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【0日目】エヴァの記憶4


 学校の図書室で、志保の帰りを待つ。用もないのに、学校に入っていいのか不安だったから、昨日は来なかったけど、志保が昨日のうちに聞いておいてくれたんだ。


 「・・・絵美里ちゃんは、頭良いですよね?」


 あ、お帰り。別に良くはないよ?中の上くらい?


 「志保は思うんです。本を読む人と、メガネをかけている人は、頭が良い!」


 その発想がもうバカっぽいよね。図書室では静かにね?


 「というわけで、志保は読みますよ!きっと本を読めば先生の口から放たれる暗号も、理解できるようになるはずです!!」


 ・・・志保は良くこの高校入れたよね。後図書室ではお静かに。


 そろそろお昼だし、帰りたいんだけど・・・。まぁすぐ飽きるでしょ。二人で本を読み始める。


 「絵美里ちゃん!絵美里ちゃん!これ見てください!!」


 図書室では・・・もういいや、どうせ私たちしかいないし。


 「ほら!このおまじないをすると、ずっと仲良くいられるらしいですよ!!」


 ・・・何を読んでるのかと思ったら。おまじないの本だった。小学生の時にちょっと流行ったよね。


 「なるほど、さすがは絵美里ちゃん、もうおまじないの本は読破済みなんですね?」


 え?いや、私は読んでないよ?そういう本に載ってるのって、だいたい友達とか好きな人とかに関係するものが多くない?自分ひとりで完結するものもあるかもしれないけど、そもそも信じてないし・・・。


 「それじゃあずっと仲良しでいられるおまじないを、二人でやりましょう!!」


 えぇー?高校生にもなって、おまじない実行しちゃう系?パッと終わって、恥ずかしくないのがいいなぁ。


 「この『ラブリーマーク』をお互いに相手の体のどこかに書き込めば良いそうです!!」


 超恥ずかしいやつじゃん。誰かに見られたらどうすればいいのよそれ。誰がやるものか。


 「えー?じゃあこの、『相手の良いところを3つ大声で叫ぶ』って言うのにしますか?」


 あー。ラブリーマーク書いてほしくなってきたわ。ラブリーマーク超書いてほしいわ。出来るだけ見えない位置にラブリーマーク書いてほしいわ。ていうか大声で相手の良いところを叫ぶっておまじないなの?そりゃそんなことできる仲なら、仲良しだろうさ。


 「じゃあ書きますね!顔を出してください。」


 ちょっと待って顔にいくの?目立ち放題じゃないそれ?


 「じっとしててくださいね。」


 やる気満々の志保は止まらない。当然のように力ではかなわないので、捕まっている時点で逃げる道はない。せめてうまくかけなくてやり直し!ということが無いよう、じっとしていよう。


 「あ、ちょっと間違えました。今書き直しますね!」


 おいこら。


 「できました!」


 鏡で確認してみると、私のおでこには、ハートっぽい文様と、それを歪めたような文様の二つが並んでいた。・・・これ、おでこに描かなきゃいけないの?


 「どこでもいいみたいですよ?」


 へっ?じゃあなんでここ?


 「絵美里ちゃんが見えない位置が良いって言ったのでおでこにしました!」


 私が見えないじゃなくて、他の人から見えないって意味だったんだけど・・・。まぁ髪の毛で隠せるだけましと考えるべきか?


 腹いせに、志保の両方のほっぺに描きこんでやった。



―――――――――――――――――――――――


 「絵美里ちゃんも食べますか?美味しいですよ?」


 雪の降り積もる帰り道、コンビニに寄った志保がおでんを食べ歩きながら帰路に就く。傘持ってんだからさしなよ。いや、両手が塞がってるから無理なのか。


 「あぁ!鼻水が垂れてきました!大ピンチです!」


 早速両手が塞がっている障害が・・・。ポケットからティッシュを取り出す。ほら、チーンってやって。チーンって。


 「チーン!」


 いや、口で言わなくていいから。近くにゴミ箱は・・・ないね。適当にカバンに入れてぐちゃぐちゃになっても嫌だしなぁ、なにか入れられそうな物ないかな?


