第三の予言
私はフィルムを貼った閉じた窓に寄りかかり、そのまま運命の時刻を待った。しかし、全く雨が降りそうにない。私は徐々に焦っていった。
結局雨は降らなかった。「予言者」は初めて予言を外してしまった。怖くてツイッターや掲示板を開くことが出来なかった。なぜ神はこの願いを叶えなかったのだろうか。
天気は変えることの出来ない事情があるのではないか。一時間ほどの時間を掛けてそう考えた私は、次の予言をするためにツイッターを開いた。画面上には「予言者」を非難する内容が見受けられた。
『少しミスがあり、このような結果となってしまったが、次の予言は確実である』
私は「予言者」として神様を信じて、「確実である」と書き込んだ。それからネットユーザーの反応を見るため、次の書き込みまで間を空けた。当然非難の書き込みもあったが、まだ多くのネットユーザーは二度予言を当てている私を信じているようだ。
私が少し安心した時、街に明かりが灯った。どうやら停電が復旧したらしい。ブレーカーを入れ、部屋の電気が点くことを確認し、パソコンを立ち上げた。そして、そのパソコンから「予言者」として書き込む。
『本日の午前九時二分、また大きな地震が起きる』
神様が地震を発生させることが出来るのを私は過去の予言から知っている。きっと、世間の人も地震の予言なら当たるだろうと考えてくれるはずだ。午前九時二分まであと二時間十分。私の体はこわばっている。
スマートフォンが光った。どうやら数多くの路線が運行を再開するらしい。しかし、私の言った通りに地震が起こればまたすぐに止まってしまうだろう。
今日の朝食は焼いたパンである。地震はとても大きなものだったが、私が普段通りの生活を取り戻すまでにあまり時間はかからなかった。また、地震の規模の割に被害が少なかった様に感じる。きっと私のおかげだろう。そして次の予言もきっと当たり、誰かの命を救うことになるのだ。
彼女は電車が復旧したということで明日帰ってくるらしい。もし、電車が動き、予定通りに帰ってこれるのであれば、私はサプライズで駅まで迎えに行くつもりだ。彼女を抱きしめたい。顔に似合わず二枚目なことを言ってみた。実際彼女の前に立ったらこのようなことは言えないだろう。
「予言者」として予言を外してから初めて掲示板を開いた。掲示板はやはり悪口や「予言者」を叩く書き込みで溢れかえっているのだろうと想像していた。しかし、実際はそれほどではなく、むしろ次の地震の予言の心配をしているようだった。そこに「予言者」として書き込んだ。
『地震に対してしっかり備えなさい。どこで起きるかは残念ながら予言できません』
雨の予言を外したことに言及してしまえば、一気に叩かれてしまう恐れがあるのでその話題には触れないようにした。一気に三十ほどレスがつく。あえてそれを無視してブラウザを閉じた。
予言の時刻まで残り一時間である。