表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反転の錬金術師  作者: ルケア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/48

スタンピード開幕

OFUSE始めました。

https://ofuse.me/rukea


ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。

https://rukeanote.hatenablog.com/


さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。

https://twitter.com/rukeanote

 静かな森だ。普段はこんなに静かじゃない。もう少し騒がしいはずだ。ゴブリンやコボルトの気配がするはずだ。それが一切感じない。……来る。もう少しで、ホーンデッドラビットの大軍が押し寄せてくる。どのくらいの規模なのかは解らない。だが、72時間耐えれば終わりだという、安心感がある。気休め程度なんだけどな。ここから先は、地獄の入口だ。それが今、スタンピードという逆流が起ころうとしている。


「覚悟は決まっているな? ここで俺たちが死ねば、負担は後ろに行く。それは避けなければならない。同朋たちに、負担を押し付けるのはよろしくない。サンルーグ、お前は何処まで出来ると思う?」


「何処までも無いだろう。完全勝利以外は認めない。そうだろう? 俺も72時間死力を尽くす。魔力も大丈夫だ。魔力切れになっても、魔力ポーションも作ってある。流石に身体能力強化魔法リミットブレイクを使える時間は限られているが、出し惜しみは無しだ。出来るところまでじゃない。出来ない所にも手を伸ばす。……ただ、簡単に死ぬという言葉を出すな。本気で死ぬ気で止める時は、まだ今じゃない。まだその時じゃない。死に場所を間違えるなよ?」


「へっ当然。こんな所でくたばってなんかやるものか。同朋と、何不自由なく暮らしていく。それを達成させるまで、俺はこんな所では死ねんのよ」


 ……こいつ。フラグじゃねえだろうな? まあ、死なないっていうなら、信用するしかないけどな。死んでも屍しか残らない。それなら、片腕が捥げてでも、勝利を掴んだ方が良い。泥臭く生き残った方が有意義だ。生きていれば、何だって出来るんだからな。


 さあ、来るか? 空気的には何時来てもおかしくない。異常な空気だ。淀みが大きく、また渦巻いている。魔力の流れがおかしい。何というか、いつもとは違う魔力が流れ込んでいる。もの凄く強い闇の魔力だ。これから起きることは、それだけのものなのだと言う事を教えてくれている様で、容赦もしないと言われているような感じだ。


「……さて、来るぞ。俺もウルフたちを召喚する。俺たちがまずは止める。その後に抜けていった奴らを処理してくれ。それと、マジックバッグはちゃんと持ってきているな? 死体はなるべく回収しろ。足場が悪いと、こっちが負けかねん。向こうは常に狂化状態だ。進むことに特化している。容赦なく屠れ。そして、出来るだけここで止める」


「……臭いが変わった。濃密な獣の臭いだ。来るぞ。サンルーグ、全力でやってやれ」


 言われなくても全力だ。魔法はイメージ。魔力は最大。威力も最大。範囲も最大。列を成せ拷問車輪よ。轍を作り、突撃するものを微塵にせよ。


 乱回転する風が、波のように押し寄せてくるそれに向かって突き進む。立ち木をなぎ倒し、草を切り刻み、そして蹂躙する。血飛沫が舞い、肉片が作られる。にもかかわらず止まらない狂気。ただひたすらに突き進むそれは、第二、第三の車輪をも掻い潜り、走り抜けようとする。


「そうはさせん。簡単に横を通り抜けられると思うなよ」


 剣で首を刎ねる。だが、車輪は止まらない。第四、第五の車輪が草木を押し流しながら突き進んでいく。それでも、波は留まることを知らず。車輪を飲み込み、そして大きなうねりとなって押し寄せる。負ける訳にはいかない。出し惜しみは無しだ。思考は冷徹に、心は燃やす。さあ、次だ。この程度で何とかなるなら、苦労はしないんだ。第六、第七と車輪を走らせる。


