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こうして居ても拉致が開かない。
しかし、この見渡す限り平原の中で、幼児がたった一人とはどんな状況だ?
近くに民家らしきものは有るとは思えない。
気軽に幼女に声を掛ける事など出来なくなった、現代のせちがない日本事情。
普段なら遠くから見守りながら警察に通報をするのだが…。
ここは町中でもなく、言うなれば田舎の山の中???
仕方が無い…。
「何処から来たの?」
『ん~~あっち?』
「お家は?」
『こっち?』
「誰と来たのかな?」
『みんなと』
「何処に居るのかな?」
『・・・???』
相変わらず言葉では無く、頭に響くような感覚のやりとり。
ん?これは迷子と考えてよいものか?
気を付けて回りをよく見渡せば、壊れた箱、木片、布等が道なりに落ちている。
どんな状況だ?
何気に落ちている布をつかんで見てみる。
ポ~ン♪
「布を倉庫に入れますか? Yes/No」
ん?訳が解らないが、取り敢えず…。Yesで。
何かの役にたつかと片っ端から物色するとしよう。
すると
「水の入った樽を拾得しました」
「簡易テーブルを拾得しました」
「大型のテントを拾得しました」
・
・次々に品物が消えて、頭にログが響く。
属に言う「アイテムBOX」なのか?拾った物の一覧も考えただけで解る。
備考の「小倉庫」か?
大型ダンプが2~3台入る様な倉庫の片隅に、拾った品が積みあがっていく感じ。
倉庫みたいなのだから、
俗に言うアイテムBOXとは違い時間停止みたいなものは無い感じかな?
便利だから良いんだけど…便利だから良いのだけれども…。
なにか…また乾いた笑いが出た。
(しかし、何でこんなに散乱?して落ちているんだ?)
(まだ新しいと言うか高価な品の分類だと思うのだが…)
拾った毛布か布団か知らないが、
畳んで車長の椅子の上に詰め込みクッションにする。
これで子供が座って長時間走っても、お尻は痛くならないだろう…。
「近くの街まで送ろうと思うのだけど…乗って行く?」
幼女はキラキラ目のまま、ウンウン!と何度も頷いた。
マニュピュレーター、腕を操作して
「そ~っと」幼女を車長の椅子に乗せる。
(腕みたいに動くなぁ~?ハッチは思い通りに勝手に開くし…)
「お名前は何と言うの?」
『・・・・』
「ん~~?」
・・・・・。
「じゃ~お家の方に向かうね」
『ん』
「あっ、それとコレを付けてくれないかな?」
『???』
車長用の通信機。ヘッドホンにマイクが付いている。
万が一に銃器を使用する際に、耳の保護と意志の疎通をする為だ。
前面の機銃は使わないようにしておこう。銃の排気で臭そうだし。
(幼女の会話は音声では無く直接に頭に響く感じだから良いけど)
(上部機銃を使うと、子供の耳の保護は大切だしね)
さてと、出発しますか!
たとえ、傍から見れば幼女誘拐案件で、
「おまわりさん!コッチです」なのだが、その時はその時。
今は幼児の安全保護を優先しよう。
この大草原に置き去りにしておく事は私には出来ないからね。
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道なりに進んでいるのだが、
食器、何かの樽、食品、木箱を拾いながら進んでいる。
解せぬ…
こんなにも道に落ちているモノなのか?
何かがオカシイ…。
そんな考えをしていると状況が変わった。
落とし物が
途切れだした辺りから…
何?コレ??狼??ゴブリン???コボルト???
道々に、切られたであろう瀕死の狼やゴブリン、
辛うじて息があるのか微かに動いている。矢が刺さってるものもある。
そして、こん棒を持ってヨタヨタと私に殴り掛かって来る個体や噛みついてくる個体。
うん!殺そう!!
転生か知らないが、身体は戦車だ。
生身ならビビッて動けないだろうが、今の私は戦車。
私自信が低レベルでヘタレでも、前面装甲50mmを貫けるとは思えない。
それに転生物のお約束、
レベルの概念がありそうなら何かを倒してレベル上げは必須のハズ。
そういうのは蛇行運転しながらプチプチと踏み潰して行く。
38tは伊達じゃない。
少し遠めの奴は、上部機銃で止めをさしていく。
(下部機銃は煙とか車内に籠るからね)
ズッガガガガガガッーーー!!
