疑惑の総合商社
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商人にマジックバッグが渡ったことで、野菜の取引が非常にスムーズに行われた。あるだけ買ってくれたし、非常に良き。これでマジックバッグが野菜に占領されている所から開放された。まあ、占有率は1%未満ではあったが、俺は料理をしないし、レジエナも料理は出来ないらしいので、野菜を使う事がない。マジックバッグのお陰で腐ることは無かったが、売ることも出来ないし、困っていたんだ。今回はそれが売れたので、本当に良かった。農民たちも、持て余していた野菜を沢山買ってくれたので、お財布にも余裕が出来たとは思う。麦の買取くらいしかお金の入手手段が無かったからな。これからは、定期的に商人が来てくれる。それは喜ばしい事だからな。獣人の商人じゃなくても良いんだけど、この土地に旨味が無いのがいけない。いや、もの凄く旨味はあるんだけどな? 普通に考えたら、こんな素材の取れる土地なんてない訳なんだし、商人ももっと来ても良いとは思うんだけどな。
そして、雪が積もり始めて、ジャックフロストが出てきだしたという報告を受けて、今か今かと待っていたら、ジャックフロストを大量に狩ってきてくれたオーロンドたちが居た。何でも、今年はかなり遭遇するらしい。こんな時期なのに、もう10体以上も見つけて狩ったと報告が入ってきた。ジャックフロストが10体。羽は2対4枚なので、マジックバッグが2つも作れる。それが10体。マジックバッグ20個分だ。大量である。
それが毎日のように4パーティーが納品してくれるんだ。雑貨屋の鞄の方が足りなくなったので、マジックバッグ作りは、しばらくお休み。既に130個のストックがある。これを売れば、暫くは資金に困ることがないだろう。妖精の羽も、エレミーさんに売ってもいいかもしれない。空間属性の素材は貴重だからな。1つくらいは持っておいても良いとは思う。ただ、妖精の羽は、保存方法が特殊なんだよな。……一見して、真っ赤な血を保存瓶の中に入れてあるのかってくらいには、血に満ちている。いや、本当に血を入れてあるんだけどさ。妖精の羽の保存方法は、羽を保存瓶の中に入れるだけでは駄目なんだ。羽と一緒に、妖精の血を注ぎ込まないといけない。そうしなければ、もの凄い速度で劣化していく。それでも空間属性の素材って事で貴重なんだけどな。ちゃんとした保存方法で保存された妖精の羽と比べたら、価値は1万倍は違う。まあ、ここでは金貨1枚で買い取るんだけどさ。普通、劣化した状態でも、王都で買えば、銀貨30枚程度はする。それだけ貴重な素材なんだよ。空間属性というだけで。
そんな訳で、お裾分けをしに、テッケルンまで走った。雪が積もっているから、走りにくいなんてものじゃないんだけど、そこは胴長を着ているからな。悪条件なんて無いという感じで走り抜けるんだ。テッケルンまで1時間ちょっと。快速で飛ばしてきているからな。全力で走れば、もう少し早くなるとは思うんだけど、これでも十分に早いのである。
「こんにちは、ケイトさん。エレミーさんは居ますか?」
「いるよー。エレミー、サンルーグ君が来たよー」
「ちょっと待ってもらって! 今いい所だから!」
「だってー。お茶出すね」
「すみません。ありがとうございます」
そんな訳で、暫くお茶を飲みながら待った。結構長いって事は、それなりの依頼を受けいていると言う事である。錬金術の難易度は、基本的には長くなればなるほど難しい。マジックバッグなんかは簡単なんだよ。……素材を集めるのが難しいだけで。簡単に作れるものほど、素材の入手難易度が難しかったりするからな。時属性の素材なんて、迷いスライム以外の素材を殆ど見ないからな。俺は反転のユニークスキルで、お手軽に入手が出来るけど。やっぱ反転のユニークスキルってチートだよ。使い勝手が良すぎるんだからさ。
「お待たせ。ちょーっと厄介な薬の錬金を頼まれてね」
「厄介って言うと、特効薬の何かですか? あれって1時間くらいかかる物もありましたよね?」
「あるわね。容体を見たら、結構悪化してて。急いで作らないといけなかったのよ。ケイト、これをアミナさんの所に届けてきて」
「はーい。ちょっと行ってくるねー」
「今の時期だと、風邪と間違えるから困るのよね。まあ、判別する方法が確立しているから、まだ良かったけど。錬金術師って、医者も兼ねないといけないから大変よね」
「あー、それはありますね。容体を見て、適切な薬を与えないといけないって、結構難易度が高いですよね。解りにくい病気だと特に」
「そうなのよね。魔道具で判別できるなら良いんだけど、出来ないものもあるし……。それに、下手にポーションを飲ませると、悪化する病気もあるから、気が抜けないのよね」
