第四の予言
ついに、予言の時刻まで二分となった。一度予言を外しているため、多少の不安があった。しかし、今まで地震の予言は二つだけだが、すべて当てている。そして神様は私の味方だ。この予言は当たる。当たるはずである。と自分に言い聞かせた。
どうにも落ち着かず、私はカーテンをシャーッと閉め、シャーッと開けるという行為を繰りかえした。カーテンで遊びながら、私は時計の秒針をずっと見ている。もうすぐ、九時二分になる。私にとっても、日本人にとっても運命の時刻である。
カチッと音を立てて、長針が二分の位置を指した。しかし、何も起こらない。しかし、二度目の予言の時は五十二秒経った後で地震が発生した。今回もそうなるのではないかと期待し、秒針を見続けた。
しかし、何も起こらないまま、秒針が一周してしまった。「予言者」は、また予言を外してしまったのだ。
私は頭を抱えた。そこで初めて気づいた。あの二度目の予言が当たったのはただの偶然だったのだ。「大きな地震」と言ってしまったため、言い逃れをすることは出来ない。そして、二度連続で予言を外しては、きっともう「予言者」の言うことは信じてくれないだろう。
私は「予言者」としてツイッターを開く。当然、そこには私を非難する書き込みしか見られなかった。「死ね」やら、「犯罪者」やら、私を叩く発言だらけであった。今まで予言を当ててきただけ、反響が大きいのだろう。すっかり心が疲れてしまった。
もはや掲示板を開く気にすらなれなかった。涙は出なかったが、確実に心は傷を負っていた。予言を外したのは私ではなく、「予言者」なのだと自分に誤魔化すことも出来ない。
その日はもう何もせず、放心してした。あれから、パソコン、スマートフォンの電源は入れていない。メールやLINEも放置している状態だ。昼食、夕食は食べずに眠った。それでも空腹感は感じなかった。
次の日の朝、少し心が落ち着きもう一度ツイッターを開いた。昨日よりさらに「予言者」を責める書き込みが増えていた。その中に擁護する書き込みはないかと探していたが、見当たらなかった。それから、掲示板を開くが、そこにも「予言者」を擁護する書き込みは無かった。そこには想像を絶するほどの罵詈雑言が並んでおり、心が傷つくような書き込みだらけだった。
傷心のまま、私は服を着替えた。彼女をサプライズで迎えに行くのだ。到着の時間は今までの彼女の発言からだいたい推測出来た。どうだ。これが一流大学卒の力だ。この傷ついた心を彼女に会うことで少しでも癒やしたいのだ。
道に散乱していた窓ガラスの破片はいつの間にか片付けられていた。私はすっかり綺麗になった道を最寄り駅に向かって歩く。時間に余裕を持って出発したため、いつもより歩くペースはゆっくりにできる。
電車は通常のダイヤで動いていた。午後一時に最寄り駅に着いた水色の車体の各駅停車で彼女の最寄り駅に向かう。ここから四駅である。車内は空いていた。