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この物語は「ヒーローアクションです」「ラブロマンスです!」  作者: Cさん
一章は「苦悩の物語」「恋の物語です!」
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クラスメイト・リユニオン

 休み明けの月曜日。

 二階へと移った教室に入ると、既にほとんどの同級生は揃っているようで、朝のHRまでの短い時間を皆好きなように費やしていた。

 俺は誰とも言葉を交わさず自分の席、米永(よねなが)姓のおかげで窓側後方二番目というなかなかの立地の席に腰を下ろした。そして鞄から取り出した教科書やペンケースなんかを机に放り込んでそのまま机に伏す。この動作も一年間続ければ流れるように行える。

 それから約五分後のチャイムと共に岡野先生が教室に入ってきた為、俺は顔を上げる。岡野先生は、一時限目に委員を決めること、その後は通常の授業があること等を端的に伝え、すぐに教室を出ていった。やはりあの人は高校生をよく理解している。

 俺が再度伏そうとすると、前の安田さんの席に、こちらを向くようにして誰かが座った。安田さんは話したことないし、さて、誰だろう。


「よお、また同じクラスだな。じゃあ一年間頼むぜ」

「何を頼むつもりだ」

「金と女」

「相変わらずのクズだな」


 安田さんの席を占領したのは、クズこと赤石(あかし)(はく)。一年生の時からの……こいつを友人と言うのにはかなり抵抗がある、でも一応数少ない友人の一人だ。異能の関係で髪が金色なのが、余計に不良っぽい。


「冗談だ。俺が欲しいのは金だけだっての」

「大差ないだろ。金曜は金をせびりに来ないからてっきり改心したものだと思っていたが、違ったみたいだな」

「おはよう二人とも。また一緒のクラスだね」


 にこやかに微笑みながらこちらへ歩いてくる可憐なセーラー服の少女、彼女は俺の数少ない友人(ツー)である朱目黒(あかめぐろ)(とも)だ。サラサラの黒髪に整った顔立ち、すらりとしながらも出るとこは出ているスタイルと、まあハチャメチャにモテる人間で、とても俺たちとつるむタイプには見えない。表面上は。


「相変わらず冴えてないね、こんな冴えない面構えの奴らとよく一年も付き合えたものだと私は私を褒めたいよ。また一年もお前らの顔を拝むとなると泣きそうになるけどね」

「智の毒舌も久しぶりに聞いたな」

「俺なんて春休み中ずっと聞かされてたぜ? こいつ俺は傷つかねーと思ってんだよ。金曜だって部活の手伝いさせられたしよ」


 智は毒舌家、で済ませていいのかは分からないが、俺らには異常に口が悪い。よくもまあそんな辛辣な言葉がスラスラ出てくるものだと感心しそうになる。しかし外面がいいばかりに人望は厚い。ズルいやつだよ。


「そうだ盾一、テメーには言わなきゃならねーことがある」

「そうそう、私も一つ文句があったよ」

「「LIME無視すんな」」

「えー」


 確かに春休み中、何度も三人だけのLIMEグループにメッセージが届いていた。だけど俺だってヒーローの仕事が忙しいんだから、仕方ないだろう?


「お前が週四でやってんの知ってるからこっちは毎日誘ってんのによ」

「全部既読無視とは……私を愚弄しているのかな?」

「通知貯まるのやだもん」

「やだもん、じゃねーんだよ」


 俺が二人から不当に責め立てられていると、突然スマホから「ポヨ」という音とバイブの音が鳴った。


「わるい、LIMEだ」

「おい」

「嘗められたものだね」


 こんな朝に誰からだろうと通知欄を見ると、そこには「さや」とあり、その横にタコの絵文字が見えた。まあ間違いなく早乙女さんだ。アイコンはタコの寿司だった。調理済みじゃないか。

 その通知を二回タップしてLIMEのアプリを開く。表示されたメッセージは


『おはようございまーす!』

『昨日は会えなくて残念です・・・』

『なので今日は昼休みにそちらへ向かいます!』

『入籍の準備をしてお待ちくださいねー!』


 と、朝からそんなテンションが出るかという程の明るさだった。しかも危惧していた事態がまさに起ころうとしている。ああ、憂鬱だ。


「俺たち以外からなんて珍しいな、誰からだったんだ?」

「後輩だよ。事務所の新しいヒーロー、それとここの一年」

「へー、男子かい?」

「女子」

「おーおーお前もリア充の仲間入りかよド畜生が。俺らみてーなひねくれ非リア共とはおさらばってわけかよ」

「私をお前と一緒にするなよ白」


 ギャーギャーと喧しい、そんなんじゃないっていうのに。俺もこの猛アピールには困っているんだ。

 そうだ、同じ女子として智から何か言ってもらえないだろうか。……いや、智を普通の女子に含めるのもいかがなものだろう。でも一応相談してみよう。そう思い、俺はLIMEの画面を二人に見せた


「おやおや、これはまた……」

「盾一、一発顔を殴らせてくれ。頼む」

「自慢じゃないし殴らせもしない。で、智、俺はどうすればいい?」

「はっはー、そうだねえ」


 ここで俺は気が付いた。智に相談したのは明らかな愚策であったことを。

 智が満面の笑みを浮かべている。それは悪巧みをしている時に見せる顔だ。こいつは俺たちが困っている顔を見るのが大好きな、悪魔なのだ。絶対に事態がややこしくなる、そう確信している俺がいた。


「……まあドンマイだ盾一」

「白……これが君たちを無視した罰だというのなら、俺はなんて愚かなことをしたのだろう……」


 授業の開始を告げるチャイムが、俺には地獄へのカウントダウンに聞こえた。

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