第九話 遣独潜水艦
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昭和十七年(1942年)六月中旬、木梨が新たに指揮を執る事となった伊34は慌ただしく佐世保を出航した。目的地はマレー半島のペナンである。現在、艦はようやく佐世保湾の入口を抜け南西に向けて水上航行中であった。
出航前に木梨が乗組員に行った説明によると、伊34はペナンで補給を受けたのち速やかに第八潜水戦隊へ合流する様に命じられていた。しかしそれは奇妙な命令であった。
四月のマダガスカル沖海戦後、第五潜水戦隊はマダガスカルのディエゴ・スアレスを根拠地とし引き続きアフリカ東岸の通商破壊戦を展開している。一方、第八潜水戦隊は当初ペナンを拠点にインド洋の通商破壊を行っていたが現在ではトラックへ進出し米豪間の通商破壊任務に就いている。つまり第八潜水戦隊に合流するならば向かう先はトラックであるべきであった。そもそも伊34が戦隊を組むなら同型艦の居る第一潜水戦隊の方がふさわしかった。
更に急な命令でもあった。木梨のインドミタブル撃沈後に潜水艦の重要度が急上昇した結果、潜水艦の工事の優先度が上がり就役も軒並み繰り上がっている。伊34も本来であれば八月末の就役予定であったが三か月近くも繰り上がっていた。それ自体は木梨らにとって良い話であったが、彼らの着任から二週間も経っていないにも関わらず今回の命令が出されていた。当然、慣熟訓練どころか物の在処すら覚束ない状態である。司令部もそれを承知しているはずであったが、それでも速やかに現地へ向かうようにと厳命されていた。訓練は道すがらやれと言う事らしい。何から何まで奇妙な命令であった。
「いやー艦を早く仕上げてくれたのは良いんですが慣熟訓練も無しに前線送りとはあんまりですな。高後崎を抜けるまでヒヤヒヤものでしたよ。まぁ瀬戸の渦潮を越えて大村湾で訓練しろって言われるよりはマシでしたがね」
「いくらなんでも、あんな浅い湾じゃ潜水艦の訓練なんか出来やしないよ。でも先任の言う通りこの練度は早く何とかしないと確かに不味いね。無理言って先任らに来てもらったお蔭で浮上中なら何とかそれっぽく動かせてはいるけど今は潜航ひとつするのも命がけだからね。実戦なんてとんでもない。これは相当気合を入れて訓練しないと。計画の方はどうなってる?」
「艦長のご指示どおり訓練計画は出来ております。かなり無茶をさせる事になりますが死ぬよりゃマシでしょう」
「訓練で死ななきゃそれでいいよ。新兵達には悪いけど今回は急ぎだからね。死んだ方がマシって思うくらいの訓練でも丁度良いくらいさ。訓練内容は後で詳しく聞こうか」
木梨がゴリ押しで伊162の士官を引っ張って来ていたお蔭で浮上中ならばなんとか普通に航行させる事は出来ている。だが、とてもでないが戦闘に投入できる状態では無かった。浮上航行ですら変針後にフラフラして中々針路が定まらない。練度の良い潜水艦なら1分以内で出来るのが当たり前の急速潜航が5分以上もかかるうえ、潜航してからもツリムをなかなか取る事が出来ない。浮上の際も毎回海面に飛び出しそうになるのは当たり前で一度は倒立に近くなりそのまま沈没しかけた事すらあった。
その上、木梨の進言を受けた艦政本部が急ぎで改造してくれたお陰で色々と面倒も増えていた。
「しかし出航前の改造で士官室が残って良かったですよ。そりゃまぁ襲撃戦術が変わって艦首の6発だけじゃ心許ないってのは分かるんですが、何も兵員室を潰さなくてもねぇ」
「その分再装填が随分と楽になったじゃないか。それに兵員室が無くなった訳じゃない。魚雷が上に有るか下に有るかの違いしかないだろう?」
「あんな重たいもんがいつも体の上にあるってのは、あまり気持ちのいいもんじゃ有りませんぜ。時化の時なんかヒヤヒヤして寝るどころじゃない。頭じゃ大丈夫だって分かっちゃいるんですがね」