 首を刎ねながら舞う。師匠曰く、剣とは、舞いらしい。踊る様にステップを踏み、紡がれた旋律を奏でる様に。止まる事を知らない剣舞が、波を切り裂く。


 そして、1ウエーブが終わった時には、およそ6割の死体が俺の前に転がっていた。


「つええ……。なんだよこれ」


「味方なんだ。今回は感謝しておけ。だが、これが錬金術師か……」


「余計な事を言う暇があるなら、死体を回収しろ。まあ、言いたいことは解るが……」


 まあ、俺としてはこれで全力なんだ。大軍を相手にするなら、このくらいが精一杯だ。師匠なら、多分だけど1人で何とかする。それくらいの理不尽な存在なんだ。6割しか倒せていない。……これでも、作戦会議で語ったよりは倒せているからまだ許されるとは思うが。こんなの、本来であれば、もっと上手くやれるはずなんだ。上を見ればキリがないのは解っている。だけど、本当に理不尽な連中を知っていると、自分が凡人だと解らさせられる。今はこの程度しか出来ない。師匠なら、もっと上手くやれたはずだ。俺だからこれくらいしか出来ない。こんな手段しか持っていない。ただ、魔法を開発するのは、魔法使いの仕事であって、俺は錬金術師だ。しかもまだまだ若い錬金術師だ。この程度の手札しかないのが悔やまれる。……とりあえず、反省は後だ。死体を回収しないといけない。それと、思った以上に環境を破壊してしまったからな。倒木なんかも回収しておかないと。邪魔にしかならない。草木を識別できれば良いんだけどな。それだけの技量が無い。何とか回収して、後で薪にでもしてもらおう。


「お前たちは大丈夫か?」


「ヴォン」


「大丈夫そうだな。積極的に殺しに行け。出来るだけ後ろに通すな」


「ヴォン」


 いい返事だ。まだまだやってくれるだろう。さて、このスタミナが何処まで持つのかだ。出し惜しみはしない。出し惜しんで、後方が苦しくなる方が駄目だ。最終防衛ラインに辿り着くまでに、最低でも4割は削っておかないと辛い。1ウエーブは終わったが、まだ後99ウエーブ残っている可能性があるんだ。今出来る全力を出さないといけない。だが、身体能力強化魔法リミットブレイクはまだだ。出し惜しみはしないが、使いどころを間違えるのはよろしくない。今回のウエーブは、全部ホーンデッドラビットだった。そこにスクリューホーンラビットが加わってくれば、一気に状況が変化する。戦局が一気に覆される可能性も秘めている。切り札の切り時を間違えると、死ぬだけだ。俺はまだ死ぬわけにはいかない。錬金術を始めたばかりなんだ。まだまだ死んでやるわけにはいかない。


 こんな所でくたばってなんかやるものか。師匠に酒を送るのは、まあ、良いとしてもだ。俺だってまだまだやりたいことがあるんだよ。それを成す前に、死んでたまるかってんだ。生き残って、まだまだやらないといけないことがあるんだよ。


「死体は?」


「何とか回収した」


「状況をどう見る?」


「……まだまだ解らないとしか言えないな。俺たちが出来たのは、1割削れたかどうかだ。大体はサンルーグがやってる。負担は大きいはずだ。魔力だって余裕なんだろうが、それでも、まだホーンデッドラビットしか出て来ていない。本番はまだまだ先だ。今は練習っていったところだろう。スタンピードはこれからだ。これからが本番なんだ」


「だろうな。しかし、錬金術師ってのは凄いな。何でもできるんじゃないか?」


「俺もそう思う。予定以上に殺せている。魔法がえげつないのは、まあ、味方なんだし良いだろう。それでも、掻い潜って来るからな。……2割から3割は後ろに流しちまってる」