端的に言えば、ポーションで悪化するのは癌だ。癌なので、摘出しなければならない。内視鏡とか、そんな便利なものは無い。判別方法は、癌に限って言えば、今のところはない。魔道具でも解らない。下手にポーションを使うと、悪化しかねないので、マジで怖いんだよ。……症状が出ない癌だともっと怖い。健康そうな人が、常飲するポーションで、一気に症状が悪化する。癌細胞って、細胞的にはおかしなところが無いから、ポーションで治らないどころか、細胞分裂を促進して悪化させるんだよな。マジで一気に容体がおかしくなったら、どこかしらの癌である可能性が高いんだよ。一気に容体が悪化するから、本気で面倒なんだよな。……一時期、癌細胞を使って、不老不死の研究がされていたみたいなんだけど、制御できなくて無理だったみたいなんだよな。制御できたら、不老不死が実現したのかと思うと、ぞっとするが。不老はいいが、不死は駄目だ。不死は精神がおかしくなるからな。不老ならまあ、女性には人気になるんじゃないかな。人間のって条件が付くだろうけど。人間が一番老いるのが早いからな。受け入れられないって人が多いんじゃないだろうか。
「まあ、これで何とかなるだろうけどね。……というか、ちょっと愚痴ってもいい? ねえ、なんであのマジックバッグはあんなに大きいの? 白金貨130枚で買ったけど、普通に買ったら白金貨1000枚くらいの価値ない?」
「さあ? マジックバッグの基準が今一つ解らないので。師匠が作るマジックバッグよりは小さいですよ? 師匠は俺の倍くらいは大きいのを作りますし。俺だと、あれが限度くらいですね。でも、原価は白金貨2枚から5枚くらいですよ? マジックバッグって、素材の入手が難し過ぎるだけで、作るのは簡単ですからね」
「……作るのは簡単なのは知っているのよ。でも、あそこまで大きくて、原価が白金貨5枚ってどう言う事?」
「えっとですね。そこからは師匠の秘術になるのであまり大きい声では言えないんですけど。要は、無属性の魔力を、時属性と空間属性の魔石に取り込ませて、属性を変質化させるって言う工程を踏んでいる訳なんですよね。なので、貴重な素材ではありますけど、少しでも空間属性と時属性があれば良いので、割と雑多な素材の魔力さえ取り出せれば、何とかなるんですよ。まあ、俺の魔力操作では、そのくらいが限度ってだけなんですよね。秘術なので、やり方とかは教えられないんですけどね」
「……出来る気がしないから良いわ。そうなのね。それでクエスエーレ様はマジックバッグで稼いでいたと。素材が何処からか供給されているのは知っていたけど、秘術まで使っていたのね」
「そう言う事ですね。まあ、割と面倒なので、俺も師匠の半分くらいしか出来ないんですけど。師匠って本当に出鱈目な人なので。本当に人なのか怪しい感じなんですけどね。俺は人の皮を被った何かだと思ってます」
「羨ましいとは思うけど、真似しろって言われても無理だろうし、よくもまあ秘術を会得で来たわね?」
「会得した秘術の方が少ないんですけどね。師匠の秘術って10や20じゃ効かないので。兄弟子に聞いた事がありますけど、師匠の秘術の数は500を越えるって聞きましたよ? 本当なのかどうなのかは知らないですけど。流石に聞いても答えてくれないでしょうし。笑いながら知らんって答えられて終わりだと思うんですよね」
「まあ、伝説の人だもの。伊達に3賢って言われていないわよ。特に有名なのが、マジックバッグでってだけで。それも近年に驚くほどの数を出したものね。市場は大荒れ。でも、大規模な商人には売らないって言っていたでしょう? 殆どが冒険者に買わせて軍が手に入れたって聞いているけど」
「まあ、荒稼ぎしましたもんね。大抵が軍の手に渡ったのも本当の事ですけど。でも、かなりの数が冒険者にも流れましたからね。師匠はそうしないと素材が碌に集まらないって言ってましたけど」
「それは解るわね。町にいると、碌に素材が集まらないのよ。特にボッテンハイム子爵領は冒険者の質が低いでしょう? 今までは碌に素材が来なかったものね。他領から入ってくる、多少はマシな素材を何とか使って居たけど、今はある程度は改善しているから良いわ。獣人の冒険者が、良質な闇属性素材と、水属性素材、土属性素材を持ち込んでくれるから。こっちも助かっているわ」
「それは今までがおかしかっただけなので。今の状態が普通ですからね。冒険者の質を落として、何をしようって話なんですよ。普通はあり得ないでしょ?」
「まあ、普通はね。でも、ボッテンハイム子爵家には、前から疑惑があるのよね」
「……疑惑ですか?」
「そう。冒険者の質を落として、南の国を勝たせようとしているんじゃないかってね。本当なのか嘘なのかは知らないけど。けど、代々冒険者の質を落としているのに、資金繰りは良いのよね。普通は、素材の入手が捗らないし、討伐だけで食っていく冒険者が増えるから、冒険者ギルドに出費が嵩むはずなのよ。素材の扱いが無いから、商人からの税金は少なくなるはずなのに、金回りだけは良いのよね。だから、南方の国から援助を受けているんじゃないかとか、実は優秀な冒険者だけを集めて、反乱軍を整えているんだとか、色々と言われているわよ?」
