オーロンドたちが町に帰る
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とりあえず、狩ってきた魔物の処理をしつつ、マジックバッグを作り、各種ポーションを揃えていった。森で一番必要なのは、暗視ポーションだ。それの充実も含めてだな。暗視ポーションは、別に闇属性が無くても作れるが、性能の良いものを作ろうと思うと、闇属性が必須になる。ポーションでそろそろ冒険者の錬金術店を利用すれば何とかなるという、認識が広がって来たとは思う。よって、暗視ポーションを新作として売り出した。暗視ポーションがあれば、昼間の草原のように辺りを見渡すことが出来る。薄暗い森の中では有用なポーションだと言う事を、エレナちゃんに宣伝してもらいつつ、売り込んでいた。ただ……。
「まあ、俺らには必要ねえよな」
「魔法があるからな」
「それは当然の事だな。魔法が使えない奴らの為のポーションだから。身体強化魔法を使いこなせば、視力にも影響は出てくる。魔法があれば必要ではない。まあ、魔力が少なければ、検討すればいいかもしれないけど、魔力切れも起こしていないんだろう?」
「ああ、魔力切れになった事はねえな。俺たちも結構魔力を持っていたんだな」
「獣人には魔法は使えないものだとばかり思っていたぜ」
「それは勘違いだ。誰しも魔力を持っている。まあ、節約のためにポーションをって状況にならないのであれば、それで十分だろう。俺の教える身体能力強化魔法は燃費が良いからな。魔力の消費をかなり抑えられるし、強化率もかなり高い。他の獣人の冒険者たちはどうなんだ? 教えているんだろう?」
「まだだな。なんとなく感覚が掴めてきている奴らが居るが、もう少し時間がかかりそうだ」
「そんなものだろうな。早い方が特殊なんだ。普通はそのくらいの時間がかかる。平均で5日くらいはかかると言う事は、それ以上にかかる者が半分くらいはいると言う事でもあるからな。そもそもユニークスキルを使うのに、魔力を使わないといけない人も居るんだし、魔力の訓練はしておいて損にはならない。勿論だけど、あの道具は売らないでくれよ。専用に作った廉価品だからな。ちゃんとしたものは結構高価なんだ。それと同じにされたら困るからな」
「売らねえよ。獣人たちで使いまわすことにはなるだろうが。俺たちもそこそこに稼がせてもらったからな。そろそろ戻らねえと。色々と報告しないといけないことがあるからな」
「冒険者ギルドの件と、錬金術師の件か。そうだな。知っておいてもらえると助かる。それと商人の件もだな。是非とも立ち寄ってくれ。損はさせないつもりだ」
「解っている。まあ、程々に稼がせてやってくれや」
「そうだ。帰るなら、肉を持っていく気はないか? 保存瓶なんかで、素材が入っているだろうが、肉ならまだ隙間にでも入るんじゃないか?」
「ん? 入るとは思うが、肉だろ? 悪くならねえか?」
「いや、帰るのにそんなに時間はかからないだろう? もしかして乗合馬車で帰るつもりか? それなら止めた方がいいぞ。遅すぎるからな。身体能力強化魔法があるのであれば、走った方が早い。俺なら1時間も走ればテッケルンに着くからな。オーロンドたちも走って帰れば直ぐだ。強化具合に因っては、俺よりも早いかもしれない」
「……ああ、そういやそうか。乗合馬車を待ってたから明日って思っていたんだが、そもそも走れば良いのか」
「町まで走るって発想は無かったな。乗合馬車で来るものだとばかり思っていたからな」
「な? そんなに時間はかからないんだ。肉も冒険者ギルドで買い取ってくれるだろう。素材は南東に居る錬金術師に頼れば、それなりの値段で買ってくれる。そこそこの収入になるはずだ」
「確かにな。余分な荷物を持つことになるが、そもそも身体能力強化魔法があれば、誤差の範囲だな。明日の朝でいいか?」
「ああ、こっちも葉っぱで幾つか包んでおく。用意が出来たら取りに来てくれれば肉を売ることは可能だ。そもそも村人用に包んであるから、何時でも良いんだけどな」
「肉屋も始めたんだもんな。何で錬金術師が肉を売るんだって思う訳だが」
「仕方がないだろう? 解体していたら肉はどうしても余るんだ。食べられない肉なら捨ててもいいが、食べられるんだ。しかもある程度美味しくな。それなら捨て値で売った方が良い。……まあ、野菜が貯まる一方なんだけどな。近いうちに商人を寄こして欲しい。野菜だって結構な量を買って帰れるとは思うぞ。野菜の販売だけでも、結構な利益になるはずだ」
「だろうな。その辺は商人をやっている奴らと相談だな。捕まるかどうかは解らねえが」
最悪は伝言でも構わないだろうからな。商人が来てくれないと困る事になる。この村の貨幣が、全部俺の所に集まってくるのは困るんだよ。外貨を獲得できないと、この村が詰む。それは避けないといけない。外貨の獲得手段なんて、どれだけあっても良いからな。特に農家なんてお金を用意するのが大変のはずだ。税である麦くらいしか売れるものが無いんだから。野菜ももっと作って、売れるようにした方が良いんだよ。その辺は考えた方がいい。本当は領主が何とかしないといけない事ではあるんだろうけど、ここの領主は屑だからな。どうしようもない。
