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電車で遭遇した見知らぬ美少女が後輩だった件

作者: ねこラシ
掲載日:2026/03/23

 俺はその日いつものように人が多い電車へ乗車した。行先は通う大学の近くにある駅だ。俺はいつものように人がなるべく少ない車両に乗り、入口から遠い角席へ座った。そして左耳にイヤホンをして、お気に入りの音楽を聴いていた。


 すると右耳に優しい声が入ってきた。


「隣、良いですか?」


 と問う声の主に俺は返事が遅れた。

 見ればその人は中学生くらいの身長をして、髪はブロンズのような茶色、まだ少女のあどけなさが残る童顔には大きなレンズがついた丸眼鏡をかけていた。体型はぽっちゃりとまではいかないが少し丸みを帯びていた。服装的に中学生でないことが見て取れた。


 俺はその容姿の美しさに胸を打たれ、見惚れていた。なぜならタイプの中のタイプだったからだ。


「……っ」

「あのぅ……聞こえてますか……?」


 そして二度目の声が耳に入ってきた時に心臓の鼓動が早くなり、体が暑くなるのを感じ、ようやく我に返った。


「は、はい! どうぞ」


 そういうとペコりと丁寧に頭を下げた。その時にフワリと髪が揺れ、シャンプーの良い香りが鼻をつたり全身へ広がった。

 そしてその女性は隣に着席した。そこからは極度の緊張で体が震えていた。これほどの緊張を感じたのは大学の合格発表以来だ。


 俺は自分を律する為に息を深く吸い込み、ゆっくりと吐き出した。そして数秒の間を空け、深く吸い込み、ゆっくり吐き出した。あぐらを組んではいないが中学の修学旅行で体験した座禅がここで生きることになるとは……。


 チラリと横目で隣を覗けば天使が居る。こんな状況で落ち着いて居られなかった。

 俺はどうやら恋をしてしまったらしい。それも見知らぬ女性に。


「あの……体調が優れませんか?」


「あぁ、いえそんなことはないです! 大丈夫ですよ」


 どうやら俺の顔はいまさくらんぼのように真っ赤に実っているらしい。それも体調を心配されるほどに。そして俺はどうしても話をしたかった。どんな内容でも良い。話す話題が欲しかった。

 だから必死に思考を飛ばし、彼女との接点を持ちたかった。


 (彼氏いる? なんて聞けるわけがない。絶対不審者と思われて通報されるに決まってる。そんなのゴメンだ! ホントに何でも良い、何か! 話題が欲しい!)


 そう心の中で葛藤していると、彼女が持っている単語帳が視界に入った。「そうだ! これなら」と心に思い、俺は一呼吸して落ち着いて聞いてみた。


「学校で小テストでもあるの?」


 と声のトーンを平常にし、緊張を隠して言った。それを聞いた彼女は一瞬自分に言われていると思っていなかったらしく「私ですか?」と何故か少し恥ずかしそうに言った。


 元々身長差があるからか、座高も俺の方がずっと高く彼女を見下ろすようになっていた。そのため、彼女がこちらを見ると必然的に上目遣いとなるのだ。

 丸眼鏡を通して送られてくる視線に俺は心の中で悶絶していた。「なんて可愛いのか!」と。


「え、えぇっと、小テストではなく、英検が近いうちにあるのでそのため……です。」


 彼女は少しぎこちない様子で答えた。それも当然であろう。見知らぬ人、ましてや男だ。警戒してしまうに決まっている。

 だが話している間、視線が落ち着かずキョロキョロと焦点が合わなかった。


 もしかしたら、警戒してるのではなく、話をするのが苦手なのかもしれない。だとしたら今、自分の取っている行動は彼女にとって嫌なことであり、鬱陶しいと感じているのだろう。


