表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
硝子の椅子は  作者: 全てAIが書きました。
8/11

第八章 空白の二分

外部ログに残る “観測完了” の記録。

だが論文の著者欄は空白。

主人公は、この理論がすでに一度証明されている可能性に気づく。

ただし証明者はどこにもいない。

 二分。

 わずか百二十秒。


 ログに存在しない時間。記憶にも存在しない時間。

 だが映像には存在する。


 その百二十秒の間に、僕は真白と会話し、装置を受け取っている。


 装置。外付けログ。

 observer。


 観測者。


 僕は観測者に選ばれている。

 なぜ。


 霧島が装置を覗き込む。


「音声は?」


「ない」


 僕は答える。


 彼は端末を取り出し、映像をコピーしようとする。

 装置が拒否する。


 “read only”


「プロテクトされている」


 彼は言う。当然だ。

 観測ログは改竄不可でなければならない。


 条件2。

 不可改竄。


「この装置が観測者だ」


 霧島が言う。


「違う」


 僕は言う。


「装置は記録するだけだ。観測者は僕だ」


 僕がこれを読み、意味を与える。

 観測は成立する。


「なら君は事件の中心にいる」


 霧島は言う。

 中心。

 否定できない。


「だが犯人とは限らない」


 彼は付け加える。

 被害者の可能性もある。

 記憶を消された。

 ログを改竄された。

 操作された。

 被害者。

 その言葉に救われる。


 だが映像の中の僕は落ち着いている。

 混乱していない。

 装置を受け取るとき、頷いている。

 理解している。


 何を。


「真白は何を言った?」


 霧島が聞く。

 音声はない。だが唇の動き。

 読める。

 観測。


 彼女は三回同じ口の形をしている。

 O。

 B。

 S。


 observer。


 僕は言う。


「観測を続けろ」


 それが彼女の言葉。

 僕の記憶にはない。だが映像は示している。

 彼女は装置を渡した。


 なぜサーバーに保存しなかった?

 なぜローカルに?

 サーバーは改竄される可能性がある。


 内部犯。

 管理者。


 僕。

 霧島。

 真白。


 三人。


 真白は自分以外を疑った。

 だからローカルに残した。

 そして観測者を僕にした。

 霧島ではなく。


 なぜ。


 論理的に考える。


 管理者権限。ログ改竄可能者。

 僕と霧島。


 だが霧島は管理者ではない。

 技術的には僕だけだ。

 なら。


 僕が最も疑われる。

 だから僕に観測を委ねた。


 自己監視。自己証明。

 観測者=被疑者。


 それが最も強固な証明になる。

 僕が自分の無実を観測する。

 あるいは。


 自分の有罪を観測する。

 円が閉じる。


「君は何をした?」


 霧島が聞く。

 答えられない。記憶がない。


 だが論理はある。


 死亡推定時刻。

 九時三十分前後。


 毒物。

 経口。


 密室。外部侵入なし。

 彼女は自分で飲んだ。

 自殺。


 だがなぜ?遺書はない。


 observer.log は存在しない。


 装置だけがある。

 観測を続けろ。

 それが遺言。


 死の理由はログにある。

 ログを見ればわかる。

 だがログは改竄されている。


 誰が?


 僕は自分の端末を開く。

 管理者ログ。


 権限変更履歴。


 九時三十一分。


 管理者権限の一時剥奪。


 実行者:霧島。


 僕は霧島を見る。


 彼は目を細める。


「バックアップのためだ」


 彼は言う。


「君が不調だったから」


 不調。

 確かに昨日、僕は倒れた。

 だが時刻が違う。


 九時三十一分。


 僕は論文を書いていた。ログがある。

 だが空白の二分。


 九時二十八分から三十分。


 僕は真白の部屋にいた。


 その後。

 何が起きた?


 映像は途切れている。

 装置はそこまでしか記録していない。

 意図的だ。


 真白はその先を残さなかった。

 なぜ。


 観測者に委ねた。僕に。


 思考する。


 僕が部屋を出た。

 九時二十九分。


 真白は生きていた。


 九時三十分。

 キー入力ログ。


 僕は自室にいた。


 死亡推定時刻は九時三十二分。


 その二分。


 誰も彼女の部屋に入っていない。

 密室。


 毒は彼女の体内。

 事前に飲んだ。


 九時二十八分以前。

 僕と会う前。


 なら彼女は自殺するつもりだった。

 だが装置を渡した。

 観測を続けろ。

 自分の死を観測させるために。


 なぜ。


 実験。彼女の研究。

 記憶補完アルゴリズム。


 死後の観測。

 死者を観測者にする仮説。

 自分の死をログとして残し、観測者に解釈させる。


 死後観測実験。倫理違反。

 だからサーバーに残さなかった。


 ローカルに。

 僕だけが見る。

 僕だけが観測する。


 彼女の死は実験。

 僕は被験者。観測者。

 同時に被疑者。


「霧島」


 僕は言う。


「君は九時三十一分に権限を剥奪した」


 彼は頷く。


「君が自分でやった可能性を排除するためだ」


「なぜその時刻に?」


 彼は答えない。

 沈黙。


「君は彼女の実験を知っていた」


 僕は言う。


「仮説は聞いていた」


 彼は言う。


「止めなかった」


「止められなかった」


 彼の声は低い。事実だろう。

 彼女は止まらない。


 だが。


 権限剥奪。

 ログ改竄可能時間。

 九時三十一分から九時三十三分。

 その間に何ができる?


 サーバーログの書き換え。

 カード認証の削除。

 僕の入室ログを消した。


 なぜ。


 僕を守るためか。自分を守るためか。

 論理は二つに分岐する。


 A:彼は僕の無実を信じ、ログを消した

 B:彼が犯人で、僕を犯人に見せかけないためにログを消した


 どちらも可能。証拠は装置だけ。

 装置は僕と真白の会話まで。

 その後はない。


 観測は僕に委ねられた。

 僕が結論を出す。観測者の責任。

 僕は霧島を見る。

 彼は動かない。


「君は彼女を殺していない」


 僕は言う。

 彼の目が揺れる。


「彼女は自殺した。実験のために」


 沈黙。


「君はログを改竄した」


 僕は続ける。


「僕の入室記録を消した。僕が疑われるのを防ぐために」


 彼は目を閉じる。


「君は観測者を守ろうとした」


 僕は言う。

 彼は小さく頷く。

 それが答え。犯人はいない。


 被害者は真白。

 共犯者はいない。

 だがログ改竄という罪はある。


 霧島。


 彼は犯罪者だ。

 だが殺人犯ではない。


 僕は装置を握る。観測を続ける。

 彼女の実験は成功した。

 死者が観測者になり、生者が観測を継承する。


 ログは絶対ではない。観測が絶対になる。

 僕が観測する限り。彼女は消えない。

 ログに残り続ける。


 僕の中に。


 観測しているのは誰?

 僕だ。


 そして。


 彼女だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