「本当に疑惑があったのかよ……」
「何? 疑惑があったら不味いの?」
「いや、寧ろ良いんですけどね。……実は、ボッテンハイム子爵家を追い落とすのに、獣人を使えないかなと思いまして、現王の暗殺のために、冒険者の質を落として、上澄みを暗殺者に仕立て上げようとしているんだ、とか、冒険者の質を落として、軍に派遣させないようにしているんだ、とか。色々と噂を流して、王宮まで噂を広げてしまって、ボッテンハイム子爵家を獣人が潰して、そのまま貴族家へと成り上がりって、筋書きを適当に描いたんですけど……。割とマジなんですか?」
「割とマジね。単純に無能なだけなのかもしれないけど、噂は出ていたわよ? 獣人でも知っている人は知っているんじゃないかしら?」
「……じゃあ、割とボッテンハイム子爵家を追い落とすのは簡単だったり?」
「するわね。今の噂を大きくすれば良いだけだもの。それを獣人が落として、領主になったら、面白い事になりそうね?」
「でしょ? 面白い事になると思うんですよ。ちょっとはマシになるんじゃないかなって思っているんですが……。まさかそこまで疑惑まみれだとは思いませんでしたね。3年はかかるんじゃないかって思っていたんですが、案外早く終わりそうだな。次の冬までには間に合うかもしれないですね。獣人側に戦力が居れば、ですけど」
「問題はそこね。獣人側にどれだけの戦力が居るのかよ。そもそも腐っても貴族の軍隊だからね? ある程度の強さはあるわよ?」
「でも、今は獣人を強化中なんですよね。……下手をすると、かなり強くなるとは思うんですけど」
「あら? そこまで強くなるのかしら?」
「ええ、まあ。魔法を教え込んだので。しかも、よりにもよって俺の秘術である身体能力強化魔法を教えたんですよね」
「身体能力強化魔法が秘術? 普通に使えるわよね? かなり魔力を使うから、大量の魔力が無いと厳しいとは思うけど。そんなに強化率が良いのかしら?」
「いえ、強化率も数倍にはなるんですけど、問題はそこじゃないです。俺の身体能力強化魔法って、魔力が3桁もあれば、1時間は使えるんですよ。連続使用で」
「……それっておかしくないかしら? 例えば、魔力が150程度だとして、今までの強化率よりも数倍の強化がされて、それが1時間も続くの? 魔力はどうなっているのよ。ていうか、それを獣人が使うの?」
「そう言う事なんですよ。ただでさえ、フィジカルが元々強い獣人が、強化されるんです。普通の人間が使うよりも、数倍強い強化率で」
「頭が痛くなってくるわ。そんな秘術を獣人に教えたら、1年後には化物集団が出来上がるわよ?」
「ですよね。俺はそれを使って、亡者の鉱山都市ベルンケラーに行こうとしていたので。師匠の命令でレイトーン村に来たのはそのせいですから。良質な死属性の素材が欲しいと言う事なんですよね」
「ああ……。そういえば、そんな遺跡もあったわね。誰も行こうとしないから、気にしていなかったけど。長らく放置されているから、皆忘れているんじゃないかしら?」
「師匠は余裕で生きてたでしょうからね。寿命が長い種族ですし。俺がレイトーン村に来たのは、そう言う経緯ですよ。死属性の素材が欲しいんです」
本当は、それを反転させて、聖属性のポーションを作って、更に反転させてお酒が欲しいだけなんだけど、そこまでは言えないからな。酒が飲みたいだけなのに、こんな所に送り込まれる俺って一体って事になるからな。悲しいから考えないようにしているんだ。最近は特にな。
しかし、ボッテンハイム子爵家が疑惑の総合商社だったとは。それは好都合だな。ちょっと噂を大きくするだけで、領地が取れる。しかも、合法的に取れる。国から軍が来る前に、こっちで処理しましたって言い訳が立つからな。何と言う事でしょう。都合が良すぎる。丁度いい疑惑があるなら、わざわざこっちで考えなくても、テッケルンの有力者に聞けば、幾らでも情報が出てきたんじゃないだろうか。それを獣人たちが掻っ攫う。良いんじゃないか? 俺には損はないし。戦力もあるんだから、問題ないだろう。余裕で落とすことが可能になっているはずだ。1年後だったら、って感じだな。
放っておいても、ボッテンハイム子爵家は追い落とされていたんじゃないか? それを早めただけだ。何の問題もない。というか、南の国と繋がっているってのが事実だったら、本気でやばいんじゃないか? 国家反逆罪だよな?
まあ、俺は知らないけど。その辺は上手い事やって貰おう。噂が大きくなれば、大義名分は出来るからな。場合によっては、師匠にも動いてもらわないといけないかなとは思うけど。師匠にとっても利益になるんだから、喜んで動いてくれることだろう。どうなるのかは、やってみない事には解らないけどな。本気で追い落とすことになるんだけど、何処まで領地が荒れるのかだ。人間が逃げるって事は無いとは思うが、獣人は解放されるからな。暴れないと良いなとは思うけど。