 「あ、志保のカバンの中に、お弁当箱がありますよ?」


 え?なんで?


 「前絵美里ちゃんに作ってもらったやつですね!食べた後入れっぱなしでした!」


 それいつの!?数か月たってるんじゃ・・・。まぁそれなら気兼ねなくていいか。ゴミ箱代わりにして、家に帰ったら洗っとくから、貸して。


 「ありがとうございます!お礼に好きな具材を選んでいいですよ!」


 だからおでんはいらないって。


 ていうか買い食いにおでんってどうなの?肉まんとかにすればいいのに、ていうかよく昼前にそんなもの食べようと思ったね、ていうかほほに落書きのある状態でコンビニに入る勇気よ。


 「ちょっとストップです!絵美里ちゃんは色々気にしすぎだと思います!」


 そうかなぁ?まぁこぼさないように気を付けてね?


 「大丈夫です!志保はバランス感覚には自信があります!」


 そう。それはうらやましい限りだ。私は目を開けたままの片足立ちが5秒と持たない。私は人並みの運動神経も持ち合わせていないのだ。ほら、現に今もこうして見事に滑る雪に足を取られて・・・。


 「絵美里ちゃん!危ないです!!」


 バランスに自信のある志保がこっちに駆けだす。しかし雪の滑り具合をなめてはいけない。ものの見事に一歩目が滑り。体はその場に、手に持っていたおでんだけがこっちに飛んできた。


 「あっ。」


 ゴンッ バシャァ


 アッツァアァ!?


 街中で恥も外聞も気にせず転げまわる。熱!熱っ!アツゥ!?どうしてこうなった!?


 「あぁ、大丈夫ですか!?絵美里ちゃん!」


 志保が慌てて私を持ち上げると、雪の積もっていたところに突っ込み、上からどんどん雪をかぶせていく。


 寒っ!!待って?死ぬ死ぬ。凍え死ぬ。なんだこれ地獄か?


 何とか力を振り絞って体を起こす。雪が重いな、もう!


 さらに雪を追加していようとしていた、志保と目があった。何ちゅーことしてくれとんねんワレ?

 すると、焦る顔をしていた志保が、どんどんうれしそうな顔に変わっていく。


 「すごい!絵美里ちゃんの嫌そうな顔はよく見ますけど、怒ってる顔初めて見ました!」


 ・・・・・・・ハァ!?


 信じらんない!考えらんない!!意味分かんない!!!人がこんな目に合ってるのに、なにその感想!?体がどんどん熱くなっていくのを感じる。頭がまともに働かない。なんならすべて壊して回りたい気分だ。


 落ちていた傘を回収して、速足で帰路に就く。


 「あぁ、ごめんなさい絵美里ちゃん!待ってください!」


 来ないで!!もう志保なんて知らない!!



―――――――――――――――――――――――


 一人で帰る、雪の降る帰り道。閉じられた傘はただ振り子の役割を果たすだけ。


 ※

 志保が追ってくることはない。

 ちょっと怒りすぎちゃったかな?

 冷静な判断は出来ていなかった気がする。

 でもあの時嬉しそうな顔をしていた志保が悪いんじゃん!

 でもそもそも私が転んだのがいけないんだし。

 でも転ぶだけならちょっと痛いですんだのに、志保がおでんぶっかけるからあんな思いをすることに!

 でも志保は私を助けようとしたわけで・・・。

 でも雪に埋めたらああなることくらい分かりそうなものじゃない!

 でも志保に悪気はないわけで。

 もし志保が追ってきたら、どう対応しよう・・・・・・・。



 ※繰り返し




 ※繰り返し






 ※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し※繰り返し




 家に着いた。


 はぁ。


 どうやって仲直りしよう・・・。


 自然にそんな思いがあふれた。・・・あ、そっか。これが友達との喧嘩か。どうやら私はちゃんと仲直りがしたいらしい。


 仲直りの方法と言えば謝ることだよね?私には難易度が高いなぁ。


 お風呂に入って、温まったら志保に・・・。いや、ほら、あれだ。

 心も体も温まったら、もう一度考えることにしよう、うん、そうしよう。


 冷えた体を動かして、家に入った。


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