 そう思うと俺は先程まで炎炎と燃えていた心が消化され、「そっか、頑張ってね」と言い、左耳から入ってくるリズムに意識が移った。


 だがしかし、彼女はいい意味で俺の期待を裏切ってくれた。

 親しい間柄でもないのに、親友であるかのように彼女はポンポンと肩を叩いた。予想外の行動に俺は再びドキッ! としてしまった。


「どうしたの?」

「あの、候稜大学への道を知っていますか?」


 と彼女は聞いてきた。候稜大学、まさしく俺も向かっている大学である。俺は思わず電車内、公共の場であることを忘れて大声で言ってしまった。


「知ってるよ!!!」



 ———


「さ、さっきは電車で大声を出しちゃってごめんね。」

「い、いえ、私もタイミングを間違えてしまいました……」


 と申し訳なさそうに互いに謝った。そして大学へ向かって歩き出した。その中でも会話は少なかった。一つ言えることは俺は彼女の顔の可愛さに夢中だったことだ。

 俺は〇リコンになった覚えは無いし、タイプになった覚えもない。

 ただ俺は少し丸く、自分よりも年下の子がタイプということだけだ。それ以外は至って普通の人間だ。


 隣で一緒に歩いていると、周囲の人からの視線が熱い。それは全て隣の彼女だろう。一日の中で俺はこんなに人に見られることはない。

 そう思うとこの子は毎日大変な思いをしているのかと勝手に思ってしまった。


 彼女の容姿は本当に凄かった。横から見ると雪のように白い頬は緩やかな弧を描き、髪の毛の間から顔を出している小さな耳は思わず食べたくなるほどだ。そして座っていたから彼女の身長は気にしなかったが、横からみると視界の半分より下に彼女の頭がある。ちょうどつむじの辺りだ。

 茶色の髪は歩く度にフワフワと小刻みに揺れ、周囲に花を咲かせる。


「あの、名前を伺っても良いですか?」


 と、まさかの彼女から名前を聞かれた。俺は少し入れ食い気味になったが、落ち着いて返答した。


皇隆斗(すめらぎたかと)です」

「隆斗さん、私は華月愛乃(かづきあいの)です。新入生同士お願いします……」


 と言った。だが俺は引っかかる点があった。それは()()()()()というところだ。俺は今年21歳の()()だ。

 なんと彼女は今年侯稜大学へ入った新入生だったのだ。俺は唐突な後輩宣言に内心驚きを隠せなかった。


「し、新入生?」

「え? はい、新入生……じゃないですか?」

「えぇっと、俺今年で21なので三年生です」

「あっ……う………せ、先輩……ですか?」

「まぁ、そうだね」


 俺がそう言うと、愛乃は少しずつ顔が赤くなり、眼に少しずつ涙が溜まり、半泣きになってしまった。こんな時にいうのもあれだが、そんな顔も可愛い。

 そしてその場で頭を下げた。


「先輩と知らず、すみませんでした……」

「いやいや、大丈夫だよ。年齢言ってない俺も悪かったからね」


 そう言っても頭を上げない愛乃。果たしてどうしたものか。目の前にあるのは綺麗な髪が生えそろった頭がある俺はそのとき本能的に感じたままの行動を取った。

 俺はヨシヨシと頭を優しく撫でたのだ。


「ほら、満足した? 講義に遅れちゃうよ」


 そう言うと愛乃は頬が赤くなった。

 あぁ、やってしまった。後輩だからという理由で触っていいということではない。俺はついに変態に成り下がってしまったのだ。なんと、罪深いことよ。


 今、「変態!」と言われ通報されても仕方がない。むしろ妥当である。さぁ、罪深き囚人の仲間入りか……。

 俺が勝手にそう思っていると愛乃は行動を始めた。


「こ、講義に遅れるので急ぎましょう!」


 と走り出した。彼女がいたはずの場所にはいい香りが漂っていた。

 小柄な体な割には足が速く、気がつけば10m以上は離れていた。


「あ、そっちの道は違うよー!」


 俺は走り出した彼女の背を追い、走り出した。その日の気温はまだ寒かったが、この日だけはとても身体が暑かったのを覚えている。

 これが華月愛乃との出会いだった。


※※※


「はぁ……はぁ……」


 愛乃はやはり、足が早かった。高校時代陸上部だったのではないかと思うほどに。


「も、もう道は分かるので大丈夫ですー!」

「いや! 待って!!」


 いつの間にか商店街にたどり着いていた。その商店街の看板を見れば「横天(おうてん)商店街」。まずい! 


