第6章 配信者サッカーをする5
タカマサ
「……俺の将来の夢、なんだかわかるか?」
⸻
【陽一】
「うーん、料理人!!
桂むきシュルシュルシュルみたいな、
和食の超一流料理人とかだろ?」
【うんぽこ】
「……料理人、かな。」
【陽一】
「まさかのシンクロニシティw」
⸻
タカマサ
「………!? …!!?」
陽一
「(えっ、反応がヤバい。動揺してるぞこの巨人…!)」
うんぽこ
「(あれ……今日初めて“心を撃ち抜いた”気がする……!?)」
タカマサ
「ああ。そうだ。
俺の夢は――
料理人になって、食べた人を笑顔にすることだ。
親父の肉も使って、胸を張れる料理を作りたい。」
陽一
「完全に合ってたらしいw」
タカマサ
「だから今回の条件はこれだ。」
巨体がぐっと前に出る。
まな板の前に立つと、巨大な包丁が“チャキ”と輝く。
タカマサ
「俺が作った料理で“FOODバトル”をしてもらう。
大食い対決だ。
制限時間内に完食できたら――
お前らの勝ち。
俺はサッカー部に入る。」
⸻
【陽一】
「いや条件のスケールどうなってんだよ!?
フィジカル勝負じゃなくてまさかの胃袋勝負!?
俺たち、全国の前に“肉屋の胃袋試験”通らなきゃいけないの!?」
【うんぽこ】
「……よし!やる!!
お前の夢も、全国もまとめて背負ってやる!!」
陽一
「うんぽこ、急にかっこつけたけど、胃袋勝負だぞ!?
努力とか精神論じゃどうにもならないタイプの条件だぞ!?」
いけんのかぁ??」
タカマサ
「挑戦者は――
お前らの中から1人。
そいつが完食できれば、それでOKだ。」
静寂。
みんなで顔を見合わせる。
⸻
針間
「……じゃあ、俺が行こうか?
相撲部でも大食いな方ではあったし。」
冴島と白壁は、
「それしかない」
と言わんばかりに、全力で頷く。
冴島
「た、食えるよな針間……?」
白壁
「胃袋も“守備範囲”広そうだし……」
⸻
だが、そこに――
うんぽこ
「いや、俺が行きます。」
全員が一瞬固まる。
うんぽこ
「俺が行かなきゃいけない気がするんです。
……俺、大食いじゃありません。
でもだからこそ――食べ切れるんです。
タカマサは、自分の料理の“量と味”に絶対の自信を持ってる。
そさてだからこそ、俺には食べ切れるんです。」
⸻
一同
「…………??」
陽一
「いや、みんなは理解してないけど……
俺は魂で理解した。
こういうことあるんだよ。絶対に引けない時。打算的な考えからじゃ切り開けないなってピンと来る時。これは主人公だわ。」
冴島
「……いや、何言ってんだこいつは……?」
白壁
「でも……なんか目がマジだから……止められねぇ……」
針間
「…………(無言の肯定)」
⸻
うんぽこ
「タカマサ。
俺に挑戦させてくれ。
絶対に――食べ切る。」
タカマサは一瞬だけ目を見開いた後、
ゆっくりと頷く。
⸻
【コメント】
・急に主人公力100になった
・なんか凛々しいw
・言ってること全然わからんの草
・でも熱意がある奴はだいたい勝つ
・針間の表情が全部物語ってる
タカマサ
「準備する。
……覚悟して待ってろ。」
巨体を揺らしながら、
高政は暖簾の奥へと消えていく。
次の瞬間――
ドン、ドン、ドン、ドン……ッ!
鈍く、重く、振動する音。
巨大な肉塊を台に叩きつけ、
鋭い包丁で切り裂く音が連続で響き渡る。
店全体が“料理場ではなく戦場”のような緊迫感で満たされていく。
⸻
部員たちは成す術もなく、
ただの観客と化していた。
冴島
「……マジで戦の音だな、あれ。」
白壁
「……肉切る音で鼓膜が震えるの初めてだ……」
針間
(無言で頷く)
⸻
一方、うんぽこは――
静かに目を閉じ、精神統一をしていた。
これから始まるのは、
“食事”などとは呼べない。
栄養摂取の次元を完全に超越した――イクサ。
この戦いで、
あのフィジカル怪獣、戦神・肉のタカマサを打ち破る。
ただ、その一点に全集中していた。
呼吸を整え、
胃袋を握りしめるように拳を握り、
心を研ぎ澄ませていく。
うんぽこ(心の声)
「……これはただの食事じゃない。
一口一口が、全国への道に繋がる……!」
⸻
そして厨房奥では――
タカマサもまた、
異様な集中を見せていた。
彼にとっても、
これはただの料理ではない。
「自分の人生を変える一皿」
その覚悟が、剛腕から伝わってくる。
だが、
その腕でキャベツを叩き切り、
肉をミリ単位で切り分けていく手捌きは、
驚くほどしなやかで美しい。
まるで刀鍛冶のような精度。
職人の静かな炎。
タカマサ(心の声)
(……“美味い”で終わらせる気はねぇ。
食わせて、認めさせて、初めて俺は進めるんだ……!)
