第3話 中原町商店街
「今は少しここでゆっくりしていなさいな。 また夜になったら来ますね」
そう言って祖母は平屋から出ていき、母屋に戻っていった。 祖母が母屋に入るのを見た出雲はスポーツバックから荷物を出し始めた。
スポーツバックから私服や下着、生活用品を一つずつ出していく。 そして、それを二階にある部屋のタンスに入れた。 歯ブラシはなどは洗面台に置いて、すぐ使えるようにした。
「ここで生活するうえで他に必要なものは何かな……」
出雲は何が必要か考えた時に、商店街に行って考えてみようと決めた。 出雲は身支度を整えて家を後にして、祖母に出かけてくると伝えた。
「商店街はここから駅のほうに行って、そこから左に行くとあるのか……」
祖母から教わった道を思い返して歩いていく。 道を歩いると、近くの高校の生徒と思える学生が帰宅中であった。 先ほどすれ違った男女のグループもいるようで、何か用事があって校外にいたようである。
出雲は楽しい学生生活を送れるようにしていこうと、学生達を見て思うことにした。 そして、商店街につくと、出雲が駅に着いたときに見た商店街であり、シャッターが尚も降りている店が多かった。
「平日のこの四時くらいなのにシャッターばかりだなぁ……」
出雲は商店街をキョロキョロとしながら歩いていると、商店街の入り口近くにあったリサイクルショップのオーナーらしき初老の男性が話しかけてきた。
「もしかして薫子さんのお孫さんかい?」
出雲の祖母の名前は天羽薫子と言い、出雲は現在母方の姓になっている。 また、祖母が孫がこっちで暮らすことになると言いふらしていたこともあり、商店街人や近所の人に知られていたのである。
「あ、孫の出雲です。 よろしくお願いします」
そう言い握手をすると、何か欲しいのあったらあげるよと言われた。
「そ、そんなタダなんて悪いです! ちゃんとお金払います!」
出雲のその言葉にオーナーは、老人の言葉は素直に受け取っておくものだよと言う。
「あ、ありがとうございます……なら、あの机ください!」
出雲がまさか机を要求するとは思わなかったので、面食らったような顔をしていた。
「お、あれを選ぶか! 結構いい眼してるな! ついこの間仕入れたばっかの新品みたいなものだぜ!」
そう言って机のそばに近寄ったオーナーは、売却済みのシールを貼った。
その後に出雲はオーナーに感謝を述べて、その場を後にした。 そのまま商店街を歩き続けていると、古い古書店を見つけた。
外見は少し寂れた感じであるが、趣があって出雲の目は輝いていた。 そのまま中に入ると、手作りの棚に入っている本や床に積まれている本など奥行ある店内に多数の本が敷き詰められていた。
「ん? この本は地域の伝承が書かれている本?」
日本の伝承と書かれている一冊の本が気になって出雲はその本を手に取った。 その本を手に取った瞬間頭部に激痛が走った。 出雲は本を手に取ったままその場に蹲ってしまうが、すぐに痛みは引いたので疲れから来た痛みなのかと思った。
「何だったんだ……あ、この本買うか……」
伝承が書かれている本を出雲はカウンターに持っていく。 すると、カウンターには若い男性が座っていた。
「お、君は天羽さんの家に住むことになった人かな?」
古書店の若い男性も出雲のことを知っていた。 若い男性は出雲がカウンターに置いた本を見て不思議な顔をしていた。
「こんな本うちにあったかな? 仕入れた覚えないけどな……」
そう言っていると、出雲はこれ買えますかと聞いてみることにした。 すると、若い男性店員はそれプレゼントするよと言ってくれた。