師匠の戦闘訓練
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そして朝。昨日帰ってきたオーロンドたち獣人の冒険者に、師匠の存在を知らせ、1日修行の相手をしてくれると言う事なので、狩りに行かずに残ってくれと説得した。これには一応ではあるが、納得してもらえたので、今日は修行の日と言う事になる。それで、師匠の戦いを見ていたんだが……。
「ほらほらどうした。乳飲み子の様に這い蹲って。もっと根性を見せろ。それではまともに相手にならん。サンルーグよりも経験は上だろう。鍛練が足りんぞ」
「師匠は相変わらずだなあ。何であんなに強いのか。種族的に見ても、身長は低いし、手足も長くない。獣人とは倍くらいに差があるはずなのに、20人がかりで戦っているオーロンドたちを圧倒しているんだからおかしい。修行の効率が悪いからと言って、纏めて相手をしてやると言った時には、若干切れてたオーロンドたちも、今はあの様だしな」
息切れをしている獣人の冒険者たちに比べて、涼しい顔をしている師匠。正に別格。おかしいだろうというのは、見ても解る。師匠の戦闘能力の高さは、本当に異常だ。何をそこまでしたら強くなるのか。理解が出来ない。何というか、生き残ることに特化しているという訳でもなく。囲まれても全部に対処できるだけの実力を持っているんだよな。
「さあさあ、もっと見せてみな。私はお前たちを殺さない。だから死ぬ気でかかって来な。無謀とも言える突撃をして来な。死線を潜りぬけてこそ強くなれる。高々Aランク冒険者にしか成れない凡愚では、越えられない壁というものを見せてやろう」
「っち! うおおおおおお!!」
「1度は崩して見せる!」
「俺たちの連携を見せる時だ!」
とまあ、色々と駆使して戦っている獣人たちなんだが、それでも届かず。ただ、師匠の修行は休ませてもらえないんだよな。時間が来るまで戦い続ける事を修行としている。だから、攻撃の手が止まれば、師匠から攻撃を仕掛けられる。防御側に回らないといけなくなる。そうなると、攻撃する隙を与えて貰えない。全員で何とか耐えるという方法でないと、勝機が掴めない。それを気絶するまでやってくるからな。本気で出鱈目なんだ。
昔は放出系の身体能力強化魔法を使っていた師匠だが、俺が循環型の身体能力強化魔法を教えてしまったがために、継戦能力が上がり、更には身体能力強化魔法が強化されてしまったため、色々とおかしな事になっているんだが、それはオーロンドたちは知らない事だ。チートと言っても過言ではない。冒険者になっていたら、Sランク認定されていたことだろう。冒険者にならずに、錬金術師になったのは、何故なのか。それは俺には解らない。けど、それくらいには強い存在なんだ。色々とぶっ壊れているんだよな。何でこんなに強いのかは、解らない。何かしら強化魔法を使っているんじゃないかとは思うんだけどな。……俺も、師匠には教えていないが、身体能力強化魔法とは別の魔法も使っている。それが思考加速魔法だ。
脳をフル回転させるようにして、脳の処理を今以上に早くする魔法だ。反射神経や動体視力が向上する。どんな敵でも、身体能力強化魔法と思考加速魔法を使えば、圧倒できる。そう思っていたんだけど、師匠には勝てなかったからな。なんだろう。どんなに思考を加速させても、未来視のような先読みで、攻撃を封じてくるからな。俺が師匠から1本も取ったことが無いのは、師匠が出鱈目に強すぎるからだ。どんな攻撃をしようと思っても、思った時には既に対策が終わっている。正直、化物だ。何で神は師匠にこれだけの才能を与えたのか。本気で問いただしたくなる。
「何寝ているんだ。来ないならこっちから行くよ」
「休みがまるでねえ!」
「来るぞ! 備えろ!」
「早く起き上がれ!」
こうなると、攻めに転じるのは難しくなる。体力も限界に近いだろうからな。それでも振り絞って防御をしている。……師匠、手加減をしているな。ギリギリで防御できるだろうという所で攻撃を行っている。防御をされることを前提にした攻撃だ。そして、そんな前提が出来るのであれば、そのまま連撃に入ることが出来る訳で。防御されることが解っているのであれば、それを繋げる様にして攻撃してくる。今度こそ致命傷になるんじゃないかという攻撃を、連続で行ってくる。それが無限に続くんだ。獣人たちの技量も上がるというものだ。死なないためには、強くならないといけない。今回は死ぬまではいかないから、存分にやり合える訳だ。……師匠も余裕で攻撃しているし、まだまだ底を見せてはくれないけどな。