「俺たちの方も処理速度をあげないとな。錬金術師が頑張っているのに、冒険者が頑張らないでどうするんだって話だ」


「まあ、そもそも俺たちの戦いに、錬金術師が手助けに入ってくれているだけだしな。メインは俺たちだ。もっともっと頑張らないといけねえ」


「Cランク冒険者の腕の見せ所だ。個人でも何とかなるだろう? 今度は味方のフォローをしつつ、個人で動くか。その方が範囲が広くていい。ホーンデッドラビットに遅れを取るだなんて思っちゃいないだろ? ならばらけようぜ。それで効率が悪ければ、元に戻せばいい。後ろの奴らの負担を軽くしてやらないといけないからな。……殆どがEランク冒険者だ。装備は整っているとはいっても、素早いホーンデッドラビットは苦しいだろう」


「だな。サンルーグのお陰で、団体さんは殆ど来ないんだ。それなら散らばる方がいいか」


「何事も臨機応変にってな。柔軟に対応しようぜ」


 後ろはもっと効率よく倒すためにばらけるらしいな。ネガルドウルフももう少し数が居れば……。まあ、無いものは仕方がない。出る時と出ない時があるからな。どうしても仕方がない。ソウルカードは、魔物によって出るか出ないか決まると言われているし、相性もある。俺がいくら狼系の魔物と相性が良いと言っても、全部の狼系の魔物と相性が良い訳ではないからな。種族単位としての相性と、個人の相性では、また変わってくる。その辺を見極めることが出来るなら良いんだろうが、見極めたところで、何が変わる訳でもない。出会わなければ意味が無いからな。


 空気が更に重くなった。次が来るか。


「臭いがきつくなったな。また来るぞ」


「おいおい、随分早くねえか?」


「いや、早い方が助かるだろ。どっちにしても、100ウエーブしか来ないんだっただろ?」


「そう言えばそうか……。いや、同じタイミングで来るとも限らないのか?」


「スタンピードの専門家でも無いからな……。そんな事は解らん」


「そんなのは偉い奴らが何とかしているんじゃないのか?」


「貴族なら知っているのかもしれない。が、冒険者である俺たちには圧倒的に情報が足りない」


「そう言う研究をしているって奴らが居るんじゃねえのか? 貴族の連中になるんだろうが。72時間しか続かないってのも、100ウエーブしか来ないってのも、その辺が情報を流しているんだろ? 他にも情報を流してくれれば良いんだがなあ」


「しかし、解ったとしても、正確に把握をするのは難しい。不規則に来ると思うしかないだろう」


「何事も悪い方向に考えておけってか。まあ、確かにそうだろうな。悪い方向で考えておけば、それなりに対処が出来る」


「なら、上位種が出たらどうする? 1人では厳しい上に、後ろに流すのは御法度だぞ」


「……上手くフォローに回るしかねえか。おい、サンルーグ! 上位種のスクリューホーンラビットが出たら、優先的に潰してくれ! こっちにはそんな余裕がねえかもしれねえ」


「解った。出来る限り上位種はこっちで潰す」


 ……魔法の選択肢を増やさないといけないだろうな。今のままでも十分なのかもしれないが、単体攻撃が出来る魔法も組み込まないといけない。魔法はイメージ。単体攻撃の魔法も何とか準備は出来る。ただ、風属性で良いのかが微妙だな。絶対に後ろに通せないとなると、物理的にノックバックをさせる方が有効か。それなら土属性魔法を使った方がいいかもしれない。単体攻撃魔法で、一番火力が出るのは、火属性なんだけど、流石に森の中で使うのは躊躇われるからな……。


 土属性の、鉄を高速で打ち出す魔法にしようか。本来であれば、貫通性能を高くして、速度重視にするんだが、命中させるには集中力が必要になる。全体を把握しつつ、乱射できるようにしておく方がまだマシだ。その他のホーンデッドラビットを全部後ろに通せば可能なんだろうが、それもまた難しい。今度は手が足りないって事になりかねないからな。


