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遠い

「旦那さん、どうしたんだろうね・・・」


突然電話をしたのにも関わらず、智子は「大丈夫だよ」と言って、快く家に泊めてくれた。

義母には「友人に不幸があったので、外泊します」と電話で説明した。

夫は帰宅も連絡もしていないようだった。


智子の最寄り駅のスーパーで、お酒とおつまみを買い込み、久しぶりに二人でゆっくり話す。


夫や義母との関係。

今まで言えなかった話を、今日は吐き出した。


「結婚式前に聞いていた話や結婚式の時の旦那さんの顔で、絶対にさっちゃんの事を幸せにしてくれる人だ!って思ったんだけどなぁ。お義母さんのことは大変そうだなって思ってたけど、夫婦仲はいいのかと思ってた。辛かったね」


智子の言葉に、涙が出た。

話したことで、心が軽くなった。


「夫婦の関係って、本当に周りから見たらわからないことだらけだよね。

円満そうに見えていきなり離婚する人や、離婚する!って騒いでるのに子供が産まれて結局仲良し、みたいな人たちもいるしさ」


そうなのだ。夫婦ってわからない。

Facebookで幸せそうな写真をあげてる人たちだって、実際は問題を抱えているかもしれない。


「結婚生活をずーっと上手くやっていける人たちっているのかな。なんかもう信じられない」


そう幸代が言うと、


「ちょっと!私まだ結婚していないんだから、夢がなくなるようなこと言わないで!」と智子は笑った。


その後も智子の近況やお互いの過去の恋愛話でお酒は進んだ。


幸代が話さないからか、工藤の話は出なかったが、寝る前に

「そういえば柏木に電話した?」と智子に聞かれた。


幸代は「ううん」と答えた。


こちらから電話はしていないので、嘘はついていない。

何となく、柏木から電話があったことが言いづらかった。

何でかは、よくわからない。



翌日、家に帰るのが本当に嫌だった。

夫と、どんな顔をして会えばいいのかわからない。

それでも帰るしかない。私の家はあの家なのだ。


「もう!あなたたち二人はどうなってるの!幸代さんも修司もいきなり外泊なんて」

義母は連絡がなく外泊した夫を夜通し待っていたのか、かなり疲れている様子だった。

夫はまだ帰宅していなかった。


「修司はどうしたの?」

そう聞かれても、幸代にもわからない。


「すみません、修司さんの友人の家を出て、すぐ別れてしまったので、わかりません」

正直にそういうしかなかった。


「何かあったのかしら・・・」

義母は夫の事を心配していたが、幸代は夫が不在で少しほっとした。

あの怒った様子で待たれていたら、とても耐えられなかった。


夜になって、不機嫌な様子で夫は帰宅してきた。

義母と幸代は夕食を食べていたけれど、夫はその場に少し顔を見せただけですぐに寝室に向かって閉じこもった。


義母はそんな夫を追いかけて、連絡をしないで外泊した理由を尋ねていたが、夫は何も答えなかった。

その日、幸代は夫と会話をしなかった。


そして、新しい週が始まる。


「夫と話し合わなければいけない」

なぜ土曜日に夫は怒ったのか。幸代についてどう思っているのか。

ちゃんと聞かなければいけないと思う。


しかし夫の帰りはまた遅くなった。以前よりもその時間は遅い。

幸代が寝た後に帰宅し、幸代が朝出かけるときにはまだ寝ている。


夫は私から逃げている。

わかってはいるが、それを無理やり捕まえる元気は幸代には無かった。


夫とは少し時間が必要かもしれない。


結局土曜日の事はなかったかのように、またいつもの毎日に戻る。

変わらず仕事に行き、義母と一緒に過ごす。


しかし、幸代の心には工藤の存在が残っていた。


智子の家にいたときも、自分の家についてからも、寝る前も。

会社の行き帰りも。


幸代は何度も携帯を確認した。


柏木は、

「同窓会が終わった後、工藤から連絡を貰ったんだ」

「さっきまた工藤から連絡があったんだよ」

といった。


そんなにも幸代に連絡をとりたいと思っていてくれたのならば、すぐに連絡をしてくれるはずだ。

そう思った。


しかし工藤からの連絡は、まだない。


柏木はあれからすぐに工藤に連絡をしてくれたのだろうか。

本当に連絡がくることがあるのだろうか。

なんで連絡がないのだろう。


週の半分が過ぎた。


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