彼女の行方
私は彼女の安否がとても気になり、まだ余震もある中ではあるが彼女の家に行くことにした。道には窓ガラスなどが散乱していた。あれほど私が注意喚起をしたのにも関わらずである。きっと電車は止まっているし、この状況では自転車に乗ることは不可能だろう。車も持っていない。残された手段は徒歩しか無い。ここから彼女の家まで徒歩で約五十分。自転車で何度も行ったことあるので、道はわかる。私は彼女の家の方向へ、一歩を踏み出した。
五月にしては冷たい風が私を刺す。もしかしたら、彼女は私の一度目の死の時と同じ状況にいるかもしれない。焦りが私の歩くペースを速めた。
強い余震が起きた。電柱が大きく左右に揺れている。少し怯えたものの、私は足を止めなかった。彼女のために私は歩いている。この物語の主人公は予言者であり私なのだ。
歩き始めて十分ほど経ってから、足の疲れを誤魔化すために後ろポケットからイヤホンとラジオを取り出し、イヤホンをラジオに挿した。そして、イヤホンでラジオを聴きながら歩く。NHKのラジオによると、今のところ、死者はいないらしい。十二人の命を私が救ったのだ。しかし、けが人が四人いるらしい。
歩いている間、ラジオはずっと地震の情報を伝えていた。何度も何度も同じことを報じ続けた。
同じ情報を伝え続けるラジオに聞き飽きたころ、もう彼女の住む街についていた。まず、目に入る避難所に入る。そこで彼女の姿を探すが、そこには居なかった。
それからもまた歩き続け、避難所を見つける度にそこに入った。しかし、どの避難所にも彼女の姿はない。私の鼓動は段々と速くなっていった。
そして、彼女の住むアパートの前に辿りついた。建物にヒビが入っている訳ではないし、彼女の部屋の窓ガラスは割れていいようだった。しかし、隣の部屋の窓ガラスは粉々になっている。
私は階段で彼女の部屋がある三階に向かった。
彼女の部屋のドアを開けようとしたが、開かない。鍵が閉まっている。インターホンを連打したが、反応はない。まさか本当に彼女の命が危険に晒されているのではないかと不安になった。
しかし、それからすぐに私は安心した。なぜなら彼女が旅行していることを思い出したからだ。この前電話した時、当たり障りない会話のためにそのような話をしたことを思い出した。今まですっかり忘れていた。そのまま私はその場に座り込んだ。その時、今までの疲れが私を襲った。スマートフォンが右前のポケットで震えた。彼女からのLINEである。
『ごめん、充電切れてた!!私は大丈夫よ!なんてったって震源地からかなり遠く離れた広島県にいるもんね笑笑地震の影響で広島に入れる時間が長引くかもね^o^』
「無駄に心配かけさせやがって……」
小さく笑った私の目からは涙がこぼれていた。泣いたのは三年ぶりくらいだろうか。
これで私の友人、同僚、彼女、両親の全員の安否を確認する事ができた。私は本当に幸せ者である。
帰り路の歩くペースはとても遅いものであった。普段なら約五十分のところを、一時間四十分もかけてしまった。
家につくと体は無意識に布団へ向かい、気がつけば眠りについていた。
目を覚ました時刻は午後七時五分。二度目の予言の時刻まで既に十分を切っていた。充電が残り34%になったスマートフォンで掲示板を開く。一度予言を当てているのでほとんどの人が「予言者」の予言を信じていた。具体的に何が起こるのかを書いていないため、それを想像して不安がっている様子であった。