咆える上部機銃。
ヘッドホンを渡しておいて本当に良かった。
しかし…グロい…。
精神的にもよろしく無いので、幼女には戦車内に入ってもらっている。
この世界の基準は分らないが、教育上よろしくないと言う私基準。
車酔いの事を考えて、車内に居る時は、
幼女にはゴーグルも付けてもらう事にした。
このゴーグル。
どうゆう原理か解らないが、
視界には
「私の360度視界に共用してフィルターをかけて見える」仕様みたいだ。
視界フィルターにはグロい物にはモザイクがかかる仕様みたいだ。
もちろん足元は不安が掛からない様に、半径1mは表示してあるし、
意識を向けると車内が解る様だ。
某モビル〇ーツのコックピットみたいな360度視界。
ご都合主義みたいな感じだが、出来た物は仕方が無い。
ようするに戦車である私の視界は、
車長の視界と共有できると考えて良いだろう。
反対に、ゴーグルの視界も私と共有が出来るようだ。
最初は
「身体付きから2~3歳位かな?」
「姪は乗り物酔いが酷かったしなぁ~」
「三半規管の発達はどの位?幼児の視力は…確か2歳で0.5だったか?」
考えるのを放棄して
「この子に合った品物が欲しいなぁ~何かないかなぁ~」
…と考えたら「ポン!」と車内に出てきた品。
どのような原理か全く分からない。
私は考えるのを止めた…。
子供には少し大きい感じもするが、マイク付きヘッドホンとゴーグルを
付けて花帽子を被り燥いでいる幼女は見てて微笑ましい。
まぁ…砲身に載せている20㎜機関砲の機銃音、
まだ撃ってはいないが主砲発射音なんかには耳の保護には良いだろうと思う。
『うわぁ~~速い~~~~』
前面の小窓を開けて走っているので戦車内には風も感じられる。
たまに運転席に移動して外を眺める幼女。
身長が足りないのか下に木箱を置いて「つま先立ち」だ。可愛い。
まぁ~幼児身長だと、狭い戦車内でも広いのかね?
但し、主砲身の後ろだけは立たないように注意しておいたし、
危ないので拾った木材で、砲身の可動範囲は厳重に囲いをしておいた。
楽に時速60kmで進んでいる、この世界基準では速いのかな?
燃料や弾丸の残数は、どうなっているのか解らないが減る気がしない。
減ってはいるのだが、減ったそばから補充されている気がする。
(…それにしても乗り心地が良すぎないか?)
(それに、M4戦車の最高速は確か35㎞位ではなかったか???)
まぁ深く考えないでおこう。
相変わらずプチプチと、
瀕死もしくは切られて動けない魔物か動物かを踏み潰したり機銃掃射して進んでいる。
狼にしては大きいな…。
熊みたいなのも息してるみたいだし銃弾を浴びせてから回収。
街道と言うか、田舎道にしては主要道路みたい感じなのだが…。
こうも居る物なのか?そんなに治安が悪い物騒な所に転生したのか???
走りながらステータスボードの端にあるログに、ある事に気が付いた。
【経験値が貯まりました レベルの解放をしますか? Yes/No 】
【自分のLVより高い敵を倒す ヘンタイポイント×10倍】
【連続して自分のLVより高い敵を倒す ヘンタイポイント×20倍】
【連続して自分のLVより高い敵を倒す ヘンタイポイント×20倍】
【連続して自分のLVより高い敵を倒す ヘンタイポイント×20倍】
・
・
【大物喰いの条件を満たしました、これからヘンタイポイントは10倍になります】
うわっ!
何これ???
今迄、ずっと私はレベル1だった訳????
転生したらレベルを上げるのは常識だよね?
何かのポイントが掛算式に貯まってるようだし…このまま行くのも手か???
でも…死んでしまえば元も子もない…。
もう何匹倒したか数えるのも馬鹿らしい気がする位だから…。
(それに、何か知らないが【大物喰い】と言う
(ポイント10倍スキルらしき物が手に入っているみたいだし…)
私は自分のレベルを解放をした。
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・・・
レベルの解放は良い…
良いのだが………。
頭に響くレベルアップの連続音声が五月蠅くてたまらない。
踏み潰したりして、止めを刺した経験値によるものだろう。
Lvが、2、3、4・・・
Lvが、20、21、22、・・・
LVが、31、32、33、・・・
変わった色をした熊や狼や蛇は、経験値が多いのかな?