厨房から立ち上る湯気は、
戦いの狼煙のようであった。
タカマサ
「……できたぞ。
制限時間は――1時間。」
タカマサが両腕で抱えて現れたのは……
もう一人のタカマサだった。いや、大きな大きなどんぶりであった。
いや、正確には――
異様なほど巨大などんぶりに、
これでもかと詰め込まれた揚げ物の山脈であった。
その下にうっすらと覗くのは、
タカマサが刀のような包丁で切り揃えた
極細の“キャベツの絨毯”。
豪快さと繊細さの両面を併せ持つ、
まさにタカマサ渾身の一杯。
「タカマサが二人いる」と錯覚する者がいてもおかしくない。
そこに込められた労力も魂も、誰の目にも明らかだった。
⸻
場は完全に支配された。
部員たちは誰ひとり言葉を発せない。
針間でさえ表情を固め、
冴島の額からはじわりと冷汗が流れる。
白壁
「……コ、コヒュー………(声にならない悲鳴)」
⸻
うんぽこ
「……ありがとう。
いただきます。」
陽一
「100点じゃない?
作り手への第一声、
“ありがとう、いただきます”。
これ100点じゃない??」
⸻
うんぽこは決めていた。
丼を見た瞬間に。
具だけを先に食べる――
確かに合理的な攻略法ではある。
しかし、
目の前のこれはタカマサの魂そのもの。
タカマサが最も望む“食べ方”で勝つこと。
それこそがこの戦いの条件だと、
うんぽこは直感していた。
だから――
具とご飯を一緒に。
その旨さを、全身で受けとめる。
⸻
陽一
「美味い!!
馳走じゃあ!!
もっと持ってまいれ!!!」
⸻
うんぽこは無言で黙々と食べ進めていく。
観客席の部員たちは固唾を飲む。
うんぽこの表情には緊張が張りついていた。
だがそれだけではない。
本来なら頬が緩むほどの美味さを必死に押し殺しているのだ。
うんぽこ
「……うめえよ。」
一同
「……………」
(そういう量じゃねえ)
タカマサ
「……それはよかった。」
⸻
タイマーは刻々と進み、
うんぽこの箸は一度も止まらない。
ようやく半分に到達したころ――
針間(心の声)
「半分……現実的な量じゃない。
俺には無理だ。」
白壁(心の声)
「うんぽこ……凄いな……
僕には絶対できない。」
冴島
「よし!頑張れうんぽこ!!
半分だ!!ここから後半で勝ち切れ!!
オメーらも応援すんぞ!!」
みんな
「!!!!???」
気付けば、その厳かな空気に飲まれて、
全員、言葉を失っていたのだった。
残り30分を切る。
ここからは一口ごとが生死を分ける。1秒1秒の勝負に勝ち続ける事でしか、生きて帰ることはできない。
全員がそう悟っていた。
⸻
うんぽこ
「こんなに食べても……まだうめえ。
きっと最後のひと口までうめえよ……
絶対に最後まで食べ切って……
俺がそれを証明するんだ……!」
口の中に食べ物があり、
ふがふがしながらではあったが、
誰もがその言葉の意図を理解した。
熱かった。
胸を打たれた。
タカマサにさえ――その熱は伝染し
気付けば、
「頑張れ……」
と小さく呟いていた。
⸻
うんぽこ
(ああ……腹がいっぱいで意識が飛びそうだ。
もう十分頑張った気もする……
でも――
この“美味しい”という感覚だけは絶対に鈍らせたくない。
このメチャクチャ美味くて、
メチャクチャでかいのが“タカマサ”なんだ。
……全部飲み込んでやる。
最後の一粒まで。
絶対に、絶対になぁ!!)
タカマサは無言で、そっと小皿を差し出した。
そこに乗っていたのは――
真っ赤な紅生姜。
それはただの薬味ではなかった。
小さな優しさであり、
静かな応援であり、
戦士への“加護”だった。
それを受け取ったうんぽこは、
はっきりと笑った。
うんぽこ
「……ありがとう。
さらに美味さが――倍増したぜ。」
⸻
ここで熱いBGMが流れ出す
残り時間は刻一刻と削れていく。
しかしうんぽこの動きは、明らかに“加速”していた。
唐揚げを口に放り込む。
その横のとんかつを素早く一口齧る。
キャベツと米をかき込み、
紅生姜で味覚を整え、
すぐ次の肉へ――。
速度とリズムが、完全に噛み合っていた。
終わりが見えている。
あと少し。
ほんの少し。
⸻
冴島の馬鹿でかい声が響く。
白壁の自信のない声にも力が宿る。
普段冷静な針間でさえ、声が震えている。
そして――
タカマサも、ついに前のめりだった。
その目は、
“料理を出した職人”のものではない。
ひとりの仲間を応援する少年の目だった。
⸻
一方で、
ただひとり冷静だったのが――
うんぽこ。
彼は知っていた。
勝負の分かれ目を。
一口の重さを。
緊張が途切れた瞬間、敗北が訪れることを。
うんぽこの心
「落ち着くな。
一息入れるな。
安心するな、慢心