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9日目 最初は丁寧に扱ってたんだよ?


  現在の所持品

 How to healer 1冊

 冒険者カード 1枚

 パジャマ 1セット

 銀貨17枚

 紅茶の半分入った水筒 1つ

 ロボットサンドイッチ下 1つ

 癒しの神の杖 1本

 装着型魔力測定装置・改 1つ

 ロボットサンドイッチ上引き換えコイン 3枚


 ケフー。


 今日のお昼ご飯は、タフティがおいしい料理をおごってくれた。出てきた料理は、やっぱり私の知ってるものとは少しずつ違う物だったが、高級中華っぽい物だった。特に北京ダックっぽいのが美味しかったなぁ。私の知ってるアヒルは、足が12本もある生物ではないんだけど・・・。まぁ、美味しかったからいいや。


 教会に戻ると、扉の前にユンがいた。


 「やぁ、君が教会にいないからビックリしたよ・・・。幸せそうな顔をしているね?なにかいいことでもあったの?」

 「・・・おいしいもの食べてきた。」


 ユンは最近運動不足だからと、朝一番で草原に出かけてしまった。幸せのおすそ分けをしてあげたい気持ちはあったけど、持ち帰っていいか聞く勇気は、私にはなかった。ごめんね?


 「へぇ?珍しいこともあるもんだねぇ。」


 一人と一羽で教会に入る。教会はいつもの静けさで私を迎えてくれる。やっぱり落ち着くなぁ。いつも通り過ごしていたら、お祈りの時間よりだいぶ早く、一人の男が教会を訪ねてきた。


 「こんにちは、エヴァ君。」


 高身長に、筋肉質な良いからだ。ウサピョンだ。名前は・・・えっと?ウサピョンでいっか。そのイメージしかない。


 「こんにちは。僕はユン。よろしくね?」

 「え、あぁ。こんにちは。私の名前はヴァーンだ。・・・聖なる光に言葉を喋らせることに成功したのか?」


 そうそう、ヴァーン。ヴァーンさんは、ユンが私の出した聖なる光だと思ってるらしい。聖なる光に喋らせるかぁ。出来たらいいけど、出来る気がしないかなぁ。


 「僕はただのウサギだよ?」

 「ただのウサギは喋らないと思うのだが・・・。おっと、すまない、何か踏んでしまった。」


 そう言って、ヴァーンさんが持ち上げたものは、癒しの神の杖だ。いつも長椅子に座ると、近くの床に適当に放り投げているものだ。


 「あぁ、それは癒しの神の杖だね。傷一つつかないらしいから、大丈夫だよ。」

 「いや、私の立場的に、一番踏んではいけない物な気がするんだが・・・。」


 そういえばヴァーンさんは神に仕える系だっけ。そんなに気にしなくてもいいと思うけどなぁ。


 「ふむ、見事な一品だな。」

 「見る人が見れば分かるんだねぇ。神木で出来た本物なんだって。」


 それを聞いたヴァーンさんは杖を持ったまま固まる。ギギギッとゆっくり首を動かしこちらを向く。ウサギの次はロボットのまね?


 「本物・・・。それは神器ということか・・・?」

 「あぁ、そう言ってたね。やっぱり珍しい物なの?」

 「珍しい・・・というか、存在するかもしれないと、まことしやかに囁かれている程度のものだ。『世界の危機に、癒しの神の一人がこの世に実体を持って現れた』という神話の一説によるものだな。」

 「・・・それは実体を持ってたんだから、杖も物としてあるだろう、ってこと?」

 「そうだ。」


 えぇ・・・。それはほぼ無いと言ってもいいんじゃ・・・。いや、目の前にあるのか・・・。


 「そうなると、今ここにその杖があるってことは、癒しの神様は今、杖が無い状態ってこと?」

 「いや、エヴァ君なら知っていると思うが。癒しの神というのは複数いるのだ。女神も男神も人型でない神様もいる。ヒーラーの起こす奇跡は、それぞれ違う神様が担当してるのだ。ヒーラーではない一般の人々には、あまり知られていないがな。」


 ・・・知らなかった。つまり女神の口づけは、運よく女神様が担当だっただけで、ムキムキの男のキスだったかもしれないのか。綺麗な女神様で良かったぁ。


 「一応、神に祈りをささげる者として、適当に床に置いておくのはどうかと思うのだが・・・。」

 「置くどころかしょっちゅう放り投げてるよ、エヴァは。」


 そう、私が癒しの神の杖を手放すのは珍しいことじゃない。なにせ、この杖を持ったまま、奇跡の発現をしようとすると、とんでもないことになるのだ。

 この前、間違えて持ったまま聖なる光を発現させたら、30倍の大きさのルクーセおばちゃんが30人で町を囲むことなった。お祈りどころではないだろう、世界の終末って感じだ。


 「・・・そうか。だが、傷つかないといっても、防犯面とかは大丈夫なのか?」

 「盗んでも捌くのが難しいからね。それに、持ち主が分かり切ってるものだし、勇者君を敵に回す度胸がある人はいないよ。」


 なんなら、私がいつもいるのは、町で一番足が速いらしいタフティのいる教会だ。丘の上なので人込みに紛れるまでが長いし、見つかったら逃げ切るのは難しいだろう。


 「なるほど・・・。ちゃんと考えがあって放り投げているわけだな。それならば良い。」

 「良いんだ・・・。」


 良いんだ・・・。


 ヴァーンさんはそう言いながらも、ゆっくり丁寧に、長椅子の上に杖を横たわらせた。さすがは神に仕える系男子だ。でも場所取るんだよね、これ。長椅子の上に置いていない理由は、あからさまに場所取りしてるみたいで嫌だからだ。置いてなくても、誰も座らないけど。


 杖を持つと、場所をとらないように、長椅子に立てかける。しかし、安定の無い杖なのですぐに倒れてしまう。・・・せめて今度は誰も踏まないようにしよう。私は杖を椅子の下に蹴りいれた。


 ヴァーンさんはその様子を、何とも言えない表情で見ていた。


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