7日目 エヴァは杖を手に入れた・・・いらないんだけどなぁ。
現在の所持品
How to healer 1冊
冒険者カード 1枚
パジャマ 1セット
銀貨18枚 銅貨4枚
紅茶の半分入った水筒 1つ
ロボットサンドイッチ下 1つ
「それじゃあ、皆、準備はいいかな?」
「バッチリですよぉ!」
勇者君が皆を見渡しながら、そう言った。準備かぁ、特に何も持ってないけど大丈夫かな?まぁ必要な物言われても、買い集めるお金もないですが。ちなみにやる気とかの話なら最初からない。
「じゃあ、行こうか!」
シーラの元気な返事を聞くと、勇者君は嬉しそうにそう言った。今から向かうのは、そんなに良いところじゃない気がするけど。
近場だと良いなぁとか思いながら、視線を下げながら、小さく息を吐く。いや、近場なら近場でなんかヤダな。いつも暮らしてる町のすぐそばに、魔王軍なんちゃらがいるのもなぁ。
そんなことを考えながら、顔を上げると、そこは暗い森の中でした。
・・・・・・。
・・・・・・・・KOKODOKO?
「じゃあ、行こうか!」
勇者君はさっきと同じ表情で、同じセリフを口にしながら、私の後方に向かって歩き出す。振り返ると、私の後ろには、何やら怪しげな雰囲気の大きな洋館が・・・。
「ここはどこですか!?シーラはだれなんですか!?」
「いや、勇者君。説明しないとエヴァとシーラが困惑してるから。」
良かったぁ、状況を呑み込めていないの、私だけじゃなかったぁ。でも、同じ気持ちを共有できる、唯一の相手は私のストーカー。
「そうか!説明するぞ!今から僕たちは、この館の主である魔王軍なんちゃらを倒す!」
良かったぁ、討伐相手の名前全然覚えてないの、私だけじゃなかったぁ。でも、同じ気持ちを共有できる相手、知ってなきゃいけない人。いや、勇者君は出発前にはちゃんと覚えてたよね?
「いや、そうじゃなくて、どうやってここまで来たのかを説明しないと。」
「そうか!僕の能力の瞬間移動で、一度でも行ったことのある場所には、一瞬で移動できるんだ!」
え?なにその便利能力。いいなぁ。それさえあれば、いつでもハジマリノ村に行けるのに。
「エーヴァちゃんを連れていく時には、ちゃんとシーラも一緒に飛ばしてくださいよ!」
「分かった!約束しよう!」
そうか、ストーカーを撒くのにも使えるのか。まぁその道は今、断たれたけど。
そんなこんなで、洋館の中に入っていく。入ってすぐの広いホールには、死神のイメージをそのまま具現化しました。みたいな見た目のモンスターがいっぱいいた。今はもういない。
なぜなら、勇者君がなんか凄そうな技名を叫びながら、すべて切り倒したからだ。
「みんな、怪我はないな!次に進むぞ!」
「はい!元気です!」
「まぁ敵が何かする前に、勇者君が倒しちゃってるからねぇ。」
怪我なんてしようと思ってもできない、その後もガンガン突き進む。そのたびに死神チックなのがいっぱい出てくるが。竜とか、神とか、必殺とか、秘儀とか、なんか凄そうな技名を叫びながら、あっという間に倒していく。一応バフはかけてるけど。意味があるようには思えない。
当たり前のように、怪我一つ負わない。ちょっと歩き疲れた自分に使ったヒールが、最初で最後だ。ちなみにユンとシーラは私の少し後ろを、キョロキョロしながらついてくるだけだ。
「ふはははははは!よくぞここまでたどり着いたな!」
大きな両開きの扉を開けると、そこには今までの死神っぽいのを、ちょっと豪華にした感じのが立っていた。多分こいつがこの館の主なのだろう。
「覇王斬竜剣!」
「ぐわぁああああああ!」
ノータイムで殺りに行った。もっとこう、お話とかした方が良かったんじゃないだろうか?しかし、ボス戦はそう簡単には終わらなかった。さすがは偉そうに、ここまで来たことをほめただけのことはある。
「ふはははは。掛かったな勇者よ!今貴様が切ったのは偽物だ!危害を加えたものに呪いをかける、私の呪術の一つなのだぁ!」
奥の暗くなっているところから、さっきの偽物より、もう少し豪華にした感じのが出てきた。
「覇王斬竜剣!」
「ぐわぁああああああ!」
もう何も言うまい。
それより気になるのは、呪いとやらだ、解呪の奇跡を発現させる。
「あぁ、ありがとう。でも、呪いや異常状態の類は僕には効かないんだ。」
どうやら意味なかったらしい。安全第一と一緒に冒険した時も思ったけど、私っていらないよね?今回は特にいらないよね?かすり傷すらなかったよ?
まぁいいや、終わったなら、帰れるだろう。早く帰って、今日の出来事は無かったことにしよう。
「さて、報酬は平等に分配でいいかな?」
「僕はいつも通り、ウサギだからいらないよ。」
「シーラも、エーヴァちゃんを見守ってただけだからいらないです。」
「そうか、じゃあエヴァ君と二人で分けようか。」
いや、私もただ歩いてただけだからね?意味あるかも分からない、バフしか使ってないからね?銅貨一枚受け取るのも申し訳ないわ。
部屋の奥に進むと、そこには金銀財宝ザックザク。
「ふむ・・・。合計の半分で金貨34枚くらいかな?エヴァ君は換金するのが難しそうだから、お金にしてから渡す、ってことでいいかな?」
いや、受け取れるかいっ!全力で首を横に振る。
「ん?このまま持ち帰りたいのかい?」
「いや、そんなに受け取れないって言ってるんじゃないかなぁ?」
ユン!やっぱり君は正しい価値観の持ち主だ!ユンを持ち上げて突き出し、全力で頷く。
「しかし・・・。」
「何か、エヴァでも受け取り易そうな代案とかないの?」
いや、何もいらないんだけど。勇者君は少し考えると、財宝の中から、一本の杖を取り出す。
「それじゃあ、この杖だけでも受け取ってもらえないだろうか?奇跡に関する効果だし、ヒーラーのエヴァ君にピッタリだと思う。」
「エヴァ?受け取らないと金貨数十枚だよ?」
・・・ほぼ強制じゃないか。しぶしぶ、杖を受け取る。白い杖で、先端がCのような形になっている。その中心には、赤い宝石のようなものがついていた。奇跡に関する効果って何だろう?聖なる光が使えれば良い私としては、どうでもいいんだけど。
「良く似合ってますよ!エーヴァちゃん!」
杖の長さが、私の身長と同じくらいあって、邪魔なんだけどなぁ。ていうかストーカーに褒められてもあんまり嬉しくない。なんでも似合うっていいそう。
何とも言えない表情を浮かべることしか出来なかった。