襲撃戦術の大幅な見直しにより戦闘中であっても魚雷再装填の必要性が認識されていた。それに対する艦政本部の出した答えは非常にシンプルな物であった。魚雷発射管の真後ろに棚を設け、そこへ次発の魚雷を置くことにしたのである。
従来の再装填作業は通路脇や床下にある魚雷をチェーンブロックで吊り上げ、フラフラ揺れる魚雷を手で押さえながら発射管へ挿入するというものであった。とてもでないが戦闘中には危険すぎて行う事など出来ない。だが今回の改造により棚の上に置かれている魚雷を前に押し出すだけで発射管に挿入できる様になった。押し出しと挿入は残念ながら人力であるが棚にはローラーが付いており比較的軽い力で魚雷を押せる様になっている。このため戦闘中でも十分再装填作業が可能となった。
もちろん良い事ばかりでは無い。従来は発射管室の後ろには前部兵員室が有り、その床下に魚雷庫が設けられていた。その兵員室が今回の改造で犠牲となっていたのである。棚に魚雷を置いた分、床下の魚雷庫が小さくなったため寝台は再装填棚の下へ移動した訳だが、それでも足りず寝台は魚雷棚の隙間にも設置された。従ってこの兵員室で寝る者は常に脇か頭上に魚雷が置いてある事になる。もちろん荒天でも魚雷が転がり落ちたりしない様しっかり棚に固縛されてはいるものの、あまり気持ちの良い物ではない。
また再装填棚を設置した分、艦前部の重量が増加したため魚雷の搭載本数が1本減って16本となっている。これについては敵1艦あたりの魚雷使用本数が大幅に減ったため、艦政本部も現場もあまり問題視していなかった。改造自体は非常に簡単なため、同様の改造が整備入渠した潜水艦から順次行われている。これから建造される新造艦は最初から再装填を考慮した艦内配置で設計される予定であった。
九九式魚雷自体も改良されている。実戦での交戦距離の多くが3000m未満である事から噴進装置の長さが短縮され、その分炸薬量が600㎏から750㎏(九七式爆薬:TNT換算900kg)に増大された改二型が開発されていた。驚くべき事にこれは水上艦用の九三式酸素魚雷よりも多い値である。参考までに米軍のMK14魚雷の炸薬量は292㎏(トーペックス:TNT換算467kg)と破壊力は半分に過ぎない。九九式魚雷は正に一撃必殺の魚雷に進化していた。
「それより訓練の方だけどね。急速潜航時間はペナンに着くまでにせめて2分は切る様にしてくれよ。いくら九九式が敵艦に有効でも航空機には手も足もでない。今みたいに潜航に5分もかかっていちゃ確実に沈められるよ。僕はまだ英霊になりたくないからね。必要だったら僕を悪者にしてくれていい」
「艦長にご迷惑はお掛けしませんよ。士官連中で何とかしてみせます。ご存じでしょうが前に居た艦は古い分いわば学校みたいなモンでしたからね、新兵の扱いには慣れております。それに現地に着いたら陸にあがれて羽を伸ばせるから少しの辛抱だと言い含めます。噂じゃ五戦隊は随分と良い思いしてるらしいですからねぇ」
「先任は何を言ってるんだ?五戦隊が居るのはマダガスカルだ。本艦の任地はトラックの八戦隊だよ」
そう否定した木梨だったが顔には惚けた笑顔が浮かんでいる。
先任が勘ぐる通り伊34の本当の目的地はドイツであった。実は木梨は出港の3日前に密かに軍令部に呼ばれ作戦の説明とドイツまでの航路や連絡手段等の打ち合わせを行っていたのである。この命令はペナンを出るまで口外無用と厳命されており木梨も乗組員には説明していない。だが佐世保を出航する前にアフリカから欧州にかけての海図やら封のされた荷物やらが慌ただしく艦に積み込まれた事や、急な出航命令と相まって、乗員の誰もが今回の航海はドイツへの極秘任務だと噂していた。それを木梨も明確に否定していなかった。そしてドイツが最終目的地であればマダガスカルで必ず補給が行われるはずであった。
