2日目 猫を被った肉体派シスター。
現在の所持品
How to healer 1冊
銀貨4枚 銅貨10枚
ルクーセ特製サンドイッチ 3つ
水の入った水筒 1つ
ハジマリノ村とトナリノ町は馬車で行き来ができるそうな。ルクーセおばちゃんに教えてもらった建物に向かう。私、バスとか電車とか苦手なんだよなぁ、どれに乗るのが正解かいつも迷う・・・。もちろん、人に聞くなんて選択肢は存在しない。
少し心配だったけど、トナリノ町行きの1種類しかなかった。運賃は銅貨5枚、例のごとく先に取り出して数えておく。
「トナリノ町行きね。はい、ちょうど出るところだから乗んな。」
六人くらいなら乗れそうな馬車は貸し切り状態だった。やった。私が座ると受付してくれた人が御者となって、すぐに出発する。ありがとうハジマリノ村。また絶対に帰ってくるからね。
生まれて初めて乗る馬車は案外乗り心地が良かった。ちょっとは揺れるけど仕方あるまい。移動しながら昼食を済ませ、残りの時間で祝言を唱える練習をする。修道士になるなら聖なる光だけ使えれば良いらしいけど・・・。まぁ出来ることが多いに越したことはないよね。あと景色も単調でほかにやることがない。
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「ついたよ、嬢ちゃん。」
御者さんが私の肩をたたく。うわっ、集中してて全然気づかなかった。慌てて降りると、頭を下げる。ちょっと転びそうになったのは秘密だ。
顔を上げると。目の前に広がるのは大きな町。ハジマリノ村は木製の家が数えられるほどしかなかったが、トナリノ町には多種多様な建物が様々な建材で所狭しと立ち並ぶ。活気あふれる店の数々に道行く人、人、人。そんな圧巻の光景を見て私は・・・。
・・・一日で歩いても4,5人しかすれ違わないハジマリノ村に帰りたい。死んだ魚のような目で、そう思った。
ていうかこんな街中で教会なんて見つかる気がしないんだけど・・・。企画倒れじゃない?
はぁー。息を吐きながら空を見上げる・・・・・・・・・。あった。
町から少し外れた小高い丘の上。全体的に石造りの建物、三角屋根のテッペンに十字が刺さっている。
あれじゃん!
ある程度、舗装された丘を登る。一番上までたどり着くと確かにその建物はあった。近くで見ると結構大きい。
前世でも教会なんて入ったことないんだけど・・・。とりあえずノックすればいいのかなぁ?大きな両開きの鉄の扉。そこに付いていた鉄の輪っかでノックしてみる。すると中からバタバタ音がする。誰かはいるみたい。
「どうぞー。」
少しすると、中から声が聞こえてきた。ちょっとテンション上がっちゃってここまで来たけど、いざ入るとなると怖いな。でもこのまま帰るわけにもいかないし・・・。
鉄の扉を引く。ギィイィと音がして、ゆっくりと扉は開いた。中には左右対称に置かれた、たくさんの長椅子。正面奥の壁には大きなステンドグラスが三枚あり、その下には金髪ロングの修道服を着たお姉さんが祈るようなポーズをとっている。
「どうしましたか? 迷える子羊よ。」
お姉さんはゆっくりと、品のある動きで立ち上がり、こちらを向く。思わず見とれるような動き方だ。きっと生まれた時から良い教育を受けていて、バタバタ物音を立てて動くようなことはないんだろうなぁ。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!バシッ!!
そんなことを考えていたら、ものすごい勢いで走ってきて右手を掴まれた。・・・え?
「あなた!ヒーラーね!」
ちょっと待って思考が追いついてない。ヒーラー?うん、まぁそうだよね?
「そうよね!それだけ十字付けてるんですもの!ヒーラー以外何なのって話よね!」
あ、十字ってヒーラーの証なんだ。・・・いや、今はそんなことどうでもいい!とりあえず、いきなり走りこんできて右手を掴んでくるタイプの人とは関わりたくない!
急いで逃げ出そうとするが、逃げられない。そうだ、右手掴まれてるんだった。
「あ、待って待って。私はここでシスターをやってるタフティ。よろしくね。」
よろしくしなくていい!放して!!
「ここで修道士やってくれないかな?」
そのつもりで来たけど今はとりあえず逃げたい!
「うわぁ。すごい首横に振ってる。・・・手、放してほしい?
あ、首の動きが縦になった。でも放さない、なぜなら放すとあなたがどこかへ行ってしまいそうだから。」
意地の悪い笑顔を浮かべるタフティ。なんなのこの人!最初に抱いたイメージを返してほしい!
「ねぇ、お願い。お祈り一回につき銅貨10枚でどう?・・・やっぱりだめ?
じゃあ銀貨1枚出す! これもだめぇ?」
今は条件どうこうじゃないんだけど!
「祈りの言葉の先導は私がやるから聖なる光だけ出してくれればいいんだけど。
あ、首が止まった。」
祈りの言葉なんてあるの?先導って先に読むってことだよね・・・やってくれるのはすごく助かる。
タフティと目が合う。すごく期待した目をこちらに向けている。・・・小さくうなずく。
「やったぁ!やってくれるんだね?嘘じゃないね?手放しても大丈夫だね?ちなみにこの町で私より足の速い人はいないからね?」
そう言って手を放してくれる。若干最後に脅しが入ってなかった?
「それじゃあ逃げられな、仲良しの証に個人情報教えてくれる?」
・・・何か言いかけなかった?とりあえずショルダーバッグに書いてある名前を指さす。
「エヴァちゃんかぁ。お家は?・・・そっかぁ。じゃあ今日の夕方のお祈りにちゃんときたら、安くてサービスの良い宿教えてあげる。」
宿の情報はすごく助かるし、お仕事が決まったのだから、まぁ良かったのかなぁ?突然二倍になった報酬の金額が気になるけど・・・。
「お祈りは朝一番と夕方の二回ね。うちの場所は分かりやすいし迷子になることはないと思うけど。遅刻しないようにお願いね。」
疲れた顔で頷く。若干右腕が痛い。