「涙」
お楽しみください。
「少年。君は死にかけてた。 君が森に来てからもう約一年たった」
魔女は杖でこつんと目の前に薄い膜のようなものを取り出してくる。 そこには、ボロ雑巾のようなものが映っていた。 いたるところが青くなっていて服がボロボロになって肌が露出している。 そして、頭から血が流れている。 そんなものが映っている。
「これが一年ほど前の君の姿だ」
見つめているとなんとも気持ち悪くて…吐き気が出てくる。 視線をそらそうとしても首が動かない。
その時の僕には、目をつむるという判断はパッと思いつかなかった。 ただ、そんな僕の動きを見て察したのかまたこつんと地面をたたいて薄い膜が消える。
「君が家に帰らず一年がたったわけだ。 一年間君の記憶では小さい子達しかいない。 そんな者たちが生き残れるとは思えないな」
「ごめんなさい」
みんなごめん。 三つ前の姉はいつもみんなに言ってた。 「一番年上の子が年下の子を頑張って助けるんだよ」って。 僕は、みんなをどうにかすることができなかった。
涙が流れる。
「うっ そのまま泣きな」
そういってどこに隠していたのかわからない毛布を僕の体に掛けるとお姉さんはすぐにいなくなってしまった。
流れた涙がすぐに止まることはなかった。
「やっと泣き止んだ?」
気づくと体は動くようになっていて体が起こせるようになっていた。
毛布を隣に置いて体を起こす。
周囲を見渡すと机に座っている女性が見える。
何かを飲みながらこちらを心配そうな目でずっと見てくる。
「泣き止んだみたい。 おはよう」
「えっと おはようございます」
座っていたベッドから降りる。
ジトっとした石の冷たさが足にまとわりつく。
ペタペタと足音を立てながらお姉さんに近づく。 お姉さんはそれに気づくと椅子をこちらに向けて自分が飲んでいたカップを見せながら飲むかどうかを聞いてくる。
身振りで遠慮して椅子に座る。
「そういえば自己紹介がまだだったかな。 ここに住んでいるリレーズだ。 魔女と呼ばれているかな」




