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10日目 私だって、友達の意味くらいは知っている。


  現在の所持品

 How to healer 1冊

 冒険者カード 1枚

 パジャマ 1セット

 銀貨16枚 銅貨15枚

 空の水筒 1つ

 癒しの神の杖 1本

 装着型魔力測定装置・改 1つ

 ロボットサンドイッチ上引き換えコイン 3枚


 結局ルクーセおばちゃんはどこ行ったんだろう?


 「ルクーセおばちゃんなら、屋台に置手紙がありますよ?」


 ・・・最初からそれを言ってくれればいいのに。屋台には『昼には戻ります』とだけ書かれた紙。商品そのままなんだけど・・・。不用心過ぎない?お金だけ置いて、買い物済ませてもいいけど・・・。待とうかな。


 「シーラもお供しますよ!」


 いや、もういらないから、消えていいよ?


 「ひどくないですか!?・・・またシーラが恋しくなったらいつでも呼ぶんですよ!」


 そう言ってシーラは空へと飛び立っていった。恋しくなったことも呼んだことも一度もないんだけど・・・。


 一人になると、愛しの木陰に移動する。杖を放り投げ、腰掛ける。最初に比べて荷物も増えたなぁ。変なのばっかりだけど・・・。しばらくHow to healerを読んでいたら、ユンが戻ってきた。


 「もう回り終わっちゃったよ。本当に何の変哲もない、小さな村って感じだね。」

 

 ピョコピョコ私のひざに乗り込む。今日はなんとなく右手で相手してやろう。


 「あー。場所が屋外になっただけで、またこの、定位置で撫でられ続ける生活が始まるのか。」

 「・・・不満?」


 自分から乗り込んできたくせに。


 「いや?勇者君とやたら危険な場所を走り回るよりかは好きかな?」

 「・・・勇者君信者なんだから、喜んでついて行けばいいのに。」

 「僕がついて行っても、一緒に冒険してる感じじゃないだろう?」


 あくまで探してるのは一緒に冒険する仲間なのか。そういえばユンはどうしてそんなに勇者君押しなんだろう?


 「・・・ユンは勇者君とどういう関係なの?」

 「うーん。どうと聞かれると難しいね?僕が一方的に崇拝してる感じかなぁ?」


 崇拝してたのか。勇者君信者という言葉は、あながち間違いでもなかったらしい。


 「ちなみに、エヴァは僕のことをどう思ってるんだい?」


 どう・・・かぁ。確かに難しいなぁ。ペット?でもあんまり飼ってるって感じじゃないんだよねぇ。


 「・・・友達?」

 「えっ?・・・そっかぁ、友達かぁ。悪くない響きだね。」


 ユンは少し嬉しそうにそう言った。


 「エヴァが友達なんて言葉、知ってたなんて意外だなぁ。」


 余計なことまで口走った。失礼な、意味くらい知ってるよ。意味くらい。


 「ごめん、ごめんって。でも、僕なんかが友達で本当にいいのかい?」

 「・・・うん、ユンは友達。」

 「そう言われると嬉しい物だねぇ。」

 「・・・この世界で唯一の。」

 「あれ、さっきまで嬉しかった言葉が、急に重荷に・・・。」


 ユンがビクンと体をゆすると、私のもとから逃げようとする。ふふふっ。逃がさないよ?この世界で私が会話できる唯一の相手だもの。


 「エヴァ?やっぱり僕たち、友達やめない?」

 「・・・親友?」

 「いや、そんな素敵な話じゃなくてね?」


 How to healerを置くと、ユンの好きなところを重点的に撫でてやる。ユンは私のひざの上で、気持ちよさそうに体をとろけさせる。


 「あー。両手はずるいよ、両手は。」


 このまま懐柔してやろう。そう思っていたら、突然目の前に勇者君が現れた。


 「やぁ、エヴァ君!」


 例の瞬間移動か、ユンを取り返しに来たの?敵なの?


 「な、なぜ戦闘態勢なんだい?」

 「あー。ちょっとふざけてただけだから、気にしないで?どうしたの勇者君?」


 どうやらユンが呼んだわけではないらしい。


 「そうだ、エヴァ君。君は王国に行く気はないかい?」

 「王国ってオオキナ王国?あんな人が多いとこ、エヴァが好き好んでいくわけないじゃん。」


 お?いいぞ!しっかり撫でたのが効いたのか、今日のユンは私の味方だ。


 「うむ・・・。僕もそう思って頑張ったんだが。すまない!」


 そう言いながら勇者君は一枚の手紙を差し出す。


 「あー。エヴァ、オオキナ王国に行かなきゃいけなくなったね・・・。」


 裏切るの早くない?もうちょっと交渉してくれない?


 「勇者の使い魔を連れ、癒しの神の杖を持ち、女神の口づけを使えるヒーラー。というのが出回ってしまってね・・・。王様から直々に会いに来るように、王命が出てしまったんだ。」


 えぇ・・・。何とかならないのそれ?


 「まぁそれだけ目立てば、謁見くらいしに来いってなるよねぇ。王命は無視するわけにはいかないから、まぁ、友達としてついて行くくらいはするからさ?」


 もう完全にあきらめムードだ。それだけ王命というのは覆せない物なのだろう。ていうか原因の三分の一はユンじゃない?

 王様に謁見、普通の人相手でもろくに会話もできないのに、そんなことできるわけない。王様の質問を首の振りだけで答えていいとは思えない。・・・無理。まじ無理。


 (―――。)


 私は聖なる光を出して、紐のように細長くする。その聖なる光で、ユンと癒しの神の杖を木にしっかりと結ぶ。

 よしっ。なかったことにしよう。


 旅に出よう!私の一人旅の始まりだ!


 「おーいエヴァ。友達のこと忘れてるよ?エヴァ?」

 「残念ながらエヴァ君。原因を取り除いても、もう王命は取り消せないんだ。」


 ・・・やっぱり?


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