「実は小官も楽しみでしてねぇ。マダガスカルじゃ四月の戦いで日本人は命の恩人だってんでモテモテだそうじゃないですか。陸にあがれるだけで贅沢だってのに、そのうえ待遇が良いとくれば天国じゃないですか。いやぁ実に楽しみですな」
日本軍は今年四月に全くの偶然からではあるが英軍のマダガスカル侵攻作戦を頓挫させていた。しかも目の前で英艦隊を壊滅に追い込んだ日本軍は、今やマダガスカルでは英雄扱いであった。危機一髪の瀬戸際で命を救われた形となったアーモン・レオン・アネ総督はヴィシー・フランス本国へ彼の感動によって数倍に脚色された報告書を送っており、ヴィシー・フランス政府の対日感情も非常に良くなっている。またジェームズ・サマヴィルをマダガスカルで葬った事もメルス・エル・ケビールの仇を日本が討ってくれたとして、ヴィシー・フランスだけでなく自由フランスの市民にも非常に好意的に受け止められていた。
このためヴィシー・フランス政府と日本政府の間ですぐに協定が結ばれ、マダガスカルで日本軍の艦船が寄港と補給を受けられるようになっていた。もちろん燃料弾薬の補給までは無理であるが、水や生鮮食料の補給と乗員の上陸休息、艦船の簡単な整備が出来るだけでも大違いである。こうして現在では第五潜水戦隊がディエゴ・スアレスを基点に積極的に活動する様になっていた。既にキリンディニとダーバンが南雲艦隊によって徹底的に破壊されていた事もあり、連合軍の喜望峰回りの通商路は完全に途絶状態となっている。
伊34は訓練を重ねながら10日間かけてペナンに到着した。乗組員が本当に血反吐を吐くほどの訓練を重ねた結果、今では何とか急速潜航も様になってきていた。まだ2分をやっと切れるくらいの時間ではあるものの最初の頃に比べれば雲泥の差である。
ペナンでは更に封印された荷物が積み込まれてきた。どうやらゴムや錫等の物資らしい。ペナンを出港した後でようやく木梨は本当の目的地を乗組員に明かした。先任ら士官からマダガスカルの事を色々と聞いていた乗組員達はそれを聞いて歓声をあげた。先任の奴はどれだけマダガスカルを天国だと連中に吹き込んだんだ?皆、遣独の使命よりそっちが大事なのか?普段は飄々としている木梨も流石に頬を引き攣らせた。
そして士気の異常に上がった伊34は訓練を重ねつつ航海を続け、ペナンを出て二週間後にマダガスカルのディエゴ・スアレス港に到着した。理由はともあれ今では艦の練度も十分満足できる水準になっている事が救いだった。
港内にはヴィシー・フランス軍の艦艇に交じって特設潜水母艦りおでじゃねいろ丸と、もう一隻の潜水艦が停泊していた。
先任らに補給と乗組員の半舷上陸を指示すると木梨はまず司令部へ到着の報告に赴いた。ヴィシー・フランス政府と正式に協定が結ばれた結果、現在ではディエゴ・スアレスに第三特別根拠地隊の支部を兼ねた第五潜水戦隊の司令部が設けられている。司令部は港に面した建物に居を構えていた。元は小さなホテルであったらしい。小ぶりながら洒落た建物だった。
「聞いていると思うが、これから君の伊34はドイツに向かってもらう。目的地はフランス西岸のロリアンだ。それと行くのは君の艦単独ではない。陸さんの分もあって随分と荷物が増えてね、伊30と一緒に2隻で行ってもらう事になった。2隻で臨時に戦隊を編成するから指揮は君が執ってくれ。それと物資だけでなく人も運んでもらう。ドイツからUボートを貰う話になってな。そのための航海要員も物資と一緒に今回連れて行ってもらうから、よろしく頼む。詳細は後で打ち合わせしてくれ」
木梨が到着の報告を済ませると、戦隊司令が今回の遣独作戦の全容を説明してくれた。木梨は日本で自艦の事しか聞いておらず2隻で向かうという話は初耳であった。どうやら港に居た潜水艦が今回同行する伊30だったらしい。なぜ海大型ばかりの第五戦隊に巡潜乙型がと思っていたが、ようやく木梨も合点がいった。
「いい所だろう、マダガスカルは」
一通り作戦の説明が終わると、戦隊司令が話題を変えた。