「ただ、素材は集まってきているって話だろ? いい話じゃねえか。農民も自分たちで素材を売りに来ているって聞いてるぞ。子供たちが率先して自分の畑で何かを探していたら、興味が出てこない訳がないってか」
「そっちは思ったよりも成果が出てくれて嬉しい限りだ。農民の雑草取りが、素材取りに変わるんだからな。雑草と思っている中にも、素材はいくつもある。そう言うのを集めて貰えるだけでも助かるんだよ。こっちとしては、ポーションの素材は幾らあっても良いからな。近々、新しいポーションを並べようとは思っている。まあ、身体能力強化魔法が使えるなら、必要ないとは思うけどな」
「そうなのか? どんなポーションを並べるんだ?」
「移動速度上昇のポーションだな。単純に足腰が強化される。まあ、慣れないと逆に動きにくいんだけどな。移動速度が上がるから、自然と成果も上がる。そう言うポーションだ」
「ああ、それなら俺たちには必要ねえな。身体能力強化魔法があれば、その辺もカバーできるって事か。無い奴らには有難いのかもしれねえが、俺たちには必要ねえな」
「だが、移動速度が上がるのは大きいな。それは馬にも効果はあるのか?」
「あるぞ。……ああ、商人の荷馬車か。コストはどうだろうな。1日分なら銅貨5枚程度な物なんだが、村を飛ばすメリットがあれば、コスト的にも問題無いか?」
「飛ばしたい村はあるだろうからな。特に獣人を差別している村なんて、飛ばした方が得だ。荷馬車が襲われる可能性もあるんだから」
「……そんなに治安が悪い村があるのか?」
「聞く限りではあるぞ。通らないといけないから通るが、出来れば通り過ぎたいって村はいくつもある。獣人ってだけで、歓迎されない事もあるのは普通だからな」
「差別しても、自分の暮らしが楽になる訳ではないのにな。結局は、自分が努力できる範囲で何とかしないといけないんだから」
「そもそもだ。努力の仕方が解らねえって場合もあるんだよ。店主はなんだかんだと自分で出来るかもしれねえが、教えて貰っても居ないのに、何でもできる奴なんて居ねえのよ」
「……それは確かにな。でも、獣人たちはこれから改善していく。そうだよな?」
「そうだ。横の繋がりを辿れば、王国の反対側にだってネットワークは繋がっている。ふん、獣人が差別されることも、無くなるかもしれないな。主導権を取り返せば、獣人が返り咲くことも出来る」
「……やらねえんだけどな。今度は獣人じゃない弱者を生み出すだけだからな。弱者になるのは厳しい。これが数が比較的多い獣人だからまだマシなんだ。エルフやドワーフなんて少ない種が差別対象になることは少ない。そうなってくると、次に標的になるのは人間だ。人間が差別されるなんてことはあり得ねえかもしれねえ。けどな、何処からともなく欠点を見つけて、人間を分断して、また差別するだけなんだよ。人間はそういう所があるからな」
「……否定はしない。けど、それをこの村の子供たちの前で出してくれるなよ? 今もエレナちゃんが帰っているからその話を聞いているが。純粋な子供たちを巻き込まないでくれよ?」
「おいおい、その辺の分別は付いてるぞ? 子供に聞かす話じゃねえってのはな。まあ、店主に限って言えば、子供だとは思えねえ。こんな愚痴も話しても問題ないだろう?」
「まあ、これでも15歳だからな。エルフとしては大人だ。それに、錬金術師としてしっかりと店を運営していっているんだ。もう子供では居られないんだよ」
「それも難儀な話だけどな。まあ、時と場所は選ぶって事だ。人も選んでいるつもりだ」
「それじゃあ、また明日の朝来るからよ。肉の準備だけは頼むわ」
「ああ、精々高く売ってやってくれ」
こう言う事なら、マジックバッグを貸してやれば良いんじゃないかと思うかもしれない。……それでも良いんだけどな。けど、まだ胴長と長手袋の値段も稼げていないんだ。……採取だけではそこまでの金額にはならないからな。高級素材があれば、話は変わってくるんだけど、それを見分けるのが大変だ。討伐を優先しているみたいだし、討伐報酬はギルドに行かないと得られない。だから借金をしている事には変わりない。それなのに、今度はデカすぎる借金を背負わせるわけにはいかないだろう。やむを得ない場合があるならまだしもだ。
そう言うのは、胴長と長手袋を買い取ってから、色々と話をする事だと思っている。確かに、マジックバッグを手に入れられれば、かなり稼げるようになるとは思うぞ。肉なんかも大量に持っていけるだろうからな。それは俺も望むところではあるんだが、まだ早い。計画を前倒しするには、まだ状況が整っていないと考える。状況が整えば、貸し出しも考えるとは思うけどな。実力的に、ネガルドウルフも狩れるだろうし、もしかしたら、グラングレイズベアも狩れるかもしれない。迷いスライムは無理だろうな。あれは特殊だ。狩れば、簡単に借金を吹き飛ばすことが出来るんだけど。時属性の素材というだけで、白金貨は確定なんだ。最低でも白金貨5枚からだな。俺なら10枚でも買う。
