15日目 忙しい人のためのわらしべ長者。
現在の所持品
冒険者カード 1枚
パジャマ 1セット
銀貨9枚 銅貨2枚
水の入った水筒 1つ
癒しの神の杖 1本
ハジマリノ村。そこは、数えようと思えば数えられる程度の家々が並ぶ、小さな村。朝のあわただしい時間にも関わらず、外にはほとんど誰もおらず、静けさに満ちていた。
うん、これだよこれ。私が求めているものはこれだ。廃村かと思うほどの静寂。素晴らしい。
「いやぁ、本当に久しぶりに帰ってきました。何年ぶりでしょう?」
「シーラは数日ぶりですね!」
「ここは相変わらず、静かだな!!」
・・・騒がしいな。
まぁいいや、ルクーセおばちゃんのところに行こう。
村の中央の広間に行くと、記憶通りの位置にルクーセおばちゃんの屋台がある。今日も人がいないみたいだけど、やっていけてるんだろうか?
「いらっしゃい、お嬢ちゃん。サンドイッチ3つで銅貨9枚ね。はい、お釣り。まいどあり。」
「ルクーセおばちゃーん!シーラにも一つください!」
「はいよ、まいどあり。」
「ふむ、おいしそうだし、僕も一つ貰おうかな。」
「今日は良く売れるわねぇ、はい、ちょうどね。」
「ただいまお母さん。私も一つ。」
「はいよー。」
みんなで私お気に入りの木陰に移動する。ふふふ、これこれ。これが美味しいんだよねぇ。
「ちょっと待ちなさい。」
ルクーセおばちゃんがサリーさんを手で呼び寄せる。
「あんたねぇ・・・。帰ってくるなら連絡くらいしなさいよ。」
「えぇ?だって手紙が届くより、はるか早い方法で来ることになったんだもん。」
「こっちはあんたが元気でやってるか、ずっと心配してたんだからね?」
「毎月手紙出してるじゃない?」
「私が知りたいのは、王国の最新情報じゃなくて、あんたの近況よ!」
家族同士で積もる会話もあるようだ。ていうか王国の情報なんて、こんな田舎の村に伝えてどうするつもりだったんだろう?
「結構価値のある情報送ってたのに・・・。手紙返してくれればいいじゃん。」
「住所が分からないダメもとの手紙なら、全部帰ってきたわよ?」
「そんなルクーセさんに朗報があるよ。」
あ、ユンが割り込んでいった。
「・・・何?今の王国では喋るウサギが流行してるの?」
「いや、ユンさんは一点もの・・・。」
「サリーの住所なら決まったから、今から言うのをメモしてね。」
ユンが喋ると大体の人が驚くけど、ユン本人はスルーすることが、最近の研究で分かってきた。もう見飽きた反応なのかもしれない。あ、戻ってきた。
「というわけで、あの家サリーの住所にしたけど、いいよね?」
いや、私を見て言われても・・・。
「勇者君に聞いて?って考えてます。」
「あぁ・・・。そのシステムもめんどくさくなってきたなぁ・・・。」
最初から向こうに聞けば解決じゃない?
「というわけで、あの家エヴァの持ち物にしたけど、いいよね?」
どういうわけで!?
「「正式な理由の説明義務を果たすことを要求する。」って考えてます。」
「えー・・・。拾ったってことでいい?」
良くないよ?豪邸拾ったなんて聞いたことないよ?
「ほら、わらしべ長者って聞いたことあるでしょ?」
あるけど?
「あれって、拾った藁が最終的にお屋敷になるじゃん?」
そうだね。
「そういうことだよ。」
いやいやいや、過程を吹っ飛ばしたら訳わからないことになるでしょ!?
そういうことだよ!?