14日目 全力若作り。
現在の所持品
冒険者カード 1枚
パジャマ 1セット
銀貨6枚 銅貨19枚
水の入った水筒 1つ
癒しの神の杖 1本
「よし、悪いがギルドに登録するのに、付いてきてくれるか。チームの登録には冒険者カードとその本人が必要なんだ。」
まぁそれはしょうがないよね。我らチーム門外不出、総出でギルドに向かう。うん、名前はもうちょっと考え直してからにしない?
まぁ他に案も出ないから諦めようか。いつもの道でギルドに向かうと、裏路地に一人の女性が立っていた。
年は30代くらいだろうか。人のよさそうな笑顔は見覚えがある。たしか前ここで会った宗教のお偉いさんだ。その服は私には幼稚園児の着るスモックにしか見えないもので、黄色いカバンと黄色い帽子が、服とは良く似合っている。来ている人間に似あっているかは・・・。うん。
・・・いや、私には園児のコスプレにしか見えないんだけど・・・。若作りってことでいい?
「こんにちは・・・。今日はすごい恰好ですね・・・。」
前回あった時には、少なくとも表面上は礼儀正しく接していたサリーさんも、さすがに今日は引いていた。
「こんにちはー!エヴァちゃん、遊びましょう!」
うん・・・。嫌な事でもあったの?
「一応聞くけど、その服とキャラは素ではないよね?」
「はい。エヴァさんはうちの娘とは会話できたそうなので、子供になってみました。」
うん、子供となら会話できるっていうところまでなら合ってるけど、子供になってみました。じゃないよね。無理あるよね。
「そう。じゃあ僕たちがいると、エヴァが話せないから、二人きりにしてあげようか。」
待って。この人と二人きりは嫌だ!とても嫌だ!
「エヴァちゃん、エヴァちゃん!何して遊びます?かくれんぼしますか?」
しません!!
―――――――――――――――――――――――
私たちは、なんとか障害を乗り越え、冒険者ギルドまでたどり着いた。
勇者君を先頭に、ギルドに入ると、賑やかだった内部が静まり返り、注目が集まる。やっぱり勇者君は有名人だね。
「チームの登録がしたいんだが。」
「はい、かしこまりました。こちらの3人でよろしかったでしょうか?」
「いや、このウサギも入れてくれ。あともう一人ギルドの外からのぞき込んでいる。」
「エヴァさーん。こないと登録できませんよー。」
イヤ。ユウシャクンのトナリ、ヒトミテクル。イヤ。
「すごい嫌がってますよ?」
「仕方ないですね・・・。」
サリーさんが私のところまで来て、冒険者カードを回収していった。一応本人はいるから大丈夫らしい。受付のお姉さんはちゃんと対応してくれた。
「はい、承りました。チーム門外不出ですね。・・・何がですか?」
ごめんなさい、何ってこともないんです。
受付のお姉さんが微妙な表情もしながら仕事をこなしていると、遠巻きで見ているだけだった他の冒険者の中から、一人出てきて勇者君に話しかけてきた。
「おうおう、兄ちゃん。最近大活躍のようやのう。今度はチームまで組むんかい。」
「あぁ、君は確か・・・。なんとかっていう組織の幹部だった人だね。」
「おうおう、一日で潰した組織まで覚えておいてくれるとは、ってちゃんと名前まで覚えとけやぁ!」
なんかチンピラみたいな人に絡まれてる・・・。近くにいなくてよかったぁ。
「兄ちゃんからしたら、うちの組織なんて路上の転がるチリのようなものなんかのう。聞いとるで?【スーパーウルトラミラクルギガントシャーク】を討伐したらしいのぉ。」
「あぁ、あの生臭かった魚か。」
「食ったんかいワレ!?」
あぁ、あの生臭かった魚ね。
「あの日以来、兄ちゃんのことは調べ回っとんねん。【グレート・デス・アリゲーター】の討伐にも成功したらしいのぉ。」
「あぁ、あれは普通に美味しかったな。」
「なんでさっきから食材扱いやねん!!」
あのでかい鰐、そんな名前ついてたんだ。
「いつか復讐してやろう思ってなぁ。兄ちゃんのことで知らんことはないで?【死をもたらす者】の討伐にも行ったらしいなぁ。」
「あぁ、見た目は悪いが、案外美味しかったな。」
「もう勝てる気がせぇへん!!」
諦めた方がいいんじゃないかなぁ。勇者君いろいろと規格外っぽいし。変な人に絡まれているうちに。受付のお姉さんが仕事を終えてくれた。
「はい、チーム門外不出。受理されました。何か依頼をこなしていかれますか?」
「そうだなぁ。チーム結成記念に行きたいは行きたいんだが、エヴァ君が行きたがらないだろうからなぁ。」
「内容によってはエヴァが気に入るかもしれないし。教えてもらうだけ教えてもらったら?」
「そうだな。ちょっと見せてくれ!」
「かしこまりました。討伐依頼はこちらになります。」
勇者君が依頼の吟味を始めてしまった。そこらに張り出されているのとは違う物らしい。まぁ私としてはどうでもいいから、終わったなら帰っていいかなぁ。
「すごい・・・。これが、一部の冒険者のみに紹介されるという依頼・・・。」
サリーさんが目を輝かせていた。
「あまり言いふらさないでくださいね。無謀な挑戦を防ぐために、一般に公開していない物なんですから。」
「分かってますよ。うわ、このモンスター足取りがつかめないと思ったら、こんなところにいるんですね。あ、この情報ちょっと古い・・・。」
「・・・冒険者ギルドは有用な情報をいつでも募集しております。」
「高いですよ?」
「内容に見合った額は。」
サリーさんと受け付けのお姉さんが悪い顔をしている。いや、別にやましいことも悪いこともないはずだけどなぁ?
「今一番欲しい情報は、謎の女についてです。」
「謎の女だけじゃちょっと分かりませんねぇ。もう少し詳しく教えてください。」
「・・・情報提供どころか情報聞き出そうとしてません?」
いろんな人から聞いて回って情報をかき集めてるんだろうなぁ。あそこの会話は私には無縁そうだ。知ってることなんてせいぜい、ユンの撫でられると弱いところくらいだしね。
「つい最近出たという、「癒しの神に命を狙われている。うさ耳をつけてほしい。」という謎の発言を繰り返す女性です。」
うん、私にも心当たりあったわ。情報どころか犯人知ってるわ。解呪が出来ているか確認してほしくて夜の街に飛び出したシーラだよねこれ。
シーラのこと突き出したら金一封くらい出ないかな?