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7日目 ウサギを撫でる時間。


  現在の所持品

 How to healer 1冊

 冒険者カード 1枚

 パジャマ 1セット

 銀貨17枚 銅貨12枚

 紅茶の入った水筒 1つ

 ロボットサンドイッチ下 2つ


 なんかいろいろあった気がするけど、買うものは買ったし、ぱっぱと戻ろう。シーラと二人で歩き始める。


 グー


 隣からお腹の音が聞こえた。・・・シーラ?


 「エーヴァちゃんと一緒にいるから大丈夫です。」


 いや、お腹減ったんでしょ?


 「エーヴァちゃんへの愛が本物なら、何も食べなくても大丈夫なはずです!」


 それは人間が到達してはいけない領域だから。なにか食べてきなよ。


 「エーヴァちゃんが天使の笑顔で、『お腹減ってなんかないよね?シーラちゃんっ?』って言ってくれたら大丈夫になる気がします。」


 この状況でそんな発言をする人は、天使ではなく悪魔だと思う。ていうか仮にそれで、本当に大丈夫になっても、私にメリットがないんだけど。やるわけないよね。


 「うぅ・・・。エーヴァちゃん、一人で帰れますか?危ない人について行っちゃだめですよ?」


 危ない人なら私の目の前にいるんだけど・・・。手でどっか行けのジェスチャーをする。シーラは、名残惜しそうに、私に手を伸ばしながら、空高くへと飛んで行った。


 「また、会いましょう。エーヴァちゃーん!」


 いや、普通に歩いて行きなよ・・・。



―――――――――――――――――――――――


 教会に戻ると、扉の前でユンが座っていた。


 「あぁ、お帰り。サンドイッチを買いに行ってたんだろう?」

 「・・・良くわかったね。」

 「エヴァが出かける理由なんて、それくらいかなぁって?」


 なるほど、納得の理由だ。教会の扉を開け、いつもの右後ろの長椅子を、ユンと占拠する。


 「あれ?杖はどうしたの?」

 「・・・貸した。」

 「・・・貸し借りをする、知り合いなんていたんだ?」


 失礼な・・・。まぁいないんだけど。


 「・・・無人販売所のオーナー。研究するんだって。」

 「研究ねぇ。」


 ゆったりとした時間が流れる。片手をモフモフさせながら、もう片方の手で、How to healerを開いて、祝言の練習をする。やっぱり、こういう穏やかな時が一番だよねぇ。

 

 「僕もあの杖は気になってはいたんだよねぇ。勇者君が報酬を分けるのに、相手を少なくするのをよしとするとも思えないし。案外、勇者君見る目はあるから。」

 

 ・・・それはつまり、あの杖に金貨ウン十枚以上の価値があるってこと?急にあの杖の存在が、重たく感じるようになった。クッティがそのまま借りパクしたりしないかなぁ?そうしてくれたら、気楽なのに。


 「どっかで見たことある気がするんだよねぇ、あの杖。なにか有名な物だったりしないの?」


 そう言われると、見たことがある気がしてくるから不思議だ。でも私が、この世界で有名な杖なんて知るわけないでしょ?


 「・・・わかんない。」

 「まぁ研究するって言うくらいだから、終わったら教えてくれるんじゃない?」


 そんな、まったりした時間はあっという間に過ぎていく。誰もいない静かな教会も、夕方になれば、お祈りに来た人でいっぱいになる。ていうか最近は、お祈りに来る人も増えて、本当にいっぱいになる。そろそろ長椅子が足りなくなってくるころだ。それでも私の隣に座るのは勇者君くらいだけど。


 「やぁエヴァ君。隣、いいかな?」


 頷く。別に指定席ってわけでもないしね。ていうか忙しいだろうに、お祈りに来たの?案外熱心な信仰者にでも、なったのかしら?


 まぁそんなわけもなく。


 「エヴァ君。もし良かったら、僕と一緒に冒険に出てはくれないだろうか?」

 

 お祈りが終わり、人がいなくなっていくと、私にそう言ってきた。

 ・・・え?今から?ていうかうそでしょ?今日の朝行ったばかりじゃん?どんなペースで行く気なのよ?頭に疑問符がいっぱいで、最後まで言い切らせてしまった。

 まぁ答えは決まってるけど。


 「そうか・・・。」


 勇者君は本当に残念そうだ。本当に今から行く気だったの?


 タフティから、報酬の銀貨1枚をもらうと、そのまま、ユンと一緒にいつもの妖精の止まり木に行く。


 「あんらぁ、エヴァちゃんじゃない。女神様騒動で、うちにお試しで来た人が、結構リピーターになってくれてねぇ。うちも結構繁盛するようになったのよぉ。あっ、ちゃんとエヴァちゃんの部屋は開けといてあるわよっ。」


 ウィンクと投げキッスが同時にきた。さすがに二つ同時はきつい。とりあえず、ユンを盾にする。


 「僕を盾にする癖、やめてもらえないかなぁ?」


 ユンの小言をスルーしながら、部屋に入る。とりあえず、お風呂に入ろう。そういえば、好きに使っていいと言われてるけど、ウサギ風呂に入れるのはどうなんだろう。まぁすでに昨日、入れたんだけど。


 「・・・毛が抜けないよう、気を付けて入るように。」

 「いや、それは僕にはどうしようもできないよね?一応僕も聞いておいたけど、エヴァ以外が泊まることになったら、その前に掃除するから大丈夫って言ってたよ。」

 「・・・申し訳ないなぁ。」

 「いつも部屋空けといてくれてるしねぇ。まぁ、でも。繁盛の理由の女神様は、エヴァが出したものだろう?ギブアンドテイクの関係ってことでいいんじゃないかなぁ。」


 なるほど?頼まれてやったわけじゃないから、あれだけど・・・。


 お風呂が終わったら御飯にする。今日も晩御飯には、生野菜の盛り合わせが付いていた。お風呂と食事が終わると、ユンをベッドに手招きする。ちこうよれ、撫でてやろう。


 「・・・ユンが植物以外を食べてるとこ、見たことない。」

 「そういえばそうだね。嘘をつく必要もないし、本当に雑食なんだよ?」


 まぁ本人がそう言うなら、そうなんだろうなぁ。あ、でも。


 「・・・ユンは裏切り者だから。」

 「また、そんな雑に撫でて・・・。朝のこと、まだ怒ってるの?ちゃんとエヴァも大切に思ってるよ?勇者君が一番なだけで。」

 「・・・私は何番?」

 「んー?二番かな?」


 ふむぅ。・・・許してやろう。


 「あーそれそれそれ。なんでこんなに、撫でてほしいところを、すぐ撫でれるんだろう。」


 私が一番になるように念を込めながら、満足いくまで撫でた。


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