それを教え込むには、探知の魔法も教えないといけない。探知の魔法で、ある程度熟知してきて、初めて何の魔物か解るようになってくる。迷いスライムだと思った瞬間に適切な攻撃が出来ないと難しいんだ。俺は出来る。嫌という程師匠に叩き込まれたからな。迷いスライムは、師匠も逃がさないっていうし。絶対に狩るって言うからな。
だから、マジックバッグを貸すのはまだだ。それに、ある程度は信用しているが、持ち逃げされないとも限らない。獣人の特徴を考えれば、無いと断言しても良いとは思うが、念のためと言う事もある。獣人全員が根っからの善人であるという訳ではない。……まあ、オーロンドたちは善人だとは思うがな。子供にも配慮するし、何よりも、魔法という力を得たからと言って、人間を見下げる様な事もしない。それだけ人として出来上がっているといってもいいんだよ。ただ、余りにも手厚くし過ぎるのもあれだからな。獣人だけを贔屓していると思われても困る。人間がちゃんと魔法を教えてくれと言ってくれば教えるし、その修行に付き合う事もする。だが、人間だとそこで止まるんだよな。その技術を他の人に無償で教えてやってくれと言って、どれだけの人間が教えてくれるかどうかだ。恐らくだが、対価を支払う事を求めたり、俺の作った道具を売ったりするだけで、何も指導しないと言う事もあり得る。
獣人にはそれがない。彼らは無償で獣人たちに魔法を教えるだろうし、自分たちが抜かされるという恐怖がない。人間にはそれがあるんだよな。他人に抜かされるかもしれないという恐怖が。それが人間の差別意識を強くする。それだから人間は差別して、自分の地位を安定させたがる。そんな事は、団栗の背比べであると言う事に、気が付きながらも止める事が出来ない。それが人間という生き物だ。それは前世でも当てはまる。事ある毎に足の引っ張り合いをする。そんな事をしても、自分の地位が向上する訳でもないのにな。他者を先に行かせることが出来るのは、獣人ならではの特徴だ。彼らはその後に、遅れた仲間を引き上げることをする。共に前に進んでいける生き物だ。そう言う種族なんだよ。獣人ってのはな。
そして、翌朝。
「おい、もっと詰めれないか?」
「無茶言うな。武器も持たないといけないんだ。これ以上入るか」
「仕方ねえか。稼げるときに稼いでおきたいんだがな」
「まあ、また来れば良いだろ? 店主、次に来るのは15日くらい後だとは思う。まずは仲間に魔法を教えないといけないからな」
「ああ、戻ってこない事は心配していない。ここで稼げるのであれば、帰ってくるのが道理だからな」
「持ち逃げなんてする訳がない。俺たちを舐めて貰っては困るな」
「ああ、人間とは違うんだ。獣人は同朋を見捨てない。仲間を見捨てない。俺たちはそれを誇りに思っている」
「だろうな。だから獣人であるオーロンドたちに手厚くしているんだ。仲間には恩で返す。それが獣人の常識、だろう?」
「ふん。エルフなのによく解っているじゃねえか」
「それじゃあ、世話になったな。また戻ってくる」
「また戻ってきて、しっかりと稼がせてもらおうじゃないか」
「いってらっしゃい。オーロンドさんたち」
「エレナちゃんも頑張るんだぞ」
「悪い大人に騙されるんじゃねえぞ?」
「なあに、この店では悪さは出来ないだろ?」
「馬鹿野郎。帰り道もあるだろうが」
全く。こんなお人好し連中が借金の踏み倒しなんてあり得ないだろう。これが人間だったらあり得るのが不思議だ。なんでここまで差がついてしまったのか。人間と獣人。同じ人の筈なんだけどな。蹴落とす側と、引き上げる側。全く正反対なんだから。ただ、人間も始めから愚かだったはずはないんだ。何処かで踏み間違えたから、こういう状況になっているだけだとは思うんだけどな。何をどう掛け間違えたのか。人間と獣人、何処でこんなに差がついてしまったんだろうな。
「さて。エレナちゃんは店番をお願いね。新しいポーションの値段は覚えているよね?」
「えっと、俊敏ポーションですよね? 足が早くなるポーション。銅貨5枚で売ります。良かったですよね?」
「ああ、大丈夫だ。何か説明が必要な場合や、文句がある奴が居たら呼んでくれ。宿屋で食事を買ってきたら、後は奥で錬金術をしているから」
「解りました」
さて、今日もまた商売をしなければならない。まあ、稼ぎはそこそこって感じだろうな。そもそもポーションは安い。その他の魔道具が高いんだけど、それは売れないだろうからな。そう言うのも宣伝していかないといけない。村の人に買ってもらうには、まだまだ村人の資金力が足りないしな。その辺も何とかしていかないといけないんだけど。