そんな、無限にも続くような時間が、16時間ほど続いた。時はすっかり夜。そろそろ帰らないといけないだろう時間だ。……師匠はここまでどうやって来たんだろうな。何日かけたんだろうか。まさか、数時間で走って来たなんてことは無いとは思うんだけどな。でも、この化物ならあり得るんだよ。常識というものが通用しない化物なんだからさ。俺は師匠の事は人として見ていない。人の形をした何かだと思っているからな。こんな人が居て堪るか。その気持ちは、今日、獣人たちの中でも共有されたことだろうとは思う。こんな生き物が居て良い訳がない。何で冒険者をやらなかったんだと思うくらいには強いんだ。出鱈目にもほどがあるんだよな。
「結局防戦一方だったじゃないか。最初の威勢は何処へ行ったんだい? ほら、時間が迫ってきているよ。そろそろ最後の攻撃に出た方が良いんじゃないかい?」
「ックソ! 皆、合わせろ! 今日でそのくらいは出来る様になっただろ!」
「絶対に1本だけでも取ってやる!」
「絶対に届かせてみせる!」
「さあ、その意気だ。かかって来な」
獣人たちの連携を、躱し、いなし、まさかの反撃に出る。何処に反撃する隙があるんだと思いたくなるが、これが師匠だからな。この中に俺が入ったとしても、1本を取れる気がしない。こんなに強いのに、錬金術師なんだ。錬金術師が強さを求められるのは、半分くらいは師匠のせいなんじゃないかって思えてくるよな。これが基準になっていないか? こんな事が出来るのは、師匠くらいしか居ないとは思うんだけど。……でも、後2人は居るのかもしれないんだよな。3賢というんだから、残りの2人も出鱈目なんだろうとは思わないでもない。
そんな3人がパーティーを組んだら、どんな場所にもいける気がする。何というか、人外魔境にだって、普通に行って帰ってくる気がする。傍目で見ていても、人外の動きをしているとしか言いようがないからな。何でそんな事が出来るんだって思いたくもなる。何で出来るんだろうな。不思議でならないんだけど。俺も魔法を使って戦っているのに、涼しい顔をしながら防御されるんだもんな。やっぱり師匠は何処かおかしいんだよ。具体的に何がおかしいのかは、言いにくい所があるんだけどさ。規格外だよなあ。あそこまでならないと、錬金術師として上位に成れないのかと思うと、中々に難しいとは思うんだけどな。
「よし。これで時間だな。明日は1日休めよ。討伐に向かったら死ぬぞ。まあ、動けるかどうかが怪しいだろうけどな。サンルーグ、出来るだけ早く、こいつらを使い物にしておけよ。待っているからな」
「俺には師匠の真似は出来ないって。20対1なんて不可能だ。師匠が出鱈目におかしいんだよ」
「そんな事はない。このくらいの事は出来る様になって貰わないと困る。それじゃあ行くからな。早くいかないと、明日の夜に間に合わない」
「……師匠? 寝ないで走るつもりですか?」
「当たり前だ。そのくらいの事は、お前でも出来るだろう?」
「出来るかで言えば、出来ますけど、普通やりますか? って常識的な事を聞かないといけないでしょ?」
「出来るならばやるべきだ。私も忙しいからな。暇を作ってやるのも難しいんだ。偶には王都に帰ってきても良いからな。まあ、手土産は欲しいが。それに期待をしながら、帰るとするか。それじゃあ、また会おう」
そう言って、元気に走っていった。……これから24時間ぶっ通しで走り続けるんだろうな。理論上、可能なのかもしれないが、疲労とかは無いのかね? 今までここでぶっ通しで16時間ほど鍛練をしていたとは思うんだけど。無尽蔵の体力は何処から出てくるのか。それが解らない。体格は獣人であるオーロンドたちの方が2倍ほど大きいというのにな。まともに立ち上がれる獣人の冒険者が居ないくらいには疲弊をしている。まあ、俺も似たような感じになった事があるからな。あの状態から立ち上がるのは厳しい。それでも、何とか動かないと、宿にもいけないからな。のそのそと動き始めているのは良い事だ。明日は1日動けないだろうけどな。スタミナとか体が疲弊しているとか、そう言うのもあるんだけど、生死を彷徨う様な攻防を続けていたんだ。精神的疲労が大きいだろう。
「お疲れ。今日だけで、大分と強くなれたとは思うぞ。魔物相手でも、あれだけ戦う事なんて無いだろうからな。師匠の事は気にしなくてもいい。あれは人の皮を被った何かだからな。気にするだけ無駄だ」
「……出鱈目に強すぎるだろう。なんだあれは? 攻撃がまるで通らねえ。大岩を相手に、剣を振るっていたと錯覚するようだった」
「大岩の方がマシだぞ。反撃はして来ないからな。師匠は攻撃をただ止めていた訳じゃない。大岩を叩けば、反発すると思うが、師匠はそれらは吸収して、隙を作っていたからな。弾き飛ばすことは殆どしなかったとは思う。まあ、俺も同じことをやられてきた口だからな。明日は1日休みにした方がいいぞ。肉体的な疲労は残らないかもしれないが、精神的な疲労は残るからな。何度殺気を当てられて死んだような思いをしたのかは知らないが、普通にそのくらいはやってきていただろう?」
「何度死んだか解らねえ。何度殺されたか。殺気だけで人を殺せるぞ、あれは。普通の人じゃねえ。なんなんだあれは?」
