表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/96

1日目 人は見かけで判断してはいけません。


 現在の所持品

 How to healer 1冊

 銀貨4枚 銅貨19枚

 ルクーセ特製サンドイッチ 3つ

 空の水筒 1つ


 井戸から水を汲み上げる。滑車のついたロープを引っ張って、先についた桶を引き上げるスタイルだ。引けないほど重くはないけど長いから結構大変。

 水の入った桶を引き出せたら、桶から水筒へ水を移す。ルクーセおばちゃんが売ってくれた水筒は皮っぽい材質で出来たもので、500ミリリットル入るか入らないかくらいのサイズのものだ。先端が細くなってはいるが手先は不器用ではないので、特にこぼすこともなく水筒に移すことに成功する。


 サンドイッチはどこで食べようかなぁ。人のいなさそうなところを探してもいいけど、変なところに入り込むのも嫌だし。この広場、全然人いないからここでいいか。ルクーセおばちゃんはいるけどルクーセおばちゃん相手なら見られててもいい。むしろ見られていたい。


 広場にあった木の陰に座り込み、サンドイッチをぱくつく。あ、おいしい。フランスパンに野菜とハムとチーズを挟んで、シンプルにマヨネーズのみの味付けでまとめてある。でも、トマトらしきものは四角い物を輪切りにしたような形をしているし、葉物はキャベツでもレタスでもなさそうだ。ハムとかの材料も私の知ってるものとは違うのかなぁ。


 知らないものを口にしてると思うと若干怖いが、やばい物ではないだろうし、まぁおいしいから良しとしよう。もしゃもしゃ食べながら水を飲む。井戸から汲んだばかりの水はよく冷えていた。ぷはっ。冷えた水ってなんでこんなおいしいんだろ。


 上機嫌でサンドイッチをいただきながら、これからのことを考える。ごはん食べるためにも何か仕事しないとなぁ。あ、その前に今日泊まるところ考えてなかった!宿屋とか探さなきゃ。


 ごちそうさまでした。

 ゆっくり立ち上がり、村の探索を始めることにした。



―――――――――――――――――――――――


 村を見回っていたら日が傾き始めた。この村には2~30軒の家がある。中でも数軒、ドアの上に何らかのマークが着いた看板がかかっている家があって、タブンそれがお店屋さんだと思う。なんかこう、客引きというか、こんなの売ってますよーってアピールが全くなかったが。競争相手のいなさそうな村だしそんなものなのだろうか?


 そして今、私の目の前にあるのが、ベッドっぽいマークのかかった家。これ、宿屋さんだよね?そうだよね?寝具屋さんだったら見て回るだけ見て、なんかほしいのなかったわぁみたいな顔して出ていこう。もし所持金的に泊まれなさそうだったら、あれ忘れてたわぁみたいな動きして逃げ出そう。


 大きく息を吸ってぇ、はいてぇ。眉をひそめ、ショルダーバッグのベルトを握る手を強める。大丈夫。不測の事態が起きれば逃げればいい。そう、逃げればいい。


 ゆっくりと扉を開ける。


 「らっしゃい。」


 カランコロンと扉についた鐘の音が鳴り、目に傷のある、厳つい顔をしたスキンヘッドのおじちゃんが歓迎の言葉を口にしていた。のが閉まりゆく扉の向こうにちらっと見えた。

 でも1泊銀貨1枚って書いてあった!でも1泊銀貨1枚って書いてあった!!私の心が駄々っ子モード。


 野宿か、モンスターハントか・・・。いや、おじちゃんはおそらくモンスターではないのだけれど。

 私が頭を悩ませていると、ルクーセおばちゃんのお店でもあったオレンジ髪のお姉さんが、モンスター宿屋に入っていった。この村の人じゃないのかな?

 ちなみにドアを閉たらすぐ横にずれて悩んでいるので、お姉さんの入る邪魔はしていない。私は自分本位なふぁきゅーリア充とは違うのだ。・・・なんか、ままならない現実に私の心が擦れてる気がする。


 中から声が漏れてくる。

 「ロカンおじさーん。今日も頭、光ってますねぇ。」

 「おうよ、人間、輝きを失ったらおしめぇだからな。」

 「1泊お願いしますねぇ。」

 「あいよ、銀貨1枚ね。」


 あれ、良い人そうだぞ?そこそこないじり方をしてるのに怒るでもなく、ユーモアある返しをしている。

 私の良い人センサーが反応している。これはいける!


