第15話「つーか、お前そっちの方がキャラ自然じゃねえか?」
ドスン! バタン! ドタバタドタバタ! ガスガス! ゴスリンチョ♪
「う……」
気がつくとなぜか自分の部屋のベッドの上にいた。気のせいか、姉貴の過去のトラウマの再現V作るとか天使が言い出して、イフリートを見てバーサーカーモードになった姉貴に追い掛け回され、妙な女のペットにゴールデンシャワーをひっかけられたような夢を見ていたような気がするのだが、気のせいだろうか。夢にしては覚えている内容が具体的過ぎるし、上半身裸のままだし、顔からなんか腐った卵のようなにおいがぷんぷん漂ってくるのだが、夢だろうか。うん。きっと、夢だな。とりあえず、シャツ着て、顔洗いに行こう。
ドタン! バタン! バタタタタタ! ガシャゴショア! ドドドドドド! グェシャモヘア! ニューン! ピロピロピーン! モヘ〜♪
とりあえず、さっきから聞こえてくる、隣の部屋からの怪奇音に無視を決め込んで部屋の前を素通りした。ちなみに、二階の部屋は階段側から、空き部屋、俺の部屋、姉貴の部屋となっている。そして、謎の騒音が聞こえてくるのは、空き部屋からだ。
「だから、上は絶対私だって言ってるでしょ!?」
「しつこいなあ! 上は私よ! 下っ端は下っ端らしく、私の言うこと聞いてなさいよ!」
「な、なんですってぇ! おのれ……こうなったら実力行使よ!」
「望むところよ! イフリート召喚!」
「って、ちょっとぉ! こんなとこでそんなもん出さないでよ!」
「ぶちのめして、イフリート♪」
ドスン! ボカン! プスプス……。 ドゴーン! ボフン! ブスブスブス……。ノヘ〜ン。ダダダダッダダッダッダ! ヌ〜ン♪
なにやら、聞き覚えのある争い声まで聞こえてきたが、とりあえず俺は一階に降り、洗面所に入った。顔を洗い終えると、リビングからお袋が夕飯を勧めてきたが、食欲がなかったのでいらないと言っておいた。いつの間にか、時刻は夜の7時になっていたが、深くは考えず2階に上がる。
「いぎゃあああああああああああ!」
響き渡るイフリートの絶叫。つーか、あんた最近そればっかだな、おっさん。俺は軽くイフリートに同情しつつ、いまだに「私が上よ!」とイフリートを完全無視して言い合いをしている天使の声と謎の女の子の声を部屋の外で立ち聞きした。つーか、天使と言い合いしてるの誰だ? 完全、知らない人間の声だな。って、もうそれぐらいじゃ動揺しない自分がなんか怖いな。
とりあえず、近所迷惑なので黙らせようと部屋のドアを開くと、絶叫しながらイフリートが部屋から転げまわりながら廊下に出てきた。あまりの痛みに自分でも進行方向がコントロールできないらしく、うまい具合に階段の方へ転げ進んだイフリートは、あえなく地獄に落ちた。よし。だいぶ静かになったな。
「お。ヒロ君目が覚めたんだ。よかったね♪」
「隣の部屋でこれだけ騒がれたら、誰でも目を覚ますわ」
俺に声をかけてくる天使に返事を返す。しかし、空き部屋であるはずの部屋の中には、なぜか二段ベッドが置かれ、部屋の中は整理整頓されている――形跡が跡形もなくなっているのは、おそらくこいつらのドタバタのせいだな。お前ら、後でちゃんと後片付けしとけよ。しかし、なぜ空き部屋に二段ベッドが置かれ、その他生活用品が配備されてるんだ? そして、この場にいる見慣れない女の子は一体……? 駄目だ。寝起きから、ツッコむポイント満載で頭いてえ。
――5分後……。
「つまり、これからこの部屋はお前(天使)が使うことになったと。それで、その子(知らない女の子)もなぜか家に居候することになり、この部屋を使うことになり、その二段ベッドを部屋に持ち込み、どっちが上を使うかでモメていたと。フザケンナバカヤロウ。オレノイナイアイダニカッテニハナシススメヤガッテ。ツーカ、オマエハナニモノダヨ。イソウロウッテナンダコラ、シネ、カス、ボケ、アホンダラ(副音声)」
「ヒロ君? 副音声がモロクソ声に出てるよ?」
「……とりあえず、寝起きの俺にも分かるように順を追って説明しろ」
そう言うと、今まで黙っていた謎の女の子が「分かりましたわ」と声を発した。
天使と同じくプラチナ色に輝く瞳。背中辺りまで伸びた髪を後ろで一つにしばったポニーテールも同じくプラチナだ。ここまでヤツ(天使)に類似していると、同じ人種であることは疑いようがないような気もするが、とにかく無視だ。希望は最後まで捨ててはならない。
「ところで、あなたは誰ですか」
俺はそう言って、荒れ果てた部屋の真ん中あたりに腰を下ろした。謎の女の子は俺に向かい合って正座すると「あ、自己紹介が遅れましてごめんあそばせ」となんか鼻につく言葉遣いで微笑を浮かべた。つーか、お前俺のことバカにしてんのか? とは思ったが口には出さないでおいた。まだ、初対面だしな。
「私は天使のルル・パッソン。気軽にルルとでも呼んでくださいあそばせ」
やっぱ天使か……。つーか、お前俺をバカにしてんのか?
