貴族に会うための服を
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ボッテンハイム子爵家が没落した。その速報が飛び込んできた。獣人たちがやってのけたようだ。村では、その話で持ちきりである。……まだ税を収めていないんだ。秋の初め頃だからな。麦の収穫を終えるのは、もう少ししてからだ。だから、どうしていいのか迷っていると言ったところ。正直、村人には恩恵があるのか、そもそも害しかないのか、よく解っていないからな。ただ、ボッテンハイム子爵家の課す税金は、7割。暴利ではある。が、割とこんな感じの領地が多いのも確かなんだよ。酷い所だと9割持っていかれる。植民地? 植民地は、食べる分と来季の植える麦、以外の全部を回収する。それくらいの事は普通にやっている。この領地が特別な訳ではない。酷い所は探せばまだまだ沢山あるんだよ。そんな感じだからな。村人の関心も、次の税金がいくらになるのかと言う事でいっぱいだ。
「次の税金はどうなるんでしょうか。あたしも税金を取られる側なので、結構ドキドキしています。今までは7割取られていたから、思ったよりも残らなくて……」
「うーん。良くて3割、悪くても5割くらいまでには下げるんじゃないかな」
「そ、そんなに下がるんですか!?」
「多分だけどね。そこまで獣人のコミュニティってお金がない訳ではないんだよ。だから、そっちからもある程度入ってくるだろうし、俺も多少包んで持っていくからね」
「包んで持っていくって、お金をですか?」
「そう言う事。まあ、ある程度は心証を良くしておかないとって目的もあるんだけど、錬金術師は税金を支払わないからね。こう、何かある時には、包んで持っていくんだよ。今回はおめでたい事があったでしょ? だから持っていく。錬金術師を贔屓にしてもらわないといけないからね」
まあ、どの錬金術師でもするのかって言われたら、しないんだけどな。師匠なんかは絶対にしないし。俺みたいな新米がやる事だ。是非とも錬金術師を贔屓にして下さいってな。……まあ、エレミーさんから話は聞いているんだけど、テッケルンの錬金術師のお店は、1つになってしまったからな。獣人たちが、錬金術師の店を潰して回ったから。これを機に、綺麗にするんだって言って、潰したらしい。そこから大量の資金を引き上げている筈なので、まあ、こっちから見たら、仲間に思わないでくれって意味もあるんだけど。その辺は獣人たちには伝わっているはずだけど、念のためにな?
まあ、必要のない錬金術店を潰したのは英断だ。腐敗する場所は、初めから切り捨てておくに限るからな。新体制を敷くんだから、今までの枠組みで、食い込んできていたものは掃除した方が良い。ただ、商人にそれをやると、色んな噂が流されるから、商人が寄り付かなくなる恐れもある。だから商人は放置して、元凶である錬金術師を潰しておけば、離れる商人は離れていくだろうし、そこの穴は獣人の商人たちが埋めていくことになるだろう。確実に儲けを出すために、色々としてくれるはずだ。
だから、新体制の懐具合は、そこまで悪いものじゃないとは思うんだよ。悪徳錬金術師を3つも潰したんだから、白金貨3000枚くらいは入ってきているはず。それに、そもそもボッテンハイム子爵家が貯め込んでいただろうから、そこまで余裕がない訳ではないはずなんだよ。そもそも税金を大量に使うって事が無かっただろうしな。これからは使うんだろうけど、そこそこで良いんじゃないかな。無駄に使わなければ、税金が3割でも十分にペイできる。それに、国からの補助もあるんだ。そこからも回収できるだろうし、そこまで問題にはならないはずだ。
まあ、シレバクリームを、商人が扱い始めれば、一気に回収できるんだけどな。保存瓶1つで5ケタの白金貨が動く。簡単に言えば、美肌クリーム。塗ると真っ白な肌が手に入る。そんな機会を逃す訳もなく。確実に売れる商品なので、税金関係は、もうあんまり気にしないでも良いんじゃないかなって思うんだ。そんな値段でも、飛ぶように売れるだろうし。
平民からちまちま取るよりも、大きな商人からがっつり取った方が楽なんだよな。どうせ農民の稼ぎを搾り取ったところで、白金貨10枚にもならないんだから。農民の税金を下げて、商人の税金を上げれば、解決するはず。……逃げる商人は逃がせばいい。商人からは5割くらいの税金を取れば十分だ。本拠地をテッケルンに置いている商人だけに、シレバクリームを売れば良い。それで税金関係は解決するはずだ。……今頃、王都では、旧ボッテンハイム子爵家の領地に、サラマンドラが出たって噂が流れているはずだ。師匠が上手くやってくれている筈である。こういう時は、老獪な師匠に任せておけば良いんだ。上手く誘導してくれるはずだからな。
「それじゃあ、俺も暫く留守にするから。お店は念のため、開けておいてくれるかな? 鍵は渡してあるし。レジエナと仲良くやってくれ」
「はい。どのくらい開けるんですか?」