 何がまずいってこの商店街は、俺たちの大学の真反対にある。今から戻ると、20分はかかる。もう一限の講義は諦めて、二限は必ず出席しよう。うん、それで良い。


 それよりも……。


「愛乃! 大学は反対だ! 早くしないと二限までに戻れなくなる!!」


 それがようやく耳に入ったのか、彼女はようやく止まった。

 俺はヘナヘナと膝から崩れ落ちた。脚が、全体の筋肉が………高校時代の持久走を思い出した。思い出したくもないが。


「は、反対?」

「そう……反対だよ、何してるんだ……手のかかる後輩だ……」

「だ、大丈夫ですか?」

「いや、酸欠………。頭痛がする……」


 俺はゆっくりと立ち上がると、ズキズキと頭に響く痛み、そしてフラフラとした感覚、間違いなく酸欠だ………。


 俺はゆっくりと歩き出したが、平衡感覚を失いよろめき、倒れた。


「先輩! ど、どうしよう……!」


 しかも運の悪いことにここは人通りの少ない商店街。助けなんて期待してない。俺はかろうじて意識を保つことができていた。


「近くに……ベンチか、何か……ないか?」


 そう言うと愛乃は茶色の髪を揺らしながらキョロキョロと見渡しながらベンチを探す。


「ない、ないです先輩……」

「じゃあ……膝、貸してくれ」


 別に下心はない。これくらいのことをしても許されると勝手に思ってる。


「あ、ぇ? 先輩?!」

「地面だと、硬くて回復できない。これくらいは許してくれ」


 俺は愛乃の膝に仰向けになり、頭を乗せた。あぁー、柔らかい。綿みたいだ。フワフワ、ちょうどいい。


「先輩を振り回して講義にも出れなくしてしまいました、すみません」

「いや、むしろラッ、そうだな俺以外だったらどうなっていたか」

「ラッキーで良かったです」

「……バレたか」


 俺は今まで眼を閉じていたが、眼を開けると心配そうにこちらを見ていた。髪と同じ色の瞳がジッとこちらを見ていたために、鼓動が早くなり、むしろ症状が悪化しそうだった。


 だから、俺は起き上がろうと上半身を上げようとしたが、自分の意思とは反対に彼女の両手が再び頭を膝につけさせた。


「……世話焼き?」

「そうです、私のせいなので……。それに人がいないので」


 人がいない、と言う言葉に少し興奮したが内緒だ。だが、確かにそうだ人がいなくてラッキーだ。


「大学行くの辞めて、き、今日はこうしてますか……?」

「は……?」

「じ、冗談です! 今のは聞かなかったことにしてください!」

「分かった。じゃあ、あと三年くらいこうしてるか」

「ダメです! 流石に三年は無理です!」

「いや、いけるだろ」

「無理ですよ!」


 俺はゆっくりと状態を起こし、愛乃と同じ座高に座った。そして、面と向かってはっきりと言った。


「結婚すればいけるよ?」

「……はい?」

「よーし! 元気になったし、大学行くぞ!」


 俺は自分の高鳴った心臓とは裏腹に「言ってしまった」と、いけると思って流れで発した言葉にやや後悔していた。


 どう思われるか、変態? いや、警察案件だな。セクハラか? いやでも、これは理由がある。そう、仕方なかった、仕方なかったんだ!


