表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/96

5日目 真面目な人。


 現在の所持品

 How to healer 1冊

 祈りの言葉の小冊子 1冊

 冒険者カード 1枚

 パジャマ 1セット

 銀貨16枚 銅貨8枚

 紅茶の半分入った水筒 1つ

 ロボットサンドイッチ下 1つ


 朝のお祈りが終わり、私が朝ごはんを食べ終わったころ。


 「じゃあ、いってくるからねー?」


 タフティがそう言って、教会から出ていく。犯罪者を警察に引き渡しに行くそうだ。すると、すぐに見知らぬ男性が入ってきた。


 ぱっと見の印象として、とりあえずめちゃくちゃ背が高い。190センチくらいはあるんじゃなかろうか?背筋をピシっと伸ばし、まっすぐ前を向く姿は、きっちりとした性格を思わせる。というかどなた?お祈りはもう終わっちゃったよ?


 お祈りの時以外に、教会に誰かいることは珍しい。タフティもいつも、どっか行っちゃうんだよねぇ。


 何の用だろうと、眺めていたら。こちらに気づき、驚いたような声を上げる。反射的に私もビックリしちゃった。


 「驚かしたならすまない。君はこの教会で修道士をしているのか?」


 この席に私がいることも知らなかったし、よそから来たのかな?頷く。


 「名前を聞いても?」


 ショルダーバッグを突き出して、指をさす。


 「エヴァ君は喋ることができないのかい?」


 いや、そういうわけじゃないんだけど・・・。


 「声を出さない理由があるのかい?」


 どうしよう、ぐいぐい来るタイプだ。私が苦手とするタイプだ。理由はないんだけど・・・。


 「では、なぜ喋らない?」


 なぜ、と言われると困る。男の人は険しい顔をして、まっすぐこちらを見つめてくる。怒ってるのかなぁ?怒ってるよねぇ。まともに会話出来ない私が悪いんだもんね。。。左手でショルダーバッグのベルトを握りしめ、右手を長椅子につけて上体を反らす。


 「なるほど、私とは会話したくない、ということか?」


 ち、違っ。声を出さなきゃいけないと思えば思うほど、言葉に詰まる。息が荒く、嫌な汗もかいてきた。どうしようどうしようどうしようどうしよう。首を横に振りながら、私の頭は考える、いや、考えているようで思考は完全に停止している。


 「では、なぜ話さない?話さなければ、分からないこともあるだろう。」


 ごめんなさい私が悪いんですごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 体が震え、熱くなっていくのを感じる。教会の中って、こんなに暑かったっけ。


 逃げたい。そんな私の思いに答えるかのように、男の人は吹っ飛んでいった。どうやらタフティが蹴りをきめたらしい。


 に、逃げなきゃ。


 私は急いで教会から出る。どこに行こう?とりあえず町に・・・。いや、今は人間に会いたくない。町とは反対の方向に歩き出す。


 町の外の木陰に腰を下ろす。ゆっくり、息を整えると、少し落ち着いてきた。汗が風に吹かれて乾いていく、乾ききるころには、私の心も落ち着きを取り戻した。


 ふぅ。


 私のことを心配するように、緑の方が三匹ほど、こちらを覗いていた。


 ・・・私知ってるよ。あなたたちゴブリンっていうんでしょ。血走った目に、むき出しの歯は相変わらずで、とても友好的には見えない。


 3匹は一斉に叫び声をあげると、棍棒を振りかぶり、こちらに飛びかかってきた。しかし、私も馬鹿ではない、学んでいるのだ。


 どうせ立ち上がりながら、走り出すと転ぶので、ハイハイしながら逃げる。回復自分にかけながら、町まで逃げられれば大丈夫だって。めちゃくちゃ痛そうだけど。


 ゴブリンの一撃が、私に降り注ごうとした、まさにその時。二匹は炎に焼かれ、最後の一匹は、鈍器のようなもので吹っ飛ばされていった。


 「大丈夫か?」


 そういったのは、さっきの男の人。手には先端が膨らんだ鉄の棒を持っていた。助けてくれたんだ。


 男の人は私の足元に手紙を置くと、サッと下がる。


 「これ以上近づかないから、手紙を読んでくれ。」


 ・・・気を使ってくれてるのかな?手紙を開けてみる。


 《拝啓 初冬の候、ますますご活躍のこととお喜び申し上げます。

  この度は、エヴァ様に大変不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。

  私は、癒しの神を祭る、総本山で、審問官をしております、ヴァーンと申します。

  私は、周りからいつも、不愛想で、真面目な人間だという評価をいただいております。

  先の件に関しまして、私がエヴァ様を傷つけたいなどという、考えは一切ございません。

  審問官という立場もありまして、気になったことがあると、確かめずにはいられない性分なのです。》


 ・・・・・・長い!そして硬い!適当に読み飛ばそう。


 さっきはごめんね。悪気はないんだ許してね。あと、ここには決まりが守られているか確認しに来たから、あとで聖なる光見せてね。ってことだろう。手紙の中には鉛筆が入っていて、こう、〆られていた。


