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第2話「殴り殺されるか、絞め殺されるか、消滅するか……どれがいい?」

 つーか、まああれです。いくら不法侵入っつっても、わけ分からんボケかますっつっても、俺のストーカーかもしれないっつっても、ドアの向こうから聞こえてくる声は女の子の声なんですよ。男なら誰だって少しは期待しますよね? 状況はまあ置いといて、心の隅っこじゃ、どんな女の子かな〜なんて、ちょっとわくわくしますよね? それこそ男のロマンってやつで。


 しかし、ドアを挟んだ向こうの世界に立っていたのは、おたふく面を被ったいかにもな変態だったわけで。


 男のロマンはズタズタに引き裂かれたわけで。


 この変態に俺は心のアイドルまで知られちゃってるわけで。


 そんな俺は絶句した後に、なんのリアクションもとらずにドアを閉じて、カギをかけたわけで。


「いやああー! ノーリアクションはいやー! なんらかのリアクションとってー!」


 そんで、変態がドアの向こうで泣きながらドアを叩いているわけで。


「……」


「おーねーがーいー! 私をただの変態で終わらせないでぇー!」


 んなこと訴えられても、こっちは関わり合いになりたくないわけで。


 つーか、このままこいつ警察に引き渡しちまえば物語はめでたしめでたしであっさり幕を引くわけで。


「こうなったら、あんたの心のアイドル暴露してやるー! 朝礼で校長の挨拶の後に全校生徒の前で暴露してやるー! 1年A組の佐々木広之の心のアイドルは――」


「早まるなぁぁぁぁ!」


 反射的に俺はドアのカギを開け、変態を部屋に入れてしまったわけで。


「っていうか、そのどっかで聞いたことのある説明口調いつまで続けるの?」


 俺は変態を部屋に引っ張り入れると、勢いよく部屋のドアを閉めた。


「あ、元に戻った」


「お、お前……!」


「ん?」


「なんで俺の名前から心のアイドルまで知ってんだよぉぉぉ! つーか心のアイドルなんて言い方したら俺の人格疑われんだろうがぁぁぁ!」


「あはは。だって最初に言い出したの君じゃん」


「だから、なんでそれを知ってんだよおぉぉぉ!」


「え……。そんなこと……言えないよ。内緒、内緒」


「いや、なんでそこで照れるんだよ! 俺そんな恥ずかしいこと聞いた!? ってか人並みな羞恥心もってんならまずそのお面外せえぇぇ!!」


「な……セ、セクハラ発言!?」


「いや、どこが! 今の発言のどこにセクハラの要素が含まれてんの!」


「女にとってお面を外すってことは、胸をまさぐられるほどの――」


「嘘つけぇぇ!! だとしたら男は女の顔見るだけで犯罪になっちまうじゃねえか!」


「あ。そういえば、自己紹介がまだだったね」


「人のツッコみ放置すんじゃねぇぇぇ!」


「私の名前は――」


「聞けえぇぇぇぇ!!」


「あはは。ナイスツッコみ」


「こ、こいつ……!」


 俺はおたふく面を被りつつ、俺を指さしながら笑う変態を思いっきりにらみつけた。

おたふく面のほのぼの笑い顔でそんなことされた日にゃ、いくら温厚な俺だってそりゃキレますわ。


 ちなみにおたふく面は丸顔で、額が高く、頬がふくれ、鼻の低い女の仮面ね(電子辞書調べ)。


「てめえ! 人をバカにするのも大概にしろ!」


 俺はそう怒鳴りつつ、おたふく面被った変態の肩をつかんだ。


「あ、そんなことしたら――」


 刹那、おたふく面を被った――面倒くさいからもう変態でいいや――の耳についたピアスが激しく発光した。かと思うと、ボディビルダー並の筋肉隆々な大男が俺の目の前に文字通り「ヌ」と現れた。


 ……ふんどし一丁の。


 はい。俺はまたもや絶句しました。ツッコむ箇所がありすぎて、言葉になりません。ちなみに、補足すると変態2(目の前に現れた大男のことね)は2メートルを越える大男であり、身長175センチの俺をものすごい見下ろしてます。つーか、いつ襲われてもおかしくないぐらい敵意むき出しの形相でにらまれてます。つーか、肌がなんか異様に赤黒いんすけど。気のせいか切り傷やら刺し傷と思われる傷跡が体のいたるところに刻まれてるんすけど。


「……小僧」


 変態2は、今まで数え切れないほどの人を殺してきました、みたいな目で俺をにらんだまま静かに声をかけてきた。


「は、はい?」


「殴り殺されるか、絞め殺されるか、消滅するか……どれがいい?」


 いやいやいやいや。どれ選んでも結果は同じじゃん。つーか、最後のは明らかにおかしいだろ。


「……そうか。消滅がいいか」


 ええ! 俺なんも言ってないのに!?


「質問に5秒以内に答えない者は消滅させる。それが俺の流儀だ」


 なんつー迷惑な流儀してんだよ! んな流儀に付き合ってたら


「なあ、この問2の答えってどうなんの?」


「ちょっと待って。まだ問1終わってないから」


「あ、うん」


「えーと……。問2は――」


「あ、5秒経っちゃった。ごめん。消滅させるね?」


 てなあり得ないことになっちまうだろうが!


 とか、思ってる内に変態2の右手がみるみる炎に包まれてるよ。握った拳に炎が収束されてるよ。部屋の温度が一気に40度跳ね上がっちゃったよ。


 ――って、あんた炎操れんの!?


「ちょっと待って。イフリート」


「……なんスか?」


 イフリート? 今、イフリートって言った? つーか、いい年した(多分)おっさんがおたふく面被った女の子(変態)に微妙に敬語遣ってるよ。


「その人消滅させちゃ駄目だよ。私今日からこの家に居候させてもらうんだから」


「いや、でもコイツあんたに危害加えようとしたっスよ。契約通り消滅させないと――」


「ダーメ。分かったらさっさと消えて。暑苦しいでしょ」


うん。いろんな意味でな。


「ち……」


 変態2、もといイフリートは忌々しそうに舌打ちした後大人しく変態のピアスに戻っていった。話しの流れから、変態に危害を加えようとする輩を全て消滅させるようになってるみたいだけど、服従してるわけじゃないみたいだな。敬語微妙だったし、舌打ちしたし。


まあ、今はそのことは置いといていいか。それより今はあれだ。あえてスルーしたコイツの爆弾発言。ツッコみたくねーけど、そこんとこツッコんでみよーか。


「えーと、とりあえず助かったよ。ありがとう」


「どういたしましてー」


「――で、さっきのボケなんだけど俺はどうツッコめばいいですか」


「えー? 私ボケたっけ?」


「うん。この家に居候するってボケてたっしょ?」


 俺はにっこり笑って言ってやりました。


「あはは。あれは別にボケたわけじゃない――」


「させるか、ボケェェェェ!!」


「佐々木広之君のー心のアイドルはー同じクラスの――」


「好きにしやがれ、コンチキショー!!」




 ――たち悪いよ、コイツ……。



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