「確かに現地とは上手くやれている様ですね。艦から司令部へ来る短い間でも街の住民が我々に非常に好意的な事を感じました」
戦隊司令が頷いた。横に同席している根拠地隊の司令も頷いている。木梨も現地部隊がマダガスカルで受け入れられている事はすぐに気付いた。街を歩くと誰もがにこやかに手を振ってくれる。住民らと仲良く談笑している非番の兵士の姿もあちこちで見られた。ペナンを出た後に艦内で配られた仏語会話帳を片手に早速町娘に声をかけている伊34の乗組員を見た様な気もしたが、それは忘れる事にした。
「元々、英軍に攻められて危機一髪だった所を救った形になったからな。面映ゆい話だが最初は英雄の様な扱いだったよ。それで英軍の攻撃で壊された港や街を放っておけなくてね。根拠地隊と一緒に後片付けやら修理やらを手伝っていたら総督だけでなく住民達にも随分と気に入られた。司令部も最初は海岸に自分らで建てた小屋に居たんだが、総督府が気を利かせてこのホテルを渡してくれた。ここに来てまだ間が無いんだが、もう第二の故郷みたいな感じだ」
戦隊司令も根拠地隊司令も随分とマダガスカルを気に入っている様だった。それは兵士達も同じらしい。現地人と恋仲になって「この戦争が終わったら結婚してここに住むんだ」と言う者まで居るとの事だった。
「そうそう、この後は総督府へ行ってくれ。アネ総督から夕食に招かれている。君の活躍を聞いた総督がぜひ直接話を聞きたいとおっしゃってな。総督は気さくな方だから気張らなくてもよい。だが我々は彼らと非常に良い関係を築けている。陛下に拝謁した君に万が一も無いだろうが粗相の無い様に注意してくれたまえ」
正式に招待を受けているのでは否応が無かった。木梨は司令部の一室を借りてしっかり身を清めると真新しい第一種軍装に着替えて総督府へ赴いた。
総督府では本当に大歓迎を受けた。すでに天皇陛下に拝謁した経験の有る木梨であったので、アーモン・レオン・アネ総督との会食では思ったより緊張しなかったものの、大きな身振り手振りで英軍に侵攻された時の様子を興奮気味に話されるのには若干閉口した。
更に木梨が英軍の空母部隊を単独で沈め天皇陛下にも拝謁した話でアネ総督は更に興奮し、根掘り葉掘り聞かれる羽目になった。木梨は総督に余計な事を話したどこかの誰かを心の中で恨みつつ軍機に触れない当たり障りのない範囲で総督が満足するまでひとしきり会話を続けた。
疲れ果てた木梨が艦に戻ると伊30の遠藤艦長が木梨を待っていた。彼は海軍兵学校では木梨の一期下の後輩であった。
「お久しぶりです木梨中佐。お疲れ様でした。総督は楽しい方だったでしょう?」
「こちらこそ久しぶりだね遠藤中佐。少なくとも我々に悪意は持っていないと言う事は確認できたよ」
「ちょっと感情が豊かですが良い人ですよ、総督は。我々もいつも便宜を図ってもらって感謝しています。それにマダガスカルの人達にも随分と世話になりました」
「そうだろうね。マダガスカルの噂は色々と聞いているよ。うちの先任なんか、ここが天国だって乗組員に吹聴するものだから来る途中で皆浮かれてしまって困ったよ。それでどういった用件だい?打ち合わせは明日のはずだ。世間話をしに来艦したわけじゃないだろう?」
「やはり分かっておりましたか……その通りです。本日は謝罪に参りました。今回は私の不手際で木梨中佐にまでご迷惑をお掛けしました。申し訳ありません」
そう言うと遠藤は深々と頭を下げた。そして木梨の伊34が今回慌ただしく遣独潜水艦に選ばれた事の顛末を説明した。
遠藤の話によると、元々遣独潜水艦として選ばれていたのは遠藤の伊30であったという。彼はマダガスカル海戦の前から密命を受けており、作戦終了後に単艦でドイツに向かう手筈になっていた。だが年中荒れ狂っている喜望峰沖の暴風域で艦が故障し、1週間ほど漂流した挙句に命からがらマダガスカルに戻ってきたのだと言う。艦は主機や潜舵、司令塔にも損傷を受けており、現地ヴィシー・フランス軍の協力も得て先日ようやく修理が成った所とのことだった。
