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安心できる教室の説明

「では、説明を始めさせていただきます…その前に、酒井から今後の予定について、ひとつ確認し忘れたことがあったので、少し聞いてもよろしいでしょうか…?」


高梨さんは、手元にある薄い紙の束(確か、パンフレットと言ったと思うけど)を開きながら、母に視線を向けた。

母は、なんでしょうか。と首を傾げた。


「朝、何時ごろに食べられれました? もし、早い時間に召し上がったと言うことでしたら、うちの調理スタッフが皆さんのお昼も一緒に用意しますので、聞いてきてくださいって、言ってまして……」

「あぁ~、多分、朝の8時頃だったと思うわ。途中、ドライブスルーで朝マクノを買って食べたもの……」

「……まぁ、それぐらいだな」


お母さんがそう言うと、お父さんも時間を見ながら、頷く。2人は、どうしようか、と互いの視線を交わしあった。

「それでしたら」と、高梨さんは、ポケットから白い小さな電話を取り出した。


「今、お昼の仕込み中ですので、よろしければ、食べて行ってください。子どもたちが普段、何を食べているの。よかったら、体験してみたら、いかがですか?」

「そうだな。どう思う?」

お父さんは、そうお母さんを見ると、母はコクりと頷いた。


「いいんじゃない。お母さんには夕方までかかるかもって、言っといたし、どうせ、途中で食べに行く予定だったじゃない」

そして、なぜか、私の肩を掴んで、お母さんは言った。

「……この子、普段小食のくせに、あそこのエッグがとても好きで、私のと一緒に2個も平らげちゃったの…! だから、そんなにお腹減ってないと思うのよね」

(―――お母さん、余計な事言わないで!!)


私は、心の中で、母に文句を言った。

頭の中に言い訳のような、色んな言葉が生まれては消えた。


(―――いや、別に少食じゃなくて、好きな味と苦手の味がはっきりしているだけだから……。

私は、うどんやお吸い物のような少し味がするぐらいで十分なの!!)


だけど、濃い味が好きな母は、こってりとしたこい味にする。妹は、喜んで食べるのだけど、私は、牛乳で口を薄めないと一食食べきれない!!


昔、母に「私もお父さんやお母さんみたいに薄味にして」といった――だけど!


「お父さんやお母さんは、大人で、病気になっちゃうから薄くしているの。あなた達は、体を作るために、もっとしっかりした味付けの物を食べないとダメなの」

そう言われ、結果、私の牛乳を飲む量が増えた―――だから、私が少食なんじゃなくて、お母さんの味付けが濃いせいだ。


(お婆ちゃんみたいに、小魚やきのこで味を整えてほしいのに……)

そんな私の内心のアレコレを知らずに、高梨さんは、小さく笑った。

そして、手元の小さな電話を指で押し、ピピピと音を鳴らした。


「……分かりました。では、量は少し少なめにしておきますね―――うちの子たちは、みんな、たくさん食べるので、足りなかったら、お代わりしてください」

「そうですか、わかりました。よろしくお願いします」


そう言い、父が頭を下げると、高梨さんは電話に向かって、話し始めた。

後ろのドアも開けて、頭の上に大きな輪っかを作った。

すると、壁の向こうから、「は~い!!」と返事が聞こえた気がした。


その声を聞き、電話を終えると、高梨さんはこちらを振り返り、身体を起こした。そして、先ほど置いたパンフレットを指差した。


「……では、改めまして、当学園について、説明します…」

「…学園。施設ではないんですか?」


父が、おかしいという顔でそう言うと、高梨さんはパンフレットに指を置きながら、顔を上げた。


「…えぇ。ただ、私たちは、『学園』。もしくは『スクール』と呼んでいます。それは、ここは『子どもたちにとって一番安心できる教室』。そういう()()()()()を抱えている子のもう一つの居場所となる『もう一つの学校』。という意味をもつ場所にしたいと考えているからです」


