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『東京八猫伝』~せっかく復活したのに猫探しの旅ですか!?~  作者: J・P・シュライン
第一章 猫江親兵衛 編
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第17話 みどり、危うし!

 犬江いぬえ静香しずかの様子を探ろうと妙なテンションで動き出そうとしたみどりだったが、立ち上がりかけた肩を不意に後ろから押さえつけられた。


「彼女ぉ〜、しゃがみこんじゃってどうしたの〜?酔っ払っちゃった?」

 

 振り返ってみると、赤ら顔をした若い男四〜五人が酒臭い息を吐き出しながら好色こうしょくな視線をみどりに向けている。


「大丈夫です、行こう、馬琴ばきんちゃん」

「え~? そんなつれない事言わないでよさぁ、ちょっと休んでいこうよ〜!」


 不穏ふおんな空気を察したみどりは、肩に掛けられた手をやんわりと払うと、馬琴をキャリーバッグに詰めてその場を去ろうとしたが、若者たちはバッグを放り投げて無遠慮ぶえんりょにみどりの腰を掴み、他の仲間も覆い被さる様に肩に手を回してくる。


「ちょっと、何するのよ! 馬琴ちゃん大丈夫!?」


 みどりは強引に彼らの手を振り解いて馬琴のバッグを拾おうとしたが、その態度が気にさわったのか、血の気の多そうな筋肉質の男がみどりの手首を掴んで強引にラブホ街に向かって歩き始めた。


「ちょっと、痛い! やめなさいよ!」


 必死に振り解こうとするもタトゥで埋め尽くされた丸太のような腕はビクともしない。


「あのさぁ、俺ら札幌で地下格闘技やってるからさぁ、あんまり抵抗すると落としちゃうよ? 痛い思いしたくないでしょ?」

「つか、俺ら楽しませてやろうとしてんだからさぁ〜、素直に楽しもうよ! クスリもあるからぶっ飛ぶよ〜」

「クスリって、ふざけないでよ!」


 みどりは恐怖を押し隠す様に怒気どきをぶつけて自分を奮い立たせると、いつも馬琴ばきんにやられている様に、掴まれた腕を爪で思いっきり引っいた。


「いってぇ! こいつ、引っ掻きやがった、もう許さねぇ」


 男は予想外の反撃に思わず手を離したが、却って彼らの怒りに火を付けてしまったのは明らかだ。

 男たちはサディスティックな笑みを浮かべてみどりを取り囲みながら、品定めする様に視姦する。


「おい、お前ら今夜の配信はS()M()()()()だ、拷問配信ごうもんはいしんしてやろうぜ」

「いいな、それ、ぶっ壊れるまでやってやるか、ひっひっひ」


 狂宴きょうえんを妄想しながら卑猥ひわいな言葉を投げかける男たちに囲まれ、みどりは恐怖に怯えて動けない。

 そこに聞き覚えのある声が飛んできた。


「やれやれじゃな、これが()()()()()()()とか申すやからか」

「誰だ!」


 殺気立って振り向いた男たちだったが、視線の先にシルクハットの老人が一人だけ立っているのを見て警戒を解く。


「なんだ?この帽子ジジイ」

()()()()()()()だよ、ジジイ! 分かったら消えろ! 年寄り痛めつけてもフォロワーは喜ばねえんだよ」


 バカにしたような若者たちの言葉を受け流したその老人は、ギラ付いた目で逆に挑発の言葉を投げた。


「しつけのなっとらん餓鬼がきじゃのう、北海藩もワシらに剣術指南を任せれば、こんな餓鬼がきしつけ直してやるものを」

「あぁ? なんだこのジジイ」


 イキりたつ男たちを一瞥いちべつする老人の目を見て、みどりはようやくその正体に気付いて安堵あんどのため息を漏らした。


但馬たじまさん?」

「やれやれ、注意いたせと言うた側からこれじゃ、全く最近の若いのは……」


 みどりに対する愚痴ぐちさえぎる様に、血の気の多い筋肉質の男が、丸太のような腕で拳を上げて構える。


「ジジイ、その女の知り合いか? なら丁度いい! てめぇの目の前で寝取られ拷問してやるから、まだ立つなら泣きながらしごいてな!」


 卑猥ひわいな言葉を投げつけた男は、体格に似合わぬ鋭い踏み込みから但馬守のスーツのえりを掴んだ。

次回・柳生新陰流奥義・無刀取り!

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