 銀貨を1枚取り出し、中が静かになるのを確認してから、もう一度扉を開ける。


 「らっしゃい。」


 さっき見たのと同じ厳つい顔で迎えてくれる。落ち着け。大丈夫、きっとあの人なりの精一杯の営業スマイルなんだあれは。

 勇気を振り絞っておじちゃんの前まで行くと、1泊銀貨1枚の文字を指さす。


 「ん?あぁ、一泊でいいかい?」


 私は力強くうなずくと、銀貨1枚を差し出す。


 「ちょうどね、毎度あり。部屋はそっちにあるからね。」


 ロカンおじちゃんはそう言って番号のついたカギを渡してくれる。なんとか目標は達成できそうだ。私はお辞儀すると、ロカンおじちゃんの指さす方へ向かう。


 「ちょっと待ちな。お嬢ちゃん。」


 体が直接命令を受けたように即止まる。ナンノヨウデショウカ。できれば呼び止めないでほしかった。


 「嬢ちゃんうちの宿は初めてだろう?トイレはそっち。風呂はこっちにあるから夜でも朝でも好きな時に使ってくれていい。タオルに洗濯用の洗剤。あと、俺には必要ないがシャンプーも常備してあるから、使ってくれよ。」


 ロカンおじちゃんは親指を立てて口角を上げながらそう言った。光り輝く歯と頭が光を反射してまぶしい、セリフは良くても、ロカンおじさんの顔が厳ついのは変わらないのでせっかくのさわやかな笑顔も若干怖い。


 私は精一杯の笑顔を作ると、会釈してその場から立ち去った。タブン眉をひそめながらの私の笑顔もかなりあれだったと思う。


―――――――――――――――――――――――


 さて、ここで問題が一つ。お風呂っていつ頃が空いてるんだろう?できれば誰も入ってない時がいいんだけど、前世では自宅のお風呂以外に入った経験がほとんどないからよく分からない。朝の方が空いてるかな?早起きして入りに行こう。


 宿の部屋の机でHow to healerを読み進めながら晩御飯にする。ショルダーバッグからルクーセ特製サンドイッチを取り出すとぱくつく、水がぬるくなっているけど、まぁしょうがない。


 日は傾いていたので暗い。一応部屋にろうそくとマッチは置いてあったが、わざわざ使わなくても聖なる光で照らそう。ロバ君は封印したので、特に面白みのないデスクライト型を作る。


 How to healer 目次

 初めに              ・・・・・・・・・・003

 ヒーラーとは           ・・・・・・・・・・005

 ヒーラーの使える奇跡、祝言一覧  ・・・・・・・・・・009

 ヒーラーの適性があるあなたへ   ・・・・・・・・・・126

 あとがき             ・・・・・・・・・・128

 

 日が完全に沈むころには奇跡と祝言の一覧を読み終えることができた。とりあえずすべて発動はできそうだ。適性があっても覚えないといけないんだけど・・・。


 ヒーラーの適性があるあなたへ

 『ヒーラーの適性があったそこの君!そうだ、君だ!

  聖なる光は出せたけど、ほかの奇跡は使えなかった?いくつか使える奇跡はあるけど戦闘でうまく使えるか不安?そんな不安を抱える君も大丈夫!ヒーラーの仕事は冒険者のみに限らず多い!それなのに適性のある人が少なく引く手あまたの状態なんだ!それじゃあヒーラーにはどんな仕事があるのか確認してみよう!』


 お?仲間探さなくていいの?それはいいね。


 『まずは冒険者!危険も伴うけどその分報酬も高く、夢のある仕事だ!一攫千金を目指してなる人も多い!適性次第では狙って損はないはずだ!

  次に治癒師!拠点を構え、怪我や病気の治療をする代わりに代金をいただく仕事だ!一定の適性は必要だが安定感のある仕事だ!』

  

 治癒師?お医者さんみたいなことかな?でもいくら奇跡で治すと言っても患者さんから容体を聞き出さなきゃ仕事にならないよね・・・。それはちょっと難しそう。


 『最後は修道士!教会でのお祈りの際に、祈りの対象となる聖なる光を出現させるお仕事だ!聖なる光さえ出せればなれるから、適性の低い君にも安心だ!』


 聖なる光を出すだけ?え、これ良くない?聖なる光くらいならいくらでも出してられるよ?出しっぱでも大丈夫だよ?

 How to healerにイラストも載ってるけど、三角屋根に十字架が載ってるいかにもな建物っぽい。今日、宿屋を探すときに村のほとんどを回ったと思うけどそんな建物あったかなぁ?


 とりあえず明日は教会探しに出かけよう。

 そう心に決めると私はベッドに潜り込み、目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