あめ玉おじさん
「あめちゃんあげるよ」
「あめ?いらない」
中年で小太りの男性に10歳のみいこは路上で話しかけられた。
「チョコもあるよ。君の好きなお菓子がいっぱいあるんだよ」
「じゃあ、みせて」
「もちきれないから、おじさんの家にいっぱいあるんだ。みにくる?」
こくりと、うなずき、差し出された男の手を握り歩き始めた。
家はすぐ近くであっという間についた。
2人が家に入るところを同級生の女の子が遠くからじーっと見ていた。
男の家は古い平屋であったが、部屋の中に入ると、部屋中に飴玉が飾られている。
好きなお菓子なんてどこにもなく、みいこはその不気味さと当てが外れたことに
すぐに家に帰りたいという気持ちが湧いた。
「あたしの好きなお菓子がないよ」
かすれた喉で声を絞り出して発した。
「今から作るんだよ。ほらみてごらん」
飾ってある赤黒い色のあめ玉を満面の笑みの男は手に取ってみせた。
「コーラのあめ?」
「これは、おじょうちゃんぐらいの年の子の髪を溶かしてあめにしたんだよ」
「うそ」
「本当だよ」
みいこは幼いながらにも、本能的に危険を察知して、大急ぎで部屋を出ようとすると、男が立ち塞がる。
「はやくこっちにこい」
気さくな雰囲気だった男は豹変し、強引に腕をつかみ、風呂場に連れていき、みいこの髪を水で洗い流す。
「動かなければ、すぐ終わるからな」
男は慣れた手つきでゆすいでいく。
みいこは震えて何も言えなくなっていた。
風呂場から出て髪を乾かしていると、玄関のチャイムが鳴った。
男はバツが悪そうに対応しにいく。
「警察です。あなたが見慣れない女の子と家に入るのをみたと通報があったのですが、今、お一人ですか?」
「ああ、一人だよ」
みいこは誰かと話している声を聴いて叫んだ。
「誰かー助けてー!」
「ひぇ」
「女の子がいるな失礼。確認させてもらう」
警察官が突入し、男は逮捕された。
通報したのは同級生の女子であった。
その後、中年男は余罪が次々とみつかった。