 《なお、返事に関しまして、同封させていただきました、鉛筆で書いていただけると幸いです。

  読み終わりましたら、私の方を向いていただきたい。

  場を和ませる、私の一発ギャグにて、エヴァ様の許しを請いたいと思います。

  敬具》


 ・・・・・・・一発ギャグ?この世界ではそういう謝り方がセオリーなの?


 ヴァーンさんの方を向くと、ひざを曲げ、手を頭の上に置き、耳のようにしていた。

 私が向いたのに気づくと、4回ほどウサギ飛びをして、こちらを向いてこう言った。


 「許してほしいピョン。」


 ・・・シュールだ。



―――――――――――――――――――――――


 返事を手紙に書くと、ヴァーンさんに渡す。今日のお昼ご飯と明日の朝ごはんを買いに行かないと。


 「教会に戻るのか?・・・そうか、私一人で教会に戻ると、タフティに蹴り殺されそうだ。ついて行っていいだろうか? あ、連れて行ってほしいピョン。」


 ピョンはもういい。


 クッティの無人販売所に行くと、ヴァーンさんは興味深々で、見ていた。


 「すごいな、これは。どうなってるんだ?」


 それは私に聞かれても困る。ヴァーンさんはサンドイッチを一つ買っていた。


 教会に戻ると、いつもの席に着く。


 「タフティはいないのか。」


 いつも夕方のお祈り前に来るからねぇ。サンドイッチを取り出し、お昼ご飯にする。・・・ヴァーンさんの視線が気になる。あ、そういえば、教会内は飲食禁止だっけ・・・?


 「あぁ、いや。一応大まかなルールはあるが、各教会のルールはそこの修道士が決めればいい。タフティがいいと言えば特に問題はない。守らなければならないのは、祈りの対象が聖なる光でなければならない点だけだ。」


 へぇ、案外ゆるいのね。遠慮なくもしゃもしゃ食べる。


 日が暮れ始めるころに、タフティが来た。


 「一応許してもらえたぞ。これが証拠だ。」

 「証拠?あぁ、確かに、このやたらうまいイラストはあんたじゃ描けなさそうねぇ。」


 ウサギのイラストを描いておいたのだ。結構うまくかけたんだよ?


 「てか《分かったピョン》って・・・。あんた本当に、あれやったの?」

 「君がやれと言ったんだろう!?」


 そうじゃないかとは思ったけど、タフティのさしがねらしい。


 夕方になると人が集まってくる。ヴァーンさんは猫を被ったタフティを、初めて見たらしく。


 「彼女はなにか悪い物でも食べたのか。」


 と言って、若干タフティに睨まれていた。でも気持ちは分かる。


 人が集まり終わると、お祈りが始まる。審問官が見学にいるが、タフティに緊張なんてものはない。私も聖なる光を出すだけなので、特に気にすることもなかった。聖なるルクーセおばちゃんが飛び立つ。


 ヴァーンさんは私の隣で、真面目にお祈りをしていた。ていうか暗唱だ。お祈りの言葉って結構長いんだけど・・・。


 お祈りが終わり、人々が去ると、教会には私たち3人だけになる。


 「ヴァーンさん?今日のお祈りはいかがでしたか?」

 「気味が悪いからやめてくれ。」

 「どういう意味よ。」


 見る限り、二人は結構仲が良さそうだ。


 「間違いなく、聖なる光だ。素晴らしい。一つの芸術作品を見ているかのようだったよ。」

 「分かったら。トナリノ町の教会は問題なし。って本部に報告してきなさい。」

 「あぁ、審問官ヴァーンの名において、修道士エヴァを天の使いと認め。それを広めよう。私も、またお祈りに来ていいだろうか?」


 え?天の使いになった覚えはないけど?


 「おうおう、ガンガン来なさい。どんどん広めなさい。ついでに教会の拡張してくれない?」

 「それは君のやることだろう・・・。」


 どうやら、天の使いとして広めるのは、確定らしい。


 面倒なことにならなければいいけど・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