11日目 アナログチャット。
現在の所持品
How to healer 1冊
冒険者カード 1枚
パジャマ 1セット
銀貨15枚 銅貨2枚
水が半分入った水筒 1つ
癒しの神の杖 1本
装着型魔力測定装置・改 1つ
ロボットサンドイッチ上 3つ
王命の手紙 1枚
いかにもな人に捕まった時ってどうすればいいんだろう?防犯ブザーでも持っておけばよかった・・・。とりあえず、下手に刺激しないのが一番だよね。そう思いながら、相手の顔色でも伺おうと、振り返ってみる。
身長は180はあるだろうか、サングラスで隠れた顔はどんな表情をしているかは良く分からない。ていうか怖い。右手で私の手を掴み、左手で私に水晶玉を託した少女を掴んで・・・掴んで・・・。
・・・少女は男の拘束から抜け出していた。男が掴んでいるのはちょっと人っぽい形になっている丸太の枝だ。う、うわーお。ジャパニーズニンジャ。人が刺激しないようにと考えている矢先に、そんな一番怒りそうなことしないでほしい。
いや、でも抜け出してるんだから、私のこと助けてくれるかもしれない。そんな淡い期待をしていたら、少女は人差し指を立てて口元にあて、シーッのジェスチャーをしながら、その場から立ち去ろうとした。・・・・・・。
自由な左手で指さす。黒服さん!あっち!あっち!押しつけようとした甲斐あって、振り返った黒服が逃げ出した少女を見つける。
「えぇっ!なんでそこでバラしちゃうんですか!?」
だって、見捨てようとしたんだもん。黒服は慌てて丸太と投げ捨てると、私から手を離し、少女を追いかける。
「残念でしたね。私から目を離したのが悪いんですよ?」
黒服が少女を掴む。そう思った瞬間、少女の姿がぶれる。少女を捕まえると思った黒服の手は、むなしく空を切るのみであった。黒服が周りを見渡す、しかしもう少女の姿はどこにもない。黒服が私を視界にとらえる。
ゆっくりと黒服がこっちに歩いてくる。サングラスをしているので表情は分からないが、サングラスをしている大きな男が近寄ってくるだけで威圧感が凄い。おこだよあれ、絶対おこだよ。逃がしたらまずい人逃がして激おこだよ。
黒服が私の目の前に立つ。何も言わないで、私をじっと見つめてくる。待って、超怖いんだけど。誰か助けて?蛇に睨まれた蛙状態で棒立ちすることしかできない。
黒服が自分のポケットに手を突っ込む。・・・何?何を出す気?怪しいお薬?拳銃?しかし私の予想とは外れ、黒服が取り出したのはウサギのついた可愛い絆創膏。・・・あれ?絆創膏に見えて、なにかのファンタジーアイテムなのかな?
困惑する私に、黒服は近くの壁を机代わりにして何か書き、私に渡した。
『怖がらせてすみません、転んでいたので、良かったらこれ使ってください。あと、あのウサギさんがどこに行ったのか分かりませんか?』
あ、この人、口下手なだけだ。急に親近感が沸く。ウサギにさんをつける人に、悪い人がいるわけがない。ユンがどこに行ったのかは分からないので、首を横に振る。
『あ、良かったらメモ使います?』
使います使います!いいねぇ筆談。私もメモ用意して筆談できるようにしようかな?
『ごめんなさい、私、人と話すのが苦手で。怪我はないので大丈夫です。』
『分かります!僕も人を前にすると、どうしても言葉が出なくて・・・。』
この世界で初めて私と分かり合える人物に出会えた気がする。ちょっと嬉しい。
『申し遅れました、僕はロインと言います。お見知りおきを。』
『私はエヴァと言います。よろしくお願いします。』
自己紹介の隣に、ウサギさんの絵をかいてみた。少し口角が上がっている気がする。どうしよう、筆談楽しい。何か通じ合ってる感じがある。
『絵がお上手なんですね。何かコツとかってあるんですか?』
そう書いてある隣には、何やらいびつな黒い物が描かれていた。どうしよう、絵を描いたんだと思うんだけど、何か分からない・・・。変に当てようとするより、素直に言った方がいいかなぁ?
『ごめんなさい、何を描かれたのか、分かりませんでした。』
『謝らなくていいですよ!僕の描いた物を当てられた人いないんです(笑)』
『そうなんですか(笑)上手くなるには練習が必要ですが・・・。何を描いたか分かるようになる程度なら、いくつかのポイントを押さえるだけで描けるようになりますよ!』
『本当ですか!ぜひ教えてほしいです』
『――――――――――――――――――――――。』
『―――――――――――――――――――。』
その後も、メモ帳がなくなるまで二人の筆談は続いた。いやぁ、楽しくて有意義な時間だった。
あれ?私、なんで筆談してたんだっけ?