーマン)の派生を統合しますか? Yes/No】
今みたいな急を要する場合もあるしな。
悪い事には成らないだろう。Yes、ポチっとなぁ~。
すると私の身体が白く輝くと共に変形した。
ぶっ!!!
何コレ何コレ何コレ…。
M4(シャーマン)カリオペ、クロコダイル、チューリップの合体!!
デコレーションケーキかよ!
重心が可成り上の方にきたぞ!ゲテモノM4になっちまった。
いくら昔の武装でも、いち戦車にして過剰搭載だろコレ!
なんだ?このヘンタイ武装は?
あっ…私、スキル(ヘンタイ)だった……
あれ?…何故か視界が歪む…ゾ…オカシイなぁ~~グスン。。。
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M4(シャーマン)の派生(武装)
チューリップ・ミサイル搭載
カリオペ ・16連装ロケット砲搭載
クロコダイル・火炎放射器搭載「ヒヤッハァー」
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魔物の群れを倒しきったと思っていたのだが、
あれから朝にかけて来るわ来るわ。
もう笑うしかない程に、犬の群れや鳥の群れ、
またもゴブリンかオークか知らないが来るし、あげくに熊や大きな蛇。
負傷兵を動かせる状態ではなかった為に移動していなかったのが痛かった。
恐らく死体を地面に埋めておいたとは言え血の匂いがまだするのであろう。
集まる魔物達を見ながら乾いた笑いしか出ないな。
寒い地方は「動物は大きい」とパソコンで画像を見た事があるが、
私の知っている大きさの2~3倍はありそうだ。
「うわっ、私の転生……鬼畜すぎ!」
「鬼畜ウルトラハードモードEX」って感じか?
7.62mm、20mm機関砲、22mm105榴弾砲のフル回転のヒヤッハー状態。
死体を埋める間も無く来るものだから、血が血を呼ぶ。
普通、自動小銃でさえマガジン10本も連続で撃てば銃身辺りがヤバイ事になる。
悪条件でも発砲できる安心なAKと言う小銃でさえ、支えてる木から炎が出始める。
流石に、何発撃ったか分らない
「作られから1世紀近い安心と信頼のM2重機関銃」も、
砲身が真っ赤になり、熱で持たなくなってきた。
結果的にはなるがM4統合しておいて良かった。
「ヒッヤッハァー!害獣は消毒だぁー!」と火炎放射器を撒き散らす。
ゲル化燃料はちょっとやそっとでは消すことは出来やすまい。
お蔭で土壁に守られている外側の外周では火の海。
そこに多段ロケットを連続水平発射の地獄絵図。
近接は銃だけで無く、
腕に剣を持って扇風機みたいに回しながら振るってました。
良いねコレ!360度手首回転。
何匹倒したか、数えるのが馬鹿馬鹿しい。
私は腹が空かなく疲れを知らない身体だと思っていたのだが、
明け方頃には、怠くって怠くって気を失う寸前だよ。
しかし、あれだけ直ぐ横でドンパチと砲を乱射してたのに、
負傷して寝ている騎士達が一度も目が醒めて無いのが不思議でたまらなかった。
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ふぅ~~
夜明けか…。
やっと終わった…魔物死体の山とか少し地形が変わったとか気にしないでおこう。
転生物などで魔物を肉として扱う描写があるのだが、コレ食べれるのか?
よくアイテムBOXに入れると言う描写もあるよな…、
でも私のアイテムBOXは時間停止なんぞ無縁な倉庫みたいだし…。
何でそう思ってるかと言うと、先程「酒保」で水を出そうとしたんだ。
返り血や土埃やなんやかで車体が恐ろしい事になってるからね。
少しでも洗い流そうかな?と、そしたら出ないでやんの…。
ん~~~。
食料が出せないとなると…。
チラッ…コレ食べれないかな?と豚の魔物と牛の魔物らしき物を見てみる。
ちょっと捌いてみよう。ロースやもも肉辺りだろ素人でも捌けるだろう。
最初は血抜きして自分の体温で肉が傷まない様に冷やすんだったけ?
この牛の大型種を倒すときは苦労したなぁ~。
主砲じゃ効かなくってミサイル連射でどうにかしたよなぁ~。
…と捌いていたら、後ろの馬車の方から悲鳴が聞こえた。
振り返ると、複数の火の玉が私に向かって飛んで来る。
えっ?
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いまだにルビの打ち方が上手くいかない・・・orz