【11日目】ユン視点 脱兎2
僕の名前はユン。今は馬鹿二人に頑張って説明してるところだよ。
「いいかい?二人とも、この黒服の人が冒険者ギルドの関係者である可能性は限りなく0に近い。ちゃんとギルドに行って確認をとるのが一番だよ。」
「ふむ、ユンがそう言うならそうしよう!」
「シーラもそうします!」
「・・・ありがとうございます、うさぎさん。本当に。」
少女が疲れた顔でお礼を言う。いや、君は頑張ったと思うよ?
「ちぃ!気づかれてしまっちゃあしょうがねぇ!当初の予定通り、戦って勝つ!」
「危うく騙されるところだった。嘘をつくのはいけないことなんだぞ!」
「シーラを騙せると思ったら大間違いです!」
「シーラさんは思いっ切り騙されてましたよね?」
僕以外の全員が戦闘態勢に入る。あの黒服本当にやる気なんだ、その男気は買うけど、ちょっと相手が悪すぎるね。特に盛り上がりもなく、勇者君達が勝った。
「諦めて立ち去るんだ!」
「ちぃ!うちを敵に回して、ただで済むと思うなよ!」
綺麗な捨て台詞を吐いて逃げていった。脅すなら名乗っていって欲しかったなぁ。どこを敵に回したのか分からずじまいだ。
「ありがとうございました。お陰様で依頼を達成することが出来そうです。」
「困っている人を助けるのは当然のことさ。一応、確認のためにギルドまでついて行っていいかい?」
「はい、それはもちろん!」
皆で冒険者ギルドへ向かう。実はこっちが悪者でしたーとかだったらすごいと思うけど。特にそんなこともなかったみたいだ。
「おぉ、戻ったのかサリー。」
「はい、ただいま戻りました!」
ギルドにいたおじいさんと、親しげに挨拶をしている。たしかこの人がここのギルドの長だね。勇者君と話してるのを何度か見たことがある。
「勇者さんたちが助けてくれたんですよ?」
「おぉ、そうか。お礼をせねばなるまいな。ありがとう、勇者君。」
「いえ、僕は当然のことをしたまでですから。」
「それで、導きの玉は取り返せたのか?」
「はい、そこに!」
そう言ってサリーは僕を指さす。あぁ、そういえば僕に括りつけられてるんだったね。
「外せますか?うさぎさん?」
「僕には無理だね。外してくれる?」
「分かりました。痛かったら言ってくださいね。」
そう言ってサリーがほどくのに挑戦する、しかし一向に取れる気配がない。球体なんだからスルンと抜けそうなものだけど、かっちりと縛られているようだ。エヴァは無駄に器用だからねぇ・・・。
「・・・これ、外れませんね。」
「どれ、僕にもやらせてくれないか?・・・硬いな。」
「もっと力入れても大丈夫だよ。でも聖なる光で出来てるから、結び目は食い込んじゃってるね。」
その後もギルドにいた何人かで、いろいろな方法を使って挑戦したが、エヴァの縛った紐を解くことは出来なかった。
「はい!切っちゃえばいいんじゃないですか!?」
「勇者さんは聖なる光が切れますか?」
「できなくはないが、結構な大技を使わないといけないな。縛られているユンがちょっと真っ二つになってしまうね。」
ちょっと真っ二つってなにさ。もちろんダメだよ?
「そうだ!エヴァ君を見つけて、回復の準備をしてもらえばいい。切った後にすぐに治してもらおう!」
「いや、治せば切っても良いっていう発想はやめてもらえる?」
「そもそもエヴァさんがいるなら、聖なる光を解除すればいいんじゃないですか?」
・・・確かに。
ギルド総出でエヴァの捜索が始まった。