13日目 手懐ける難易度は、野生動物よりも上。
現在の所持品
冒険者カード 1枚
パジャマ 1セット
銀貨15枚 銅貨2枚
水の入った水筒 1つ
癒しの神の杖 1本
装着型魔力測定装置・改 1つ
「それで、エヴァさんにはなんの御用なんですか?」
「僕としては、頭が痛いから今すぐ帰ってくれると助かるんだけど・・・。」
「そう邪険にしないでくださいよ、ちょっとした世間話がしたいだけですよ。」
「エヴァ相手じゃ、話にならないと思うよ?ほら、帰る気にならない?」
ユンはやたら帰らせたがるな。この人のこと嫌いなの?
「帰りませんよ?仲良くなるために、いろいろと準備してきましたから。」
「あ、シーラひらめきました!そのペアルックは仲良くなるための手段なんですね!!」
「その通りです。ほら、相手と似た格好をすれば、警戒させずに近づくことが出来るでしょう?」
・・・私のこと、野生動物か何かだと思ってない?ペアルックを狙ってやっていると分かった時点で、警戒は増したよ?
「なるほど。これは考えられた計画ですよ!この方は侮れません!!」
「いや、どう見てもエヴァさんドン引きしてるんですけど・・・。」
「いやぁ、エヴァの生態については良く分かってないことが多いからね、あながち仲良くなる近道かもよ?」
「ちょっと待ってください。ユンさんもそっちサイドなんですか?」
「いやぁ、アホっぽいし大丈夫かなぁ、と思ったら気が抜けたよね。」
「ダメですよ!そうやって自分のペースに引き込むのが得意な人なんですから!」
いつの間にか、私を人間だと思っている派と、野生動物だと思っている派の、二つが出来ていた。
「良く分からないが、このご婦人は敵なのか?」
「いえ、敵ってわけではないですが・・・。良くない噂の絶えない人ですし、エヴァさんのことを思うなら、遠ざけた方が良いと思いますよ。」
「なるほど!ならば叩き切ればいいのか?」
「良いわけないでしょう!?」
「切るなんて物騒だわ、私はただエヴァちゃんとお話したいだけよ?」
「そうか!なら好きに話すと良い!!」
「あら、いいの?それじゃあ、リーダーさんの許可ももらったことだし、ちょっとお時間いただくわね?」
そう言うと、私の前まで歩いてきて、しゃがんで目線を合わせてくる。その様子をサリーさんとユンはしまったという顔で見ていた。・・・急に怒鳴ってきたりはしないだろうし、話しかけてくる内容があれなら止めに入ってくれると信じよう。
「無理に喋れとは言わないから、首を動かすだけでいいの。ちょっとお話聞いてもらえるからしら?」
頷く。まぁ首を動かすくらいなら、頑張ろうか。しっかり考えて、ちゃんと答えよう。
「そう、ありがとう。あなたがエヴァちゃんで合ってるわよね?」
・・・合ってるかと聞かれるとどうなんだろう?この人が探しているのは、私とは別のエヴァさんの可能性もあるわけで。
「あら?・・・。あなたのお名前はエヴァちゃんで合ってる?」
うーん。本名は違うんだよねぇ。カバンに書いてあったからその名前で名乗っただけで。でもこの世界で名乗る分にはそう名乗ってるし、いいのかな?・・・本当にいいのかな?何らかの理由で本名聞いてたらどうしようか?
「あらあら?違うのかしら・・・?あなたのお名前は?いえ、ダメね。えーっと、あなたがこの世界にやってきて、今までにあなたを呼ぶ目的で名前を呼ばれたことはあるかしら?」
うん。
「それは誰かがつけてくれた名前なのかしら?」
ううん。
「それはつまり、自分を読んでもらうための名前を、誰かに伝えたことがあるってことよね?」
うん。
「首の動きだけじゃできないかもしれないけど、私に伝えてみてくれるかしら?」
うん。
私は頷くと、カバンを突き出して指さす。
「そう、エヴァちゃんっていうのね。ありがとう。」
それはもう、とてもとーっても深い笑みを浮かべてそう言うと、立ち上がり、優雅な仕草でお辞儀する。
「私の勉強不足、実力不足を痛感いたしました。今日のところは帰らせていただきます。」
「そうか!また会おう!!」
「またエーヴァちゃんのことで話し合いましょうね!!」
「・・・お疲れ様。」
「・・・お疲れ様です。」
そう別れの言葉を告げると、路地の向こうへと立ち去って行った。なんか、あの女性と私以外のメンバーとの距離が縮まった気がする。まぁ良いことだよね。
ところであの人、名前なんていうの?