「とりあえず、3日くらい? 長くはならないとは思うから。長くなるようなら、……どうしよう。まあ、とりあえず、そのくらいには帰ってくるよ。冒険者も少ないから大丈夫だとは思うけど。……まあ、今じゃあ、下手な冒険者よりも、エレナちゃんの方が強いんだけどね。生意気な事を言ってきたら、叩きのめしても良いから」
「ほ、程々にしておきますね?」
そんな訳で、移動だ。目指すはテッケルン。とにかくまずは、服を仕立てて貰わないといけない。特急仕上げでお願いしたい所だな。今は秋口だから、フェンリルの毛皮を使った、一張羅を作って貰わないといけない。貴族の前に出ても、恥ずかしくない様な恰好をしなければならない。まあ、形式上は、って感じだけどな。錬金術師であれば問題ないとは思うんだけど、こういうのは舐められたら駄目なんだよ。俺が平民で、普段着で会いましたってなったら、貴族側が舐められる。そう言う事は避けないといけないんだよ。面倒だけどな。
とりあえずは、エレミーさんと合流。情報交換も兼ねている。まあ、まずは仕立て屋で、良い所を紹介してもらわないといけないんだけど。恥ずかしくない恰好で挑みたいし。お土産もちゃんと持ってきているから問題ない。紹介料は必須だよね。
「こんにちは。エレミーさんは居ますか?」
「エレミー! サンルーグ君が来たよー!」
「今行くわ」
「だってー。ちょっと待っててねー」
「はい。ありがとうございます」
ちょっとだけ待つ。直ぐに来てくれることは解っているからな。
「あら? 思ったよりも普通の恰好で来たのね。これから新しい貴族様に会いにいくんじゃないの?」
「いや、そうなんですけどね? 着ていく服が無いんですよ。自分で作っても良いんですが、その、生憎と、デザインにセンスが無くてですね。素材を持ち込みで作って貰える仕立て屋が無いかと」
「ああ、それで私の所に来たのね。ちょっと待って。地図を描くわ」
「すみません。急ぎなので」
「良いわよ。はい、これが良い仕立て屋よ。また後で寄っていくんでしょう?」
「そのつもりです。では、行ってきますね」
そんな訳で、仕立て屋に直行。腕がいいのは良いんだけど、特急仕上げで、どのくらいの早さで仕事をしてもらえるのかだよな。ある程度センスが良い服装って、どういうものなのかがよく解っていないんだけど。貴族の前に出ても失礼が無い服装でってなると、3日くらいはかかるんじゃないかなって思っているんだが。
「いらっしゃいませ。ようこそいらっしゃいました」
「すみません。特急仕上げでお願いしたいんですが、大丈夫ですか?」
「お値段がかかりますが、よろしいでしょうか?」
「大丈夫です。新しい貴族様が見えますよね? それで挨拶に行きたいんですが、着ていく服が無いのです。素材はこちらで用意しました。これを使って出来るだけ早く、そして、貴族様に会うために、恥ずかしくない服装でお願いします」
「素材の持ち込みですと、それなりのお時間を貰います。……それか、本当に高いですが、白金貨5枚であれば、1日で作成が可能です」
「では、これで。今から採寸するんですよね?」
「お任せください! 特急仕上げ入ります!」
わあーっと、裏から声が聞こえてきた。そう思ったら、5人くらいの人に囲まれて、細部まで寸法を測られた。今している仕事は一旦中断。全精力をこっちに向けるって意味だろうからな。しかし、1日か。これは徹夜コースだな。俺には解る。無茶ぶりには慣れてる。俺もそう言う時期があったからな。……前世でも、今世でもな。
そんな訳で、落ち着いたので、とりあえずエイミーさんの所に戻ることに。お店の場所は覚えたので大丈夫だ。明日に取りに行けば良いんだ。……多分だけど、同じ時間位にいけば良いとは思うんだがなあ。
「とりあえず、特急仕上げでお願いしてきました」
「まあ、そうなるわよね。明日には出来るんでしょう?」
「ええまあ。早いですよね。思ったよりも早くできるって聞いて驚きました。まあ、その分値段は張りましたけど」
「そう? サンルーグ君に取っては誤差の範囲内でしょ? それくらい稼いでいるんでしょうし。知ってるわよ? 奴隷を買って、採取させているそうじゃない」
「あれ? そんな事言いましたっけ? まあ、そうなんですけど。冒険者をやらせて、採取をしてもらっていますね。どうしても討伐に偏るので。採取の冒険者はあまり来ないんですよ」
「そもそもあまり居ないものね。でも、そこまで素材が足りないの? ……って、今度は何を研究しているのかしら? 研究で素材が飛んでるんでしょ」
「あはは、当たりですね。研究していると素材が無くなるんですよね。まあ、1つは作り終えたんですけど、どうにも受けがよろしくないというか、別に必要ないんじゃないかって物が出来たんですよね。いや、狙い通りなんですけど、金額が高いのと、素材が高価なので、普通に作れないんですよ。でも、貴族相手にも売れないでしょうし、まあ、作り損ですね」
