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Rotary

海老名SA 回る系のショート5

作者: 羽生河四ノ

自分の中のものぐさ太郎が本領を発揮していたけど、やったら意外とできた。

 この間、長年の課題であった車の運転免許を遂に取得することに成功した。

 車なんて毛程の興味も無い私なんだけど、どうしても必要だったので取ったのだ。

 んで、

 いざ取ってみると、車なんて毛程の興味もない私のはずだったのだけど、それでもやっぱり運転してみたくなるのが人間というものである。私もそうなった。御多分に漏れず。例外なく。人間の性にはかなわないのだ。

 んで、

 一人で車を運転してあちこち行っている間にふと、あることに気がついた、


 楽しくないこれ?


 楽しい。何か楽しい。

 この間まで車なんて毛程の興味もない私だったはずなのに、気が付くといつの間にやら車を運転することが楽しい私に変化してしまっていた。そんな馬鹿な・・・。いままでの私は一体どこに行ったのだろう?それとも元々が今の私であったのだろうか?それは既にわからない。変化してしまった今となってはもうわからないことだ。残念ながら。変化の瞬間をこの目で見てみたかったけど、仕方ないので諦めることにする。残念だけど・・・。本当に残念だけど・・・。

 あと、もしかしたら「やっぱり物事は最初が大事だから私も車の運転に慣れるまでは車と行動をともにしよう!しばらく車で生活してみよう!」っていうスローガンがよかったのかもしれない。

 やる前は黄金伝説の過酷さを想像していたのだけど、やってみると車での生活も悪くないものである。

 それにしても教習所で横にスーツの人を搭載して運転していた頃は随分と肩に力が入っていたんだな・・・、一人で車を運転するようになったらそういう感情が湧いて出た。教習所では特に何も感じなかった自分のことを思い出す。楽しくなかった。正直一切楽しくなかった。それに比べて一人で運転している今は楽しい。一人で運転することがこんなに気楽で気持ちのいいことであったなんて思わなかった。凄すぎるぜ。車。

 特に高速道路を運転するときはたまらなく気持ちがいい。本当にたまらないくらい気持ちがいいのだ。自由だ。渋滞を避けることができたらそれはもうたまらなく自由だ。オキニのCDをかけたり、カーラジオを聴いて笑をこぼしたりしている。怒られるくらいこぼしている。車に毛程の興味もない頃の私だったら、そんなことにはならなかっただろう。カーラジオで笑うなんて。そんな私を私自身いままで想像だにしなかった。

 あと当然のことなんだけど、高速道路を使うようになってからSAにも入る事が出来るようになった。

 んで、

 驚かないでほしいのだけど、SAを見て私は感動した。これはもう本当に感動した、それ以外の言葉が出てこない。

 「暮らせるじゃん!」

 初めてSAに入ったとき口から勝手にそう言う言葉が漏れた。私が見る限りSAっていうのは生活が出来る。十分に出来る。十分すぎるほどに。

 その中でも特に、海老名SAが私のオキニだ。理由は『語呂がいいから』という単純なものであるけど、でもそういうのも悪くは無い気がする。まあ、別に誰に言いふらすわけでもないから構わないのだけど。

 それからはだいたい海老名SAで寝食を行うことにしている。

 たまに、犬吠埼とか城ヶ島とか大津岬とかに灯台を見に行ったり、林檎さんの歌の影響で九十九里浜とかにも行ったりしているけど(あと、鴨川シーワールドにも行った)最終的に帰るのは海老名SAだ。

 海老名は私のことをどう思っているかわからないけど、それでも私には海老名は特別な存在だ。海老名もそうであってくれたらそれは嬉しい。


 このように車での生活も悪くはないものである。食事はSAで食べたい時に食べたらいい。寝るときはシートを倒して寒ければ毛布でもかぶればいい。お風呂は温泉なり銭湯なりに行けばいい。運動はその気になればどこででも出来る。SA内を走ってもいいし、歩いてもいい。たまにジムに行くのもいいだろう。ガソリンは無くなったら入れたらいい。アイテムさえあれば車でスマホや携帯ゲーム機の充電だって出来るし、今はだいたいそういうのはSA内のコンビニで売っている。

 それにSAは周りにほとんど何もないから地震とかが発生してもあまり危険は無いように思える。

 昔の自分には考えられなかったことだし「起きて半畳寝て一畳」程極めることはできていないけど、現代であることを考慮してもらえたら、まあ十分じゃないのだろうか。

 「こういう生活をする為に頑張った甲斐があったなあ・・・」って今では思っている。自分でも意外なんだけど。あるいは噛み締めていると言ってもいいかもしれない。


 ところで最後にここ最近の話。それは私がいつものように海老名SA内で食事をしていた時のことだ。隣の席でトラックの運転手さんらしい二人組がこんな会話をしていた。

 「何かここ来る途中に変な噂を聞いたんだけど、お前は何か知ってるか?」

 「どんな噂ですか?」

 一人は名古屋から東京に向かっている途中らしく、もう一人は静岡から東京に向かっているらしい。

 「東京の方でゾンビが大量に発生しているらしいんだと」

 「ゾンビってあのゾンビですか?」

 「そうだよ、あれだよ。あれ以外に何があるってんだよ」

 「まさかあ・・・、そんなこと・・・」

 「だってよ、東京から戻ってくるはずの仲間がいつまでも戻ってこないのは、つまりそういうことだとしたらなあ・・・」

 「大丈夫ですよ。多分何か違う何かの問題が発生したに決まっているじゃないですか?ゾンビってそんなことあるわけ・・・」

 私はそれを聞いて嬉しくなった。

 順調にその数は増えているようだ。

 それというのも『薬』を作ってそれをどこに設置していつ散布させるのかを決定したのは私だから。

 なんかの実験のために。どのような目的かは知らない。私には興味もないことである。

 でもその報酬として私は一生分の生活費と車と自動車教習所の受講料を手に入れた。

 実験の資料も全部提出したし、私は今ようやく自由になった。

 それに、飛行場とか船とかってゾンビがどっか角からいきなり出てくる気がするけど、高速道路ってそういうのがない気がする。

 だから、車にしたんだよね。

 ゾンビが車を運転するって話も聞いたことないし・・・だから、まだしばらくは大丈夫なんじゃないかな?

 ああ、ちなみに一応いつでもガソリンは満タン。

 海老名SAのガソリンスタンドの店員からは「いつもありがとうございます」って言われる。それを聞いて『私にありがとうございますはねえよなあ』っていつも思う。言わないけどね。

 

あと五個もちゃんと流れをメモしておいたら、ペースアップにつながるかも知れない。でもものぐさ太郎次第なんであんまり考えないでおこうと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初は順調に海老名サービスエリアを楽しむ様子だったのが、主人公の正体・裏の仕事に吃驚。最後のオチが気に入りました。 ゾンビの薬を作って、撒く決定権まで‼️ 何やら格好いいです。何故そんな…
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