第二の予言
私はスマートフォンを手にした。ネット上は私を賞賛する声で溢れかえっている。掲示板に「予言者」として書き込む。すると非常に多くの反応がある。私は微笑みながら二度頷いた。
その反応の内容のほとんどは私を褒め称えるものであるが、次の予言を期待するようなものもあった。しかし、私が予言できることはもう無い。しかし、このまま予言をせずにいると、世間から私の存在は忘れ去られてしまうかもしれない。私にとってそれはとても困る。
しかし、適当な予言を沢山して外し、世間から信用を失ってしまうのも困る。忘れ去られてしまうよりもそちらのほうが大変だ。私は、次の予言を期待する声がもっと増えてから、一つだけ予言をしようと考えた。内容は曖昧にして、いくらでも誤魔化せるようにするつもりだ。
揺れた。余震だろう。電気が通じていない中、私の今の情報源はバッテリーが残り76%のパソコン、残り83%のスマートフォン(これに関しては手回し発電機を使って充電をすることが出来るが)、そして、ラジオである。
パソコンは今のところ充電をすることが出来ないので大事に使いたい。私は、スマートフォンで「予言者」として活動することにした。しかし、大きな地震が発生し、安否確認などに携帯電話を使う人が多いのだろう。なかなか回線が混んでいるため、ツイッターや掲示板を開くのにもなかなか時間がかかる。イライラしてつい自分の膝を平手で叩いた。
地震発生から七時間後、水道が復旧した。案外時間がかからないものだなと思った。このままいけばすぐに電気やガスも復旧するだろう。
朝食には来年一月が賞味期限の乾パンを選んだ。甘みも感じられないし、なかなか美味しいものではない。チョコレートやつぶあんでもあれば、きっと美味しくいただけたのだろう。一緒に入っている氷砂糖の甘さに私は少し救われた。
スマートフォンの電源を入れた。私は「予言者」としての活動に熱を注ぎすぎ、今まで彼女に安否の確認をするのを忘れていた。最低な彼氏だ。
『無事?私は大丈夫です』
まだ既読のついていない午後九時の私の送ったLINEを見てから送信した。きっと大丈夫だろうが、少し心配だ。
それからツイッターを開いた。次の予言を待つ声が徐々に増えていた。私は彼らの声に応えるため、予言をすることを決めた。私は神様でも何でもないので、その予言が当たることはないだろう。しかし、強引に起こった出来事と結びつければ予言が当たったと錯覚させることだって可能である。一度信頼を勝ち得ているのだから。
私はツイッターに書き込んだ。
『私の予言の一つ目は当たりました。皆様、私が予言者だと信じていただけたでしょうか。では、二つ目の予言をします。五月十七日午後七時十二分。また何かが起こります。しっかりと用意をしなさい』
私の知名度はかなり上がっているため、もう私自身で拡散しなくても勝手にネットユーザー達が広めてくれるだろう。ツイッターのフォロワー数は地震の前と比べて大幅に増えていた。
予言した時刻まであと二日と三時間である。できれば、なにか大きなことが起こってほしいものだ。
もう一度彼女とのLINEを開いた。まだ送った二通のLINEに既読はついていない。無事だろうか。