「呆れた。作り損なら、途中で止めなさいな。大方、楽しくて止まらなかったのね。まあ、気持ちは解るけど。それで? 何を作ったの?」
そんな訳で、エアコンの説明をしばしばと。機能は素晴らしいんだ。出来も素晴らしいんだ。コストがなあ。そこまでするなら、普通にそれ専用の服を作ればお終いなので、それで良いじゃないかって感じである。それよりも、副産物でエアコンペンダントを作ったって事の方が重要だとは思う。こっちなら、コストはそこまでかかっていないからな。……妖精の羽が絶対に必要なんだけどな。空間属性の素材が絶対に必要だったんだ。だから、作っても、量産は出来ないし、デザインも自信が無いから、宝飾品としても売りだせない。平民には高すぎてちょっとという感じである。会心の出来ではあるんだけどさ。
「……必要ないし、そもそも服で良いじゃない。冬に薄着を着れるのはいいかもしれないけど、そんな事って必要ないでしょう? 一定数の需要はあるとは思うけど、研究費は返ってこないわね」
「まあ、そうなりますよね。便利なんですけど、コストが。どうしても妖精の羽を外せなかったんですよね。これが外せれば、農民でも使えるんですけど」
「それ以前に、冷却帽子を流行らせたのはサンルーグ君よね? 既に夏場の対策はしていたんじゃないの? その為の冷却帽子でしょう?」
「いやまあ、そうなんですけど。暑すぎて我慢が出来なかったんですよね。……まあ、自分用としては作ってあるので、それで良いかなと。まあ、費用は馬鹿みたいにかかりましたけど、殆ど自前で採取してきたものですからね。現金では、そこまで費用はかかっていないんですよ。……時間はかかりましたけど」
「必要の無いものにかける時間が無いわ。自前で素材を用意したから、余計に止まらなかったんでしょうね。気持ちは解るけど。そう言えば、魔物の大暴走が起きたって話を聞いたけど、大丈夫だったの?」
「ええ。大丈夫でしたよ。まあ、これからが大変だろうとは思いますけどね」
「あら? そうなの? 何が出てきたの?」
「ハイドサーバルとアッシュサーバル、サラマンドラです」
「……サラマンドラ?」
「ええ、サラマンドラです」
「……情報が漏れない訳ね。ボッテンハイム子爵家に聞かれたら、絶対に動いていたわよ?」
「まあ、そうでしょうね。利益を考えれば、絶対に動いていたでしょうね。何せ、白金貨が束で動きますから。あ、これがシレバクリームです」
「でしょうね。私でも作るわ。作らない訳がないもの。……あー、もしかして、錬金術師を狙ったのって、これもあるのかしら?」
「いや、これは知らせてないですからね。今回の謁見の時に知らせようかなって。……物自体を知っていたのであれば、襲撃したのは確信犯ですけど」
「確信犯ね。確定よ。まあ、獣人には要らないでしょうけど。毛並みを整える訳では無いもの」
「まあ、そうなんですけどね。……サラマンドラが出た時点で、商人なら知っていてもおかしくないか。一応は黙っていたんですけど」
色々な目的があったんだろうけど、シレバクリームも知っていたんだろうな。売り物にはなるんだし。金になるなら、自分たちが使わないものも知っていて当然か。獣人だからって、買い叩かれる心配は無いけどな。その辺は師匠が釘を刺すだろうし。
「あ、色々とお土産があるので。色々と貰っておいてください。混乱はすると思うので、迷惑料だと思ってください」
「受け取るわ。絶対に私の所にも聞き込みに来るもの。サラマンドラの肝油に、皮、鱗、アッシュサーバルの毛皮に魔石、……フェンリルの毛皮?」
「ああ、それは元々いましたよ。奥地に行ってみれば、普通に居ました。今回の件とは無関係ですね。前々から居たっぽいです」
「はあ……。精霊が2種類も出てくる狩場なんて、一種の上がり状態よ?」
「まだ亡者の鉱山都市ベルンケラーが残っているんですよね。有難いことに」
「それを獣人の手で開発させるのね。国が動くかもしれないわよ?」
「そこは師匠に釘を刺してもらいました。迷惑料に幾らか素材を要求されましたけど」
「……クエスエーレ様が動いたのね。それじゃあ手出しは出来ないわね」
「まあ、大丈夫だとは思いますよ? ……近々ベルンケラーまでいかないといけなくなりましたけど。まあ、時期的には誤差みたいなものですけどね」
「まあ、行くなら気を付けてね」
「まあ、無事には帰ってこれるとは思いますよ。鉱石を採取するだけの時間は無いとは思いますけど。とりあえず、様子を見に行ってから、対策装備を揃えないといけないですし」
「……対策って、聖属性よね? そんな場所あったかしら?」
「俺のユニークスキルを使います。ユニークスキルを使えば、何とか調達は可能なので」
反転は便利だぞ。かなりレアなユニークスキルらしいけど。そもそも俺以外の反転使いって知らないからな。……それで師匠は酒を作れって言っているんだから、おかしなものだ。普通にもう少し有効的な使い方があるだろうに。師匠にとっては酒が一番なんだろうなとは。それに付き合う俺も俺だとは思うけどさ。




