【11日目】タフティ視点 平和な日
私の名前はタフティ。トナリノ町でシスターをやってたりするわ。
「ねぇ?クレハぁ?」
「・・・何よ?」
「・・・なんでそんな嫌そうに返事するのよ。」
「あんたがそうやって、若干猫なで声を出すときは、だいたい面倒ごとを押し付けられるからよ。」
いやぁ、面倒ごとって程じゃないと思うんだけどなぁ。警戒されちゃってるし、一応弱腰で交渉してみようかな?
「そのね?聖なる光って形を変えられたりするの?」
「・・・?出来るわよ?」
「ほら、いつも丸い光に祈ってるんじゃ、お祈りに来る人だって飽きちゃうかもしれないじゃない?」
「そんな奴はお祈りになんて来ないと思うけど・・・。」
「だからね?もうちょっとこう、神々しい感じにできないかなーって。」
「うーん・・・。しょうがないわねぇ。」
エヴァちゃんがいなくなってから、お祈りに来る人は目に見えて減った。どれくらい減ったかと言うと、今は長椅子の半分も埋まらないくらいだ。まぁ、元はこれより少ないくらいだったし、食べていけないってわけではないが、一度おいしい思いをすると、もう一度と思ってしまうのが人のサガだ。
「ほら、出来たわよ。」
なにか文句でも出るかと思ったが、案外すんなり作ってくれた。どれどれ・・・。
「なにこれ?」
「そこのステンドグラスに描かれてる女神様を作ってみたわ。」
あ、へー。うん、そうなんだ・・・。見せてくれたものは、かろうじて人型に見えるくらいの代物で、多分これを見て女神様と分かる人物は、作った本人以外存在しないだろう。あと小さい。手のひらサイズだ。そりゃそんなサイズで作ろうとしたら、ぐちゃってなるわよ。
「・・・友情ポイント含めて6点ってとこね。」
「謎のポイント入れても一桁なの!?」
「これさ?もうちょっと大きく作ってみない?」
「嫌よ!聖なる光の魔力消費は少な目だけど、案外馬鹿にならないんだからね!」
うぬぬ。エヴァちゃんは等身大だったのに・・・。でも本人が嫌だって言ってるんだから仕方ない。
「じゃあさ、サイズはそのままでいいからもうちょっとこう、リアルにできない?」
「あのねぇ?聖なる光の形は自由自在だけど、思い浮かべたとおりにできるわけじゃないの。形を変えるイメージとしては、魔力で作った粘土で形作るみたいなものなの。そんな綺麗には出来ないわよ。」
「なるほど、あんたが不器用ってことね。」
「不器用じゃないわよ!結構難しいのよこれ!」
えー?少なくとも私が粘土使って作っても、これよりはましなものが出来る自信があるけどなぁ。
「エヴァちゃんは生きているかのような人間を作ってくれたのに・・・。」
「それはもう、芸術家にでもなりなさいよ!」
「君らは一体なんの話をしているんだ?」
声のした方を振り返ると、教会の入り口にヴァーンが立っていた。エヴァちゃんがいなくなっても来るのね・・・。
「ブエェ、ヴァーンだぁ。」
「・・・君は私の顔を見たら、変な声を上げないと気が済まないのか?」
「ちょっと聞いてよヴァーン!タフティったら私に無茶振りした挙句、不器用呼ばわりしたのよ!」
「どれ、見せてみなさい。・・・まぁ聖なる光は扱いが難しいから仕方ないだろうな・・・。」
「そう思うなら目を見ていいなさいよ!!」
ほらぁ。ヴァーンだってそう思うんだ。あ、そういえばヴァーンに用があったんだった。
「そうそう、ちょっとヴァーンに紹介したい人がいるんだけど。教会で一目見て、お近づきになりたいそうよ?」
「ちょっと待ちなさいよ!私のこのやるせない気持ちはどうしたらいいのよ!?」
「芸術家を目指す糧になればいいんじゃない?」
「芸術家になりたいなんて思ってないわよ!!」
「えー?じゃあまた今度、粘土で形作る練習でも一緒にやる?」
「・・・そうね。それならいいわ。」
冗談だったんだけど・・・。本人が喜んでるならまぁいっか。
「それで?私に紹介したい人というのは?」
それはこの町で宿屋やってるポフィーちゃんなんだけど・・・。なんて紹介したらいいんだろう?あれは男として紹介したらいいのか、女として紹介したらいいのか・・・。いや、そういえばそもそも・・・。
「えーっと。ヴァーンは妖精って信じる?」
「まちなさい、君は一体何を紹介するつもりだ?」
「いや、違うのよ?おそらく人よ?今のところは人よ?」
「そのうち人ではなくなるのか!?」
「機会があったらそうなるわね。この前、「ルクーセの奴が天の使いに見初められて天使になったんだから、私には森の使いとかが来て妖精にしてくれるに違いないわ!」って言ってたもの。」
「その人はいろいろと大丈夫なのか・・・?」
それは私にも分からないわ。