1日目 ルクーセおばちゃんマジ天使!
・・・・・。
村の入り口、その前に立つ。大丈夫だよね?中で読んだ方がいいって言われたもんね?罠じゃないよね?
腰が引けた状態で全力で手を伸ばし、指先だけ村の中に入れてみる。特に警報とかは鳴らないみたい。
眉をひそめながら、ショルダーバッグのベルトをギュッと握る。大きく息を吸って、止める。
私は村への一歩を踏み出した。
ふっふっふ。入ってしまえばどうということはない。あとは誰にも会わないように、誰も通らなさそうな木陰で本を読むだけだ。
・・・お腹空いた。
さすがに何も食べないで生きていくのは無理だろう。コンビニ無いかな?周りを見渡すと木でできた家が立ち並ぶ。さすがにないか。
しかし注文しなくてもいい店が絶対条件だ。もしないなら何も食べないで生きていこう。
少し歩くと街の中心に開けた場所があり、優しそうな顔のおばちゃんがやっている屋台のようなものを見つけた。オレンジの髪のマスクをつけたお姉さんが買い物をしている。
「ルクーセおばちゃん、このサンドイッチおいくら?」
「あぁ、銅貨3枚だよ?」
「そっかぁー。銅貨3枚かぁ。」
そういってお姉さんは銅貨を取り出す。見る限り私の持ってた巾着袋に入ってたものと同じものだ。
「それじゃあ、このルクーセ特製サンドイッチ1つくださいな。」
「あいよ、まいどあり。」
その女性はサンドイッチを一つ買うとどこかへ歩いて行った。あそこなら私でも買えるかなぁ?
とりあえず一度でも買い物に行く回数を減らしたい。銅貨は10枚あるから3ついっぺんに買っていいかな?すぐに払えるように巾着袋から銅貨を取り出す。いち、にー、さん・・・9枚。間違えると嫌だから念のためもう一度確認していこう。
ルクーセおばちゃんのお店の前に立つ。
「いらっしゃい。ん?ルクーセ特製サンドイッチなら銅貨3枚だよ?そう。3枚。・・・。あ、3つなら9枚だよ?」
そう!3つ!首を全力で立てに振ると銅貨を渡す。
「はい、ちょうどね。まいどあり。また来てねお嬢ちゃん。」
商品を受け取ると頭を下げて立ち去る。私みたいなの相手でもいやそうな顔一つせず、意図を組んで、笑顔で接客してくれる。・・・良い人だ。
チョッピリ幸せ気分でサンドイッチを食べるにふさわしい木陰を探す。あ、ちょっと待って飲み物欲しい。
ルクーセおばちゃんのお店に目を向けるとお店の近くに井戸を見つける。広場に置かれてる感じだけど、あれって使っていいやつかなぁ?
迷っているとさっきルクーセおばちゃんのお店で買い物をしていた、マスクをつけたオレンジ髪のお姉さんが井戸から水を汲みだした。でも、あの人の所有物の可能性もあるし・・・。
私が井戸を眺めているとルクーセおばちゃんが声をかけてくれた。
「あ~~、お嬢ちゃん。そこの誰でも使っていい井戸で汲んだ水を入れられる水筒、買わないかい?」
ルクーセおばちゃん!
私はルクーセおばちゃんの元に駆け寄り、目を輝かせ、頷く。
「あいよ、銅貨2枚ね。」
巾着袋を開けて固まる。銅貨はあと1枚しかない。この銀の奴使えるのかな?
すると、硬貨の音がするのに袋を覗いて固まった私を見て。ルクーセおばちゃんが声をかけてくれる。
「あ~~、銀貨なら銅貨18枚のお返しだよ?」
ルクーセおばちゃん!!
銀貨を差し出しておつりと水筒を受け取る。
私は深く、深くお辞儀をするとその場を後にした。
ルクーセおばちゃん天使!マジ天使!!