その伊30の遭難を受け、軍令部はすぐにトラックに居た伊33を代わりに送り出していた。だがこの艦も再び南アフリカ沖で艦に異常が発生したという通信を最後に消息を絶ってしまった。周辺に脅威となる英軍は存在しておらず暴風域でもないため、何らかの事故が発生したものと判断されている。既に消息を絶って半月が経過している事から伊33の生存は絶望視されていた。こうして3度目の正直と言う事で木梨の伊34が遣独潜水艦として選ばれたのだった。事の概略は木梨も戦隊司令から聞いてはいたものの遠藤はどうしても直接謝罪をしたかったらしい。
「喜望峰沖の酷さは聞いている。艦が遭難したのは君の責任じゃない。伊33も不幸が重なっただけだ。気に病むことはない。そもそも僕は今回の件を迷惑だなんて思っちゃいないよ。それより君は艦長だ。余所の艦とはいえ兵隊の前で簡単に頭をさげるな。今回は厳しい航海になると思う。宜しく頼む」
艦長は能力も必要であるが権威も必要である。頭を下げている所を兵隊に見られたら舐められる恐れがあった。事情を知っていたらしい先任が気を利かせてくれたお蔭で発令所からは人払いされている。出来る先任を持つと艦長は楽が出来ていい。木梨はそう思った。遠藤は再び頭を下げると自分の艦へ戻っていった。
翌日、司令部で改めて航路上の注意やドイツ側との連絡手段、積荷の分担等が話し合われた。
ドイツからの情報によると喜望峰から西は相変わらず連合国の警戒が厳しいとのことであった。特に海岸から200海里までが哨戒範囲らしいためロリアンまでは出来るだけ陸地から離れた航路をとる様に指示されている。軍令部からは安全と機密保持のため自衛を除く攻撃も出来るだけ控える様にとの指示もあった。また喜望峰から先はドイツと直接連絡を取る事となるが、これには本作戦のために用意された専用の暗号を用いる。目的地の近くで先方の護衛部隊と会合する予定だが、その地点や日時もこの暗号で連絡される事となる。
積荷については伊34が物資を、伊30が人員を運ぶ事となった。伊34は日本やペナンで荷物が積み込まれており既に満杯の状態である。一方伊30は代わりに出航した伊33がマダガスカルに寄港した際に積荷を全て渡してしまっており空荷であった。このためUボート回航要員60名は伊30へ乗り込む事となった。問題は伊30も日本から持ち込まれた資材で既に再装填棚が設置されていたため前部兵員室が狭くなっていた事である。このため潜水艦では当たり前である乗員全員分の寝台を用意出来ない。可哀そうではあるが現地到着までは寝台を共用して凌いでもらうしかなかった。
マダガスカルのディエゴ・スアレスからフランスのロリアンまでは約15,000㎞もの距離がある。乗員の休養と荷物の積み込みを終えた伊34は、7月初頭にディエゴ・スアレスを発ち伊30と共に1か月以上にも及ぶ長い航海の途についたのだった。
長くなってしまったので、一旦ここで切る事にしました。遣独潜水艦の話なのにドイツに辿り着けていません。すいません。
九九式魚雷は更に進化して火薬の塊になりました。もう水上艦用の九三式酸素魚雷の立場がありません。この炸薬量でトーペックスだったら大変な事になりそうです。日本の火薬は性能もイマイチですが生産量がトホホなのでドイツから火薬製造技術をもらわないと陸海軍の各方面から文句が出る可能性があります。再装填装置はUボートXXI型を参考にしました。といっても棚があるだけですが。
伊33の遭難地点は南緯33度・東経33度の地点です。史実の座礁事故が発生しない代わりに遣独潜水艦に選ばれています。伊33は「3」にまつわる呪われた艦として有名です。気になる方はネットで検索してみてください【グロ注意・オカルト注意】
ドイツ到着編は閑話を挟んだ後になる予定です。いましばらくお待ちください。