「あはは。絶対パッソンだよね、ヒロ君。パッソン、パッソン、パッソ、パソ〜♪」
んで、天使が茶々入れて、パッソ――もとい、ルルが「ちょっと、ミリー! あんたは黙っててよ!」とビシッと天使を指差しながら、普通の言葉遣いで怒鳴った。やっぱ、お前俺をバカにしてるってことか?
「こ、こほん……。お見苦しいところをお見せしてしまい、ごめんあそばせ。私――」
とりあえず、腹が立ったので俺はルルの頭を無言ではたいた。つーか、お前は童顔で、小柄、おまけにいかにもロリキャラなそのなり(なんかこいつヒラヒラの真っ白なドレス着込んでます)で、お嬢様ぶるな。なにを目指してんだ、お前は。
「いったあー! 何で私今叩かれたの!」
「初めから、そうしろ」
「いや、なにが!」
「いや、スマン。とりあえず、その鼻につくお嬢様言葉は止めてくれないか」
「だったら、初めからそう言ってよ!」
「だから、悪かったって」
俺は平謝りしながら、ルルの怒りをてきとうに鎮めた。つーか、だんだん自分が横暴な人間になっていってるような気がするのは気のせいだろうか。まあ、自覚があるうちは大丈夫か。
「と、とりあえず、この言葉遣いを変える気はございませんことよ。これは、私のポリシーですの」
「左様でございませあそばせ」
「ちょっと! 私のことバカにしてんのあんた!」
「いや、敬意を表しただけだが」
「うそつけ!」
しかし、コイツ今自分で自分のポリシー全否定したな。とりあえず、なんか面白いから好きにさせとくか。むかついたら殴ればすむだけの話だしな。
ルルは「まったく、だからミリーなんかのお目付けなんていやだったのよ」とか何とかぶつぶつ小声で文句言いながらも、結局は気を取り直して俺に向き直った。
「ねえねえ、ヒロ君。ここだけの話、パッソンって小さい頃に少女漫画に出てきたバカみたいなお姫様に憧れて、こんな出来損ないのアホ姫みたいな言葉遣いするようになったんだよ。プッ。笑えるでしょ?」
確かに笑えるな。
「ちょっと、ミリー! あんた、余計なこと言わないでよ! ってか、パッソン言うな!」
「どうして、パッソンはパッソンなの〜。そっれは、パッソンがアッホだっから〜♪」
「きいいいいい! おのれ、ミリー!」
「いや、お前早く状況説明しろよ」
天使を追いかけ回しながら、天使に足を引っ掛けられ見事にずっこけたパッソ――ルルに俺は言った。つーか、天使がパッソンパッソン言うからこっちまでうつっちまったな。いっそもう、パッソンでいいか。
「駄目ぇー!」
「だったら、さっさと説明しろ」
もやは、ナレーションにリアクションされても何も感じなくなってきたな。
よほど、パッソンと呼ばれることが嫌らしく、パッ――ルルは天使を追いかけ回すのをやめ、再び俺に向かい合い正座した。なんか、コイツの扱い方が分かってきたな。
「じゃあ、パッソ――ルル。説明してくれ」
「あんた、さっきから絶対わざとやってんでしょ!」
「そんなことないよ、パッ――ルル」
「あんた、ミリーよりたち悪いわよ!」
「左様でございませあそばせ」
「てめええええ!」
おお。すげえ、キレた。つーか、お前そっちの方がキャラ自然じゃねえか?
「ほっとけ!」
「あはは。やるね、ヒロ君」
満足げに親指を立ててから、天使は俺の後ろでわけの分からん鼻歌(なんか、パソパソ言ってる)を歌いだした。そんで、もう怒鳴る気力も失くし、パッソンは床に両手をついて、なんか、ズーン……ってなってる。もしかして、こいつらって元いじめっ子といじめられっ子なのでは? いや、現在進行形か? つーか、少しやりすぎたか。
俺は反省しつつ、パッソンに優しく声をかけた。
「悪かったな。元気出せ、パッソン」
「なんで定着してんのよ……。ってか、もう、それでいいよ……」
なんか、悪いことしたな……。