順調にLvが上がっていく。
ヘンタイポイントなんかは、掛算が乗るのか訳の分からない数字になっている。
先程、踏み潰した頭に角の生えた真っ黒の鬼なんかは中々潰せなかったなぁ~。
…踏み固められた道で街道であろう道に、
これだけ魔物?獣が多いとは…
(もしかして…結構、危険な地域に転生したのかな????)
「半死の魔物を踏み潰すだけの簡単なお仕事です」でレベルが上がっていく。
音声で頭の中に「レベルが上がりました」と通知さえしてくれる。
ヘンタイポイントなんて全ての乗法が適用されているのか、
カウンターが「000000000000000」と表示を振り切っている。
…ただね…。
…ただね…。
只の、「レベルが上がりました」と言う音声的なモノなら良いのだが
「レベルがあがりました」の他に。。。
スキル
「ヘンタイが増しました」
「ヘンタイが増しました」
「ヘンタイが増しました」
「ヘンタイが増えました」
「ヘンタイが増えました」
・
・
・
「ヘンタイが増えています」
「ヘンタイが増えています」
「ヘンタイが増えています」
・
・
・
「ヘンタイに磨きがかかりました」
「更にヘンタイです」
「ヘンタイ力が増しました」
「新しいヘンタイを覚えました」
「新しいヘンタイを覚えました」
・
・
・
・
「ヘンタイ菌が増えました」
「完全なヘンタイです」
「真のヘンタイです」
「超ヘンタイです」
「本当にヘンタイです」
「頭おかしいヘンタイが増えました」
「ヘンタイを増やす事が出来ます」
「ヘンタイを増やす事が出来ます」
「ヘンタイを増やす事が出来ます」
「ヘンタイのヘンタイです」
「パーフェクト、ヘンタイです」
「ヘンタイがタイヘンな事になりました」
「鬼畜なヘンタイです」
‥‥
・・・・
・・・・・・・・
…と、ご丁寧に音声で
頭にドルビー/デジタルサラウンドで鳴り響くのだから、心に何かくるものが有る…。
(頭を抱えてゴロゴロ藻掻きたい…「もう私のHPはゼロです!」と)
(アレですね…「おめでとう」パチパチと言う某有名「人類ポカン計画」シーンで)
(「ヘンタイ」パチパチと拍手を前後左右からされる気分ですね…)
私は決して「M」ではない!!!!
(…しかし…新たに、変な性癖に目覚めそうです…)
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ふと考えてみる。
ラノベで言う転生物みたいに転生してから
事実1時間もたっていないのに関わらず、
碌に自分の能力も把握せずに流されて今に至る訳で…。
やってる事は
「超絶、ガンガン行こうぜ!」
(マジ、やばくね?)
転生物等は、最初は慎重に進まないと「詰む場合がある」
自分の能力の把握や情報等、まるで解ってはいない。
自分の身体が戦車なのもあいあまってるのかも知れないが…
少し変な感じだ。
(ここまで私は無謀だったっけ?)
更に、第3者目線で言えば…した事と言えば…
・幼女拉致、誘拐
・物品を勝手に拾得
・通り魔的、動物無差別殺害
チクショウ!冷静に考えてみると何故か心が痛い!!
何か私の考えていた転生モノとは違う!
自分は正気なのか?ここまで外道だったのか?SAN値的におかしいのか??
馬鹿なの?死ぬの?正論言われても反論出来ないしグゥの音も出ない気がする。
もうプチプチ踏み潰す!
虚無の眼差しで、
「センターにロックしてプチっ!」
「センターにロックしてプチっ!」
「センターにロックしてプチっ!」
悩んでも私は「禿げる頭皮」も無い戦車なんだ!
幻術頭皮…じゃなくて現実逃避で、濁った眼でプチプチと単純作業する!!
レベルアップ音声なんか…アーアー、キコエナーイ!キコエナーイ!
そんな時に、私を正気に戻す「天使(幼女)の声」
『おしっこ!』
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