「だからあれは人の皮を被った何かだ。人じゃないんだよ。人はあそこまで動けない。……まあ、20人が相手になっても勝てない存在は居るって事だ。逆に言えば、あれを殺せるのであれば、どんな敵でも倒せるだろう。あれを経験すれば、人としては強くなれる。人の形をした何かを相手にして、ここまでやれたんだ。多分だが、3段階くらいは強くなっているはずだ。あれを経験しておくことが、冒険者として上に行くための試練だと思ってくれ。それくらいには、理不尽な事をされたとは思う。だが、その分強くなっているはずだ。東の森でも楽勝だと感じるくらいにはなっている。もしかしたら、グラングレイズベアにも勝てるんじゃないか? それだけの経験を積んだと思っておけばいい」
「マジで明日は1日休みだな。今も変な汗が止まらねえ。体を冷やす様な汗じゃねえ。体の中の何かを燃やして出てきているような汗だ。これは夜寝るだけじゃあ収まらねえ」
「その気持ちは凄く解る。だが、無理はするなよ? それの正体が解るまでは、大人しくしておいた方が良い。皆で話し合ってくれ。その体に刻み込まれたのはなんなのか。答えを出してから進んでくれ。そうじゃないと、本気で死ぬからな。その感覚は忘れない方が良い。忘れられるとも思わないけどな。俺はそれに対して答えを出した。合っているのかどうかは解らない。だが、それだと認識していれば、それ以上の事が起きない限り、動じないようになる。修羅場を1つ、潜り抜けたような力が手に入っているはずだ。理不尽な何かに振り回された経験が、活きる時は必ずやってくる。その時は、生き残ることを優先するべきだ」
俺はそれを恐怖と解釈した。師匠と対峙して、師匠がぶつけてきた何かを感じて、俺が得たものは恐怖。それで合っているのかは解らない。けど、人生で、それ以上の恐怖を感じたことはない。あれ以上の恐怖を感じたら、確実に逃げることを勧めるだろう。もし、殿になることがあれば、全力で逃げに徹する。そんな感覚なんだよ。あれは、恐怖だ。俺はそう感じた。
まあ、これで獣人の冒険者たちの経験値は、もの凄く稼げたとは思う。あれだけの化物と長い時間対峙したんだから。これからの狩りでは、恐怖というものを感じないだろうな。怖いという感覚が麻痺してしまう。だって、あれに比べたら、対処が出来るから。何をどうやれば防げるというのが解ってしまうから。ここまでなら大丈夫という線引きが出来るようになる。
そして何より、身体能力強化魔法の底力を引き出すことが出来るようになる。限界を越えた行使が可能になるんだよ。リミッターが外れる様に。心のどこかで、限界を決めてしまっていたはずだ。それが取り払われたはずだ。ここまでなら出来るという状態から、ここまでやらないと死ぬという状態に変わったはずだ。それだけの経験値を得られたとは思う。俺が模擬戦の相手を務めても、そう言った事は解除できないからな。師匠の様に、殺気で殺すような事は出来ない。何をしたら、あそこまでに成れるのかは、想像がつかないんだよな。だから、あれは人の皮を被った何かだ。人の形をした何かだ。そう言った恐怖があるんだよ。恐怖は、体験し、乗り越えられた時に、もの凄い経験値をくれる。獣人の冒険者たちは、今日、莫大な経験値を貰ったはずだ。冒険者として、3回りほど大きくなったはずだ。その実力を遺憾なく発揮できるようになれば、Aランク冒険者には成れるだろう。俺はそう思う。
まあ、休みは必要だろうけどな。考える時間が必要だ。向き合う時間が必要だ。俺は恐怖だと解釈した。彼らがどんな答えを出すのかには、興味がある。けど、自分の中の答えが見つかれば、それで良いんだとも思うんだ。あれをどうやって感じたのかは、人それぞれだろうからな。簡単に受け入れられるものでもないので、是非とも考えて欲しい。あの力はなんだったのか。自分が感じたのもはなんだったのか。大いに迷ってくれ。正解は無いと思うんだよ。自分が感じたことが全てだ。それを糧として、更なる高みに登ってくれればいい。俺が似たような訓練を出来れば良かったんだけどな。俺にはあんな芸当は不可能だ。似たような事は出来る。だが、恐怖を与えることは出来ないだろう。変に手加減をした結果、増長させる未来がありそうだ。
けど、あの感覚を昇華できたのであれば、俺が訓練をすることは可能だろうな。傲慢になることは無くなったから。あの感覚を知って、傲慢になれるほど、人は愚かではないとは思う。忘れられないあの感覚を、忘れられるのであれば、ある意味才能があるのかもしれない。冒険者としての才能なのか、それ以外なのかは解らない。でも、才能には違いないとは思う。俺には不可能だとは感じたからな。俺では、あの恐怖を忘れることは出来ない。それだけの資質しか無かったと言う事なんだろうとは思う。俺は英雄にはなれない。だから、錬金術師の道を歩むんだ。俺は、俺自身は、それが正解だと思っているからだな。何が正解なのかは解らない。けど、俺にとっては、錬金術師としての道を歩むことが、正解の1つであると思うんだ。




