異世界転生の前奏曲
初めての投稿ですので駄文、間違いなどはご容赦ください。音楽を題材にした異世界転生譚をお楽しみください。
自分で言うのもなんだが私は名のある音楽家だった。
なぜ過去形なのかというと、もうすぐ老衰でこの世を去ろうとしている為だ。
今は私の話を聞いてほしい。人生の締めくくる最後のひと時を、共に過ごしてほしい。
とは言っても話す事が多すぎてまとまらんな。
そうだな・・・私の生い立ちを話そうか。
私が生まれた家は全くと言っていいほど音楽に縁もゆかりもなかった。父は不動産屋で母は料理人。
そんな家庭から私が音楽を始めるきっかけになったものは、近所に流れるピアノの音だった。
私が8歳の頃、近所からふと美しい音色が流れてくるのを耳にした。なんの好奇心だったか、私は家を飛び出して音の源を探したんだ。
たどり着いたのが一軒の家。つい先日まで空き家だったので最近越してきたのだろう。しかし外から見てもこの美しい音がなんなのかわからなかった。
その日から私はその家の前に通うようになった。端から見たら変な子供だっただろう。私はそんな目も気にならないほど夢中になった。
ある日いつものように家のそばで耳をすませていると、家の中から声をかけられた。私はその場で叱られる覚悟をした。すると優しい声で「興味があるんでしょう?中で聞いていかない?」と言われた。
私は驚きながらもその言葉に従った。リビングへと通されると、可憐な少女が黒い机の前に座り手を動かしている。その指の動きに導かれるように流れる音楽に、私は心を打たれた。そしてその音楽を奏でている少女の美しさに目を奪われた。
これが私の音楽と後の妻との出会いだった。
第一話は主人公となる人物の生い立ちをご覧いただきました。まだ前半ですので後半に続きます。
長いプロローグと思ってください。ではまた次回お会いしましょう。