 もっと大規模な魔法を開発しておくべきだったか。イメージを固めるといっても、多少は時間がかかるし、即興でやるにしても厳しいからな。魔法は準備しておくものだ。今後の事も考えて、何かしら大規模魔法も用意しておいた方が良いのかもしれない。まあ、今回は見送るしかないが。


 空気が変わった。闇の魔力が一気に膨れ上がった。2ウエーブ目が始まる。早々にウエーブが来るのは望ましい事だ。準備不足になるなら困るが、これだけの時間が用意されているのであれば、どんどんと来てくれた方が良い。このペースだと、24時間以内に終わりそうだ。まあ、そもそも72時間以内って言うのと100ウエーブしか来ないというのが正しいのであれば、だけどな。情報としてはあるが、本当なのかと言われると、微妙としか言えない。信憑性を確認しようにも、師匠もスタンピードに遭遇したのは3度だけって話だったしな。……何というか、師匠らしい理由なんだけど、魔力が膨れ上がるというだけあって、その時には、素材がかなり良いものが取れるらしいんだよ。それを狙いにいった事があるらしい。若い頃だって言っていたから、何百年前の話なのかは知らないけどさ。今回も、終わったら素材を採取しておくようにって言われたからな。良質な闇属性の素材が取れるだろうと言っていた。採取しておくことに異論は無いので、採取はするけどな。何というか、スタンピードが終わった後ってのは、魔物が一時的に出てこないらしいので、採取しても良いというか、狙って採取に行けば、良いものが手に入るらしいので、まあ、行かない理由にはならないよなって。


「来たか。……スクリューホーンラビットは見えないな。居たら絶対に見落とさないくらいには大きいから、まだ出てこないのか」


 とにかく魔法を使い続ける。密度はなるべく高くだ。連続でどんどんと車輪を転がしていく。……今度は障害物が少ないからな。さっきよりも効果があるはずだ。倒木や抉れた切り株は回収したからな。車輪の餌食になってくれ。肉片が飛び、血が跳ねる。それでも突撃は止まらない。腕が吹き飛ぼうとも、足が捥げようとも、突撃を止めない。これが狂化状態。ひたすらにえぐい。そんな魔法を使っている俺も俺なんだけどな。ただ、どうしても隙間は出来る。その合間を縫って出てこられては仕方がない。ので、首を刎ねる。それでも手数が足りないから、どうしても後ろに流れて行ってしまう。ネガルドウルフやダイヤウルフたちも頑張ってくれているが、それでも無理だ。その後ろでオーロンドたちが必死になって止めているが、それでも無理だ。何割かは通ってしまう。


 ……後方の負担はどの程度あるんだろうな。それ次第で、魔法を切り替えないといけない訳なんだけど。無事だと信じてこのまま維持するしかないか。確認する手段が無いからな。確認できるのであれば、とっくにしている。出来ないから、全力で叩き潰すしか無いんだけど。全力以上を求められたら、流石に厳しいからな。出来なくはないけど、辛いって感じだな。


 魔法をどんどんと使っていく。環境破壊だなって思いながらも、魔法をどんどんと使っていく。環境はその内戻る。スタンピードが終わったら、自然と戻っていくだろう。まあ、100年もあれば、十分じゃないか? エルフが自然を破壊するなんて何事だって言われる事でもないし。そもそも森でスタンピードが起こる方が悪いんだ。俺は悪くない。自然を破壊しているのも不可抗力だ。


 3ウエーブ目、4ウエーブ目とどんどんとホーンデッドラビットが湧いて出てくる。その度に、段々と闇の魔力が濃くなっていくのを感じる。……100ウエーブで止まるんだろうな。止まらなければ、被害は甚大なんてものじゃなくなるとは思うけど。


 今だって十分な魔力だとは思う。だが、発生源はもっと酷いことになっているんだろうな。これだけの濃密な魔力だ。素材もさぞかし良いものが手に入るんだろうな。そんな事を考えながら戦っていた。後の楽しみが無ければ、苦しいだけだからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