 俺はゆっくりと歩き出した。まだ少しフラフラした感覚が残っていたが気になるほどではない。


「先輩!」


 その時、愛乃から声がかかった。俺は平然を装い言った。


「どうした?」

「先輩が、私を落としたら良いですよ」


 まさかの発言に俺は再び鼓動が早くなり、身体が熱くなるのを感じた。そして再び、俺は流れでやってしまった。


「分かった」


 俺はゆっくりと近寄り、愛乃の前まで来た。そして震える手で、彼女をこちらへと寄せ顎をクイッと上げた。

 彼女との視線が交差する。心臓の音がうるさい。きっと、この行動は後悔しない。俺はそう確信した。


「……先輩、ドラマの見過ぎですよ」


 しかし、彼女は平然とそう言った。一人熱くなっていた俺がバカみたいだ。俺はゆっくりと離れる。


「まぁ、ドラマよりは良かったですけど……//」

「じゃあ、次」


 それを言われて止まる俺ではない。俺は再び歩み寄ると、彼女は俺の動きを止めるかのように手で押してきた。


「つ、次はダメです! もう恥ずかしくて死んじゃいます!」


 俺はもう一度、彼女の手を握り上に上げて抱き寄せる。


「キュン死ってやつ?」


 (あぁー!! マジで人いなくて良かったー!! 外部の人から見たら俺が変態だから通報されてた!)


「〜〜〜っ、違います!」


 そう言うと彼女は俺から離れた。よく見ると彼女は顔を真っ赤にしている。黄金比とも言える顔にかけられた丸眼鏡を通してこちらに向けられる彼女の視線を感じる。


 顔は赤いものの、その理由は怒りではなく、恥ずかしいと今までの行動で分かる。


 ていうか、あれキモ。俺、何してんだ? 今日出会ったばっかだよね? え? キモくね、俺。

 俺は急に冷静になり、自分の行動を振り返った。あぁーやばい! 俺が恥ずかしくて死ぬ!


 俺はその場に縮こまってしまった。あー、童帝丸出しだ、俺が死ぬ……。


「だ、大丈夫ですか?」

「いや、冷静に振り返ると通報されてもおかしくないから……」

「そ、そんなことしないです! 私でも、私以外でも先輩は悪くないって伝えるので大丈夫です!」

「童帝丸出しで恥ずかしい……穴があったら入りたい……」

「童帝?」


 最悪だ。どうやら聞こえていたらしい、しかも「童帝」というワード。てか、この子そんな言葉知ってるの? 絶対知らないでしょ。


 だってそんな事とは無縁そうな顔してるからね!!


「先輩、童帝なんですねぇ」


 からかうような声色、ゆっくりと顔をあげるとニヤニヤしてた愛乃がいた。


「ど、童帝さ! 生粋のね!!」


 俺はもうつつみ隠さず、大きな声でそう言った。もう、聞かれていたなら隠そうとせず、公にする方が良いさ!


「なるほど、だからさっきの行動を……」

「ちょ! それは!」

「可愛いですね、先輩……」


 愛乃はニヤニヤしながらそう言った。からかわれている。しかも後輩に! しかも美少女に! 俺は決してドMではないが、悪くないな。


「はい、どうぞ」


 そう言うと愛乃は眼を閉じて両手を広げている。きっと童帝だから、近寄らないと思ってそこをからかうだろう。

 いや、かと言ってそれにのって、そのやり方によってはからかわれる。


 俺の中ではもう一つの選択肢しか残されていなかった。え? いいのか? いや、もう良いや。刑務所に入ってもどうでもいい。


 俺は「フゥー」と息を吐き、勇気を出して近寄った。一歩、また一歩と距離が縮む。進むたびに彼女の顔が近くなる。


 改めて可愛いと思う。


 そして俺はゆっくりと顔を近づけた。ゆっくり、ゆっくりと近づき、彼女の口と接触する。




 ――ことはなかった、直前で彼女が間に手を挟んでいた。


「思った通りです。先輩、口づけはまだ先ですよ」


 そう言うと今度は彼女から、俺に抱きついてきた。

 な、なんだこれれれれ!!!

 恋愛漫画の主人公かよ!!


「さ、さぁ! 大学に行きますよ!」


 その時間は延べ五秒にも満たないが、人生でもっとも幸福な瞬間だった。

 そしていつの間にか彼女は再び走り出していた。だが、今度は俺は彼女を追えなかった。


 この日俺は、童帝卒業以上の経験をした気がする。



 (……やってしまった! 先輩をからかった上に、はしたないことまで!! あーもう、無理無理! 今度からどう会えば良いのか分からないよー!!!)

 

分かる、分かるぞ。みんなが言いたいことは分かる。


「童貞」ではなく「童帝」と言いたいだろう?

間違っていないのだ!!


主人公は「童の帝」だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

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