4.満月の夜
空には満月が輝いている。その満月を見て、私は覚悟を決める。
“吸血鬼に会いに行く”
玄関に行くと、出掛けるときに必ずお見送りをしてくれる私の使い魔であるネコが来てくれた。
「……行くのかにゃ?」
「うん……、行ってくる」
「気をつけるにゃよ。今日は満月」
その言葉を聞くと、私の心が揺れる。だけど、覚悟を決めたのだから、今さら答えは変わらない。
「行ってきます」
そう言って、私は玄関を開け、外に出て、箒に乗り、魔女界と人間界を繋ぐゲートがある場所を目指した。
そこにつくと、やはり今回の進級試験で無事合格した新米の魔女達が、たくさんいた。聞こえてくるのは、「どこ行く?」、「何する?」と新米の魔女達の浮き足立つ気持ちが言葉となって聞こえてくる。
「どうしたの?」
「へっ?」
いきなり声をかけられて驚いた私は間抜けな声しか出せなかった。
「だって、沈んでる感じがしたから……」
「そう……かな……?」
「うん……、何となくだけど。ここにいる子達と違う感じがする……」
吸血鬼に会うことがバレているのかと感じてしまった私は、慌てふためきそうになるが、話しかけてきた魔女はゲートの所にいる魔女に呼ばれ、私から離れて行ってくれた。
(やっぱり……コワイ、のかな……)
そんなことを考えながら、悶々としていると、ゲートの魔女に呼ばれ、人間界に行く理由を聞かれた。
「試験の時に見つけたお菓子屋さんに用があるので、人間界に3時間程滞在します」
毎回、これを聞かれるのかと思うと面倒と感じるが、それは仕方がない。気持ちを切り替えて、湖に映り込んでいる、満月めがけて飛び込む。すると、そこは人間界の空。既に、人間界に来ている魔女達が、空にちらほら箒に乗って浮かんでいた。
私は怪しまれないように、出来るだけ自然に、そこから抜け出し、あの日──ハロウィンの夜に出会った場所に向かった。
(場所は指定されてないけど、きっと、そこに行けば大丈夫な気がする……)
これから、私が会うのは吸血鬼。
これから、私と吸血鬼の秘密の逢瀬が始まろうとしていた。
読んで頂きありがとうございました。