冬
拝啓 樋田陽香様
僕達は晴れて結ばれたね。
僕が告白したら君は泣いてしまって、あの時は宥めるのに苦労したよ。
一緒になろう、そう言うと陽香さんは僕に身を任せてくれたよね。
あの時は心臓の鼓動が早くなって、苦しい位に嬉しかったんだ。
降り頻る雪は僕達を包み込んで、加護や祝福を施してくれていたから、きっと皆も許してくれる筈さ。
あの日を迎える為僕は生を受けたのだと、心から思ったよ。
積もった雪は固まった雪を踏んだ時の様にガリガリと不快な音を立てる事もなく、ただただ僕達を優しく受け入れてくれた。
触れ合えば互いを感じずには居られない。
そう、あれが愛だったんだね……。
陽香さん、僕は花を植えていた所だよ。
肥料の骨灰を花壇一面が白く染まる程撒いて、今土を耕している最中です。
育てるのは、僕達の愛を取り戻す切っ掛けをくれたあの花。
九月頃になれば、また風に揺れる死人を……幽界を想像させる花が咲くでしょう。
秋が来る度に僕はあの日を鮮明に蘇らせ、貴方に憎悪を滾らせてしまうかもしれない。
傷付けてしまうかもしれない。
けれどその時は、再び愛を育める様になるまで、季節を重ねよう。
桜が散れば忙しなく蝉が鳴いて、蜻蛉の羽休みを見掛けなくなれば息が白く染まる。
心の綻びなんて、直ぐに埋まってしまうよ。
そうして歳を経れば、この花の思い出で幸せに満ちてくる。
だって僕と貴方は永遠に一緒に居るんだから。
貴方と涵養するこの花は、より紅く彩られる事でしょう。




