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第4話「いや、呼ぶなら普通ミリーとかだろ!」

 なんつーか、俺の抱いてる天使像ってのは、白での薄い生地のワンピースを身につけた、背中からは純白の羽を生やした、世に言う「天使のような」と形容されるまさに見るだけでうっとりするような笑顔の持ち主で、まさに身につけたワンピースのような純白な心の持ち主で――。


 とにかく、なにが言いたいかというと、俺の目の前にいる天使は俺の抱いてた(もう過去の話です)天使像にかすりもしてないってことですわ。


 まず、服装。半袖の白Tシャツにジーンズです。


 純白の羽。生えてません。


 笑顔。おたふく面です。


 心。違う意味で真っ白です。


 そんで、その天使は人の部屋のテレビを勝手につけてドラマの再放送を見てます。


 夕方のこの時間にお笑い番組はしてないことを指摘するとブーブー文句たれてやがりましたが、結局大人しくドラマ見てます。


「啓介のバカー!」


 あ、大人しかったの見初めの三分だけだったな。


「なんでプリンなのよー! 女が甘いもの食べたいって言ったら、こしあんのあんパンに決まってるでしょー!」


 ちなみに啓介ってのはドラマの主人公ね。


「ほらー! プリンなんか買ってくるから、恵出てっちゃうのよー!」


 コイツの文句だけ聞いてたら分かんないでしょうけど、このドラマ純愛の恋愛ドラマです。んで、もちろんヒロインねが出てったのは啓介がプリン買ってきたせいじゃありません。つーか、このシーンは恵が啓介に「なんだか急に甘いもの食べたくなっちゃった」と言いだし、啓介が恵のためにコンビニに甘いものを買いに言ったすきに姿を消してしまうというシーンです。


 詳しく説明すると長くなるんで省きますが、恵は啓介のためを想い、自分の気持ちを押し殺し出ていったわけです。一般の人はこのシーンで涙します。


「啓介のバカー!」


 恵の残した書き置きを見て泣いている啓介を天使がまたバカ呼ばわりしてます。つーか、啓介がプリン買ってきたからって恵には分かんねーだろ。


 ――啓介へ。


 あ、書き置きが恵の声で読まれ――。


 ――ひそかにあなたの後をつけてました。あなたがなにを買って来るのか知りたかったから……。啓介? 私信じてたんだよ? あなたはきっとこしあんのあんパンを買ってきてくれるって。でも、あなたはこしあんのあんパンには目もくれずプリンの元に……。

さようなら、啓介。

どうか幸せになってください。



 うん。最後の2行だけは改ざんされずにすんだな。


「ねえねえ、ヒロ君」


 たった10分でドラマに飽きた天使が俺に声をかけてきた。


「なんだ?」


「なんか甘いもの買ってきて」


「プリンでいいか?」


「んもう。女が甘いもの買ってきてって言ったら、どら焼きに決まってるでしょ?」


「そうか。とりあえず啓介と恵に謝っとけ。つーか、ドラマの脚本家に土下座しろ」


「あはは」


 天然かボケかまだ図りかねるな……。


 とりあえず、俺はリビングのテーブルの上に置いてあった菓子箱に五つどら焼きがあったことを思いだし、それを天使に与えてやった。


「ところで、お前天界から出てきたって言ってたよな?」


「んー? うん」


「その天界ってのはどんなとこなんだ?」


「んぐんぐんぐどんなとこってんぐんぐんぐんぐんぐふつうんぐんぐんぐんぐなとこだよ」


「……しゃべるか食べるかどっちかにしろ」


 ちなみにこいつ、面の内側に手を滑り込ませて、どら焼きを一つにつき一口で頬張ってます。


「んぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐ」


「俺が悪かった。食べるのやめてしゃべってくれ」


「んぐ……! はー、ごちそうさま」


 って、こいつどら焼き五つ完食しやがった。まあ、いいけど。


「――で、天界ってどんなとこなんだ?」


「んーどんなとこって普通だよ? 天使がいたり悪魔がいたり、死神がいたり、鬼がいたり、妖怪がいたり――」


「明らかに普通じゃねえな?」


 つーか、怖ーよ。天使以外全部ブラックな生き物じゃねーか。


「基本的な世界観はほとんどこっちと同じだよ?」


「つまり普通に、天使やら悪魔やら死神やら鬼やら妖怪やらが街を歩いてる感じか?」


「うん。そうそう」


 さいですか……。


「ところで、お前はなんで天界から出てきたんだ?」


 俺は素朴な疑問を口にした。


「それは、親と喧嘩し――見聞を広めるためにね」


「親子ゲンカして、家出してきたってわけか?」


「あはは」


「笑ってごまかせると思うなよ?」


「しくしくしく……」


「泣いても駄目だ! てめえの親子ゲンカに他人である俺を巻き込むんじゃねえ! 今すぐこっから――」


「こっころの〜アイドル〜ルル〜」


 出てけとは言えませんでした……。


 つーか、またこんなオチかよ……。


 あ、ちなみに自動車の運転免許証に天使の素顔の写真載ってました。


 肩まで伸ばした白銀色プラチナの髪にプラチナの瞳以外はどこにでもいそうな普通にかわいい女の子でした(ちなみに俺と同い年らしい)。


 つーか、普通にこっち見て黙って微笑んでりゃまともにみえんのにもってーねーなーって感じですわ。


 そんで、本名はミリアリア・バレンタインらしいです。


「バレちゃんって呼んでね♪」


 いや、呼ぶなら普通ミリーとかだろ!


 ってことで次回に続きます。



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