そう言うと、高梨さんは一度口を閉じ、ゆっくりと息を吐き出した。

その声は、とても透明で、優しい音がしたような気がした。


「お父さん、お母さん。お子さんにサイズが合わない靴を履かせたことは、ありますか?」

「……え、えぇ。まぁ、子どもはすぐ大きくなるのでね」

「そうねぇ―――この間も、つい新しい靴を買い忘れていて、気づかずに、前の靴を下駄箱から出したことがあったのよねぇ」


突然、高梨さんは別の話をし始めたため、お父さんもお母さんも一度お互いの顔を見たあと、クスクスと笑いあった。高梨さんも、ありますね。と言いながら、小さく頷いた。


「……ここに通っている子どもたちは、履き慣れない靴を履いた。もしくは、『既製品』より少し足の形が違う子たちが、自分の合う靴を探す場所なんです。『施設』というと、どうしても『子ども自身に問題があった』り、『親の教育のせい』という冷たい意味が出てしまうんです」


そう言うと、高梨さんは、パンフレットの文字を指でなぞりながら、言った。


「でも、ここに通っている子達は、学校や友人、周囲の環境に上手く溶け込めなかったり、わからなかったりと『それぞれの理由』で生きづらさを抱えている子が、『塾』や習い事を学ぶ形で、その子に合う方法で身につける『新しいスタイルの学校』――――それが、ここ『滝野川支援学園』となります」


そう言い、高梨さんは、ページを一つめくり、建物全体がのったページを開いた。

お父さんもお母さんも頷いたり、なるほど~と言ったり、小さな声を出すだけで、何も言わなかった。ただ、その声が、とても固く、耳に棒を入れたような嫌な感じがした。


「ですので、ここでは、社会生活を送る上で必要な『自信』『自尊心』『自己肯定感』『安心』を育むために何が必要かを考え、そのために必要な建物や設備を整えています。確かに、制度上は『心理治療院』や『支援学校』とはなりますが、理事。いや、学園長が医者で、運営元が隣の『桜田川総合メディカルセンター』が運営しています。そのため、『治療と教育とリハビリを総合的に受けられる教育の場』として―――」


そう言い、高梨さんは、各施設について、説明を始めた。

ただ、私は、話を聞きながら、段々と頭がボーッとして、少しずつ、どうでもよくなっていくような気がして―――音が遠のいて、何かに水の薄い壁が目の前にあるように、少しぼやけていった。


ただ、父が、そこで使われている道具や機械、勉強について聞き、母は、子供の生活、どんな親が利用しているのか。そんな話をしているのは、聞こえた。




(―――鼻が痛い)


なぜか、急に痛みとちょっと焦げ臭い臭いがした。黄色と濃い青のような暗い色が、目の前をゆらゆら揺れているように見えた。そして、私は、息が重い感じがした。


要するに、私のように話せない、聞けない、他の人と同じような生活をできない人に対して、学校とは違う沢山の大人たちの道具や機械、薬を使って、できるようにする場所。


(―――なんか、壊れた玩具みたい……)


そんな風に思った。

だが、次第に、私を置いてきぼりで、大人たちだけで話が続いているのが嫌になった。


疲れているというのもあるけど、それ以前に、誰も私が悪くないとは言ってくれていない。

更に、結局私をのけ者で話が進んでいる。つまり、結局、”私がおかしい”からここにいるということ。

別に、”普通”だとは思わない。でも、あの子たちもおかしかったと思う。


例えば、同じようにうまく話せないから一緒にいるだけなのに、卑わいと言われたり。言いたい言葉を思い出そうとしているのに、『一緒に遊ぶ気がない』と言ったり―――いや、それ以前に、貴方も先生に同じこと言われているのに、なんで私がしていることにされているのだろう。


その時間、私は本がいっぱいある所にいたのに、クラスで悪いことをしている。そして、先生もそれを見ていたはずなのに、少し前に前を通り過ぎたはずなのに、そういう事を言う。


ねぇ、そういう嘘つきがここにはいなくて、なんで私がここにいるの!!

そんなに話せないって、おかしいの!

みんな、喋らなくても伝わる。「目を見ればわかる」って言うじゃない。

でも、それなら、私じゃないって、なんでわからないの!!!




「それじゃあ~、そろそろ! 学園の案内を始めましょうか? 難しい話は、澪ちゃんも退屈だったでしょうし」


そんな風に、私が昔のこと、嫌なこと、辛いことに記憶を飛ばしていたら突然、後ろの扉が開き、酒井さんが顔を出した。

途中から、『ザーザー』とテレビが壊れた時の嫌な音が聞こえ始めていたような気がしたので、酒井さんの声で、それが聞こえなくなった。

そのことに、私は、小さく息を吐き出した。


「……あら、もうそんなに時間経ったの?! 申し訳ございません。説明が長くなりまして……」


そう言って、高梨さんは頭を下げ、お父さんもお母さんも、何か言いながら、同じように頭を下げた。

その瞬間、目の前に白い煙のような何かが通り過ぎたように見えた。


(…………?)


私が、頭を少し傾げると、父も母も立ち上がり、父だけ先に部屋の入口に向かった。


(……私のばんだ)


私が立とうと、椅子を下げると、気づいた。あ、机の角が邪魔で立ち上がれない。

背が低い私は、喉や顎が机に当たる。そう思い、椅子から滑り降りるように机の下を抜けて移動した。


「ちょっと、何をやっているの!!」


お母さんの慌てたような声が聞こえた。私は、仕方ないじゃないと、声を上げようと口を動かして、母が頭を下げる姿が見えた。


「すみません。はしたない子でして」


そう言って、母は、酒井さんと高梨さんに頭を下げた。二人は、笑った。


(―――絶対、目の前のこのハキハキ話す人は、そんな悩みを持ったことが無いような気がする)


視界に入った高梨さんを見て、そう思う。だが、胸がさらに痛くなった。


「いえいえ。背が低い子は、みんな頭をぶつけないように、椅子の隙間に逃げるんです。それに、女の子はスカートにしわが残らないよう、そう降りる子もいます。仕方ないですよ」


そう言い酒井さんは笑い、お父さんは、優しく私の手を引いた。

私が、部屋を出ていくと、椅子を直し一度戻り、部屋を出た。


私の口の中で歯が、2、3回鳴らし、力を入れる。

正直、大人のこういうやり取りは、本当によくわからない。


母が部屋を出て、遅れて高梨さんが、部屋を出た。

明るいところの高梨さんは、身長は少し低く、お母さんと同じぐらい。

少し暗めの青いのシャツに黄色い、いや土色の少し薄い(ようはベージュ色)のズボンという姿だった。(この中では酒井さんが高く、その上にお父さんという感じだ)


「では、こちらです」


そう優しげで、少し高い、キーキーする声で高梨さんが言った。

ただ、何故かその声は、まるで、”私は絶対間違えません”というような、そんな声に聞こえた。


「今はまだ授業中ですから、体育館から回りましょう。その後、校舎に生活棟。最後に静養室です」

「静養室とは、子供たちが疲れたり、落ち着きたいときに行く部屋でしたっけ?」


母がそう尋ねると、高梨さんが頷きながら、「そうです」と答えた。


「でしたら、この子を少し休ませてはもらえませんでしょうか。もう二時間以上動きっぱなしなので、ちょっと休ませたいんです」


母が、私の肩に手を置きながら、ゆっくりと(少し優しい響きに聞こえる)声で言うと、酒井さんが、後ろから「申し訳ございません」と頭を下げるのが見えた。


「静養室は、基本心理カウンセラーか、訪問で来られる医師しか鍵を持っておらず、私たちでは判断出来ないんですよ。先ほど、もしかすると必要かと思い、見に行きましたが、現在、使用中の札がありましたので、今誰かが休んでいる状態なんだと思います」

「そうですか。でしたら、仕方ないですね」


「でしたら、体育館を寄った後、先に生活棟を見て、そこで静養室に参りましょう。静養室は、この建物の裏手にあり、グラウンドに誰もいないのでしたら、すぐ戻ってこられます。体育館の一階に、休憩スペースもありますので、そこで休むのでもいいですし」


高梨さんがそう言うと、母は、顔に手を当て、「そうね~」と考える時の声を出した。私は、母の服を軽く引っ張り、大丈夫という意味の小さく頭を動かした。


「澪ちゃん・・・大丈夫? 少し頑張れる??」


母は、私に視線を合わせるように体を倒し、少し顔が怖がったような、震えたような顔を浮かべた。

すると、酒井さんが、母の反対側にしゃがみ込むと、言った。


「無理しなくていいからね。出来なかったら、ちょっと騒がしいけど、生活棟のリビングっていう手もあるの。大丈夫?」


私は、その言葉に口を何度か開け閉めして、ゆっくり頷いた。それを見て、母は「もう少し頑張れそうです」と言い、後ろから小さく息を吐く音が聞こえた。


(もしかして、この人は、先生のように話さないわけじゃないのかな?・・・でも、女の人は、その場の思い付きで、勝手に決めて、勝手にする。私もそうだし、あの子はそれで嫌な思いをしたって言ってた)


話が終わると、父と高梨さんが、正面玄関の扉を開け、私たちがやってくるのを待っているのが見えた。それに気づいた私と母、酒井さんは、一緒に開けてある扉を抜けた。母は、私の手を引き、私もその手を両手で掴みながら進んだ。全員が、外に出ると、高梨さんが、私たちが出た建物を指差しながら、言った。


「こちらは、自宅から通えない子や親元から離れて生活する子どもが住む『生活棟』です。一階が、食堂兼相談室。二階が生徒たちが住む学生棟なって、男女に分かれて職員と総勢20名の生徒が共同生活をしています。中には、両親の仕事が忙しくて、その日帰れない子が泊まる一時居室もあるので、もし使う際には声をかけてください」


高梨さんの説明を聞きながら、ふっと校庭の大きな声に視線を向けた。

校庭には5、6人の私と同じぐらい、もしくは少し上ぐらいの子たちが集まって、運動をしていた。


何を言っているのかは、わからない。でも、とても大きな声で「がんばれ!!」「はしれ! はしれ!!」と叫んでいるように聞こえた。

私は、心臓が掴まれたような苦しさと少し楽しそうと思う気持ちが胸に広がった。でも、次第に苦しさのほうが強くなり、何とか追い払いたくて、お母さんの手を強く握り、視線を父に向けた。


(我慢しないと、我慢。大丈夫。大丈夫・・・)


そう心の中で呟き、他の建物も見る。建物はコの字になっていて、|が校舎。私たちがいるのは、この最後の横棒の端のところだと、先ほど高梨さんがパンフレットを開きながら、説明をしたことを思い出す。


「では、体育の授業ですが、今日は人数が少ないので、端を通って、体育館に向かいましょう」


そう言って、私とお父さん、お母さんは、高梨さんが下りていく階段を追って、校庭に向かった。酒井さんは、ゆっくり、お母さんと私のペースに合わせる形で横を歩いた。


すると、私が地面に降り立った瞬間、横から「こんにちは」という大きな声が聞こえ、私は思わず、母の後ろに隠れた。母もそんな私を、まるで抱きしめるように両手で囲い、「大丈夫だよ」と言いながら、ゆっくりと声のしたほう(校庭の反対に)に向かい、頭を下げた。


父は、「授業中、申し訳ありません」と言いながら、頭を下げ、他の2人は「お疲れ様。頑張ってください」と声をかけた。すると、向こうから「ありがとうございます!!」という大きな返事が聞こえた。


「元気ですね」


そうお父さんが言うと、高梨さんが小さく笑った。


「ええ。この子たちは、別に何か問題があって、ここに来た子じゃないんです。周りに話すチャンスが無かったり、言葉を知らなかったり、親がそれを教えてくれなかったり、環境がそれを許さなかったり、そんな子たちです。ですから、普通のどこにでもいる子たちなんです。澪ちゃんも、ここで学べば、そういうチャンスを身につけるようになるはずです」

「そうですか。そうなれば、嬉しいですね」


父は、少し笑いながら、そう言った。


でも、私にはどうもそうには思えなかった。だって、ここで声を出した子たちの中で誰も、そういうのを怖がってたり、そういう子がいないじゃない。


だから、私みたいに話せない子じゃなくて、話したらうるさがれたり、話過ぎる子とかも一緒と言う事じゃない。それって、私とは全く反対。そんな子と一緒に何とかなる気がどうしても出来ない。そう思わずにはいられなかった。


「こちらが体育館となります。先ほども説明しましたが、運動は2階となっており、1階はトレーニングエリア。医師やカウンセラー、教師が話し合って、必要と判断した言葉の勉強、移動の勉強、友達の作り方なんかを勉強するためのスペースとなります」


高梨さんがそう言い終わった後、突然後ろからピピピという小鳥が鳴いたような音が聞こえ、私はついつい振り返ってしまった。よく見ると、お母さんもお父さんも、みんな振り返っていた。


「すみません。主任からの電話です」


音に気づいた酒井さんは、電話(先ほど高梨さんがポケットから取り出した四角い小さな箱)を取り出して、画面を見ると、そう言って頭を下げた。父が、「構いません。出てきてください」というと、酒井さんはもう一度頭を下げると、私達から少し離れた場所へと移動した。


「・・・はい・・・はい」


そんな酒井さんの小さな、それこそ、周りの声に消えてもおかしくない声が聞こえた。


(なぜだろう。校庭の声も大きいのに)


私がそんなことを考えていると、酒井さんが電話を両手で包むように隠しながら、私達のもとに戻ってきた。


「どうも、すみません。今、事務の方から連絡が入り、『戸越が予定より早く診察を終え、こちらに顔を出す』と連絡があったそうです」

(そうか。お父さんのお友達、もう終わったんだ)


私は、少し気持ちが軽くなったような気がした。でも、その後の言葉に、また嫌な気持ちになった。


「それでしてね。『まず先に、ご家族から詳しい話を聞いておきたい』と言っているんですが・・・いかがなさいますか? この後の予定は、お父さんかお母さん、どちらかの付き添いがあれば、問題ないと思うのですが・・・」


そう酒井さんは、少し目を小さくして、声を落として言った。この声は、記憶にある。よくドラマや映画で『申し訳ない時にする顔だ』。可哀想な、ちょっと愛らしいような、そんな小さな動物を思い出すような顔。

(美人がすると、何でも絵になるんだな)


私は、そんなひどい事を考えた。すると、両親は互いの顔を見つめ直しながら声を出す。


「・・・どうする? 絵美が行くか?」

「私は無理よ。冷静に話せる気がしないもの」

「じゃあ、俺が行こうか。この間、俺に話した内容で大丈夫か」

「えぇ、大丈夫よ。でも、出来たら、この子が辛い思いをしないように言ってあげてね」

「大丈夫! そもそも辛い思いをしているのは澪だ。大丈夫、戸越先生なら、学校の先生のように変なことは言わないよ」


そう言い、父は酒井さんに向かって声を出した。それを見て、酒井さんも頷き、電話先に向かって、何か話しているのが聞こえた。


「お願いね。頑張ってきてね」


そういう母の顔は、少し震えているように見えた。怖さと“大丈夫だろうか”という気持ちがまぜこぜになった顔。多分、お母さんも一緒なんだ。そう思うと、少し心が軽くなったような気がした。

頭に温かい重みがあった。見上げると、父が私の頭を撫でてくれた。


「じゃあ、お父さん。頑張ってくるな」


そういう父の手を私は一度、強く握った。それで伝わったのか、父は満面の笑みを浮かべ、酒井さんと一緒に校舎の方へと向かっていった。


長くなり、すみません。

ただ、個人的には、これぐらい長いほうが読み応えがあるというか、落ち着きます。

もしよろしければ、コメントをよろしくお願いします。


さて、次は、体育館の案内となります。

出来ましたら、後書き、前書き、どういう話がほしいなども、よろしければ教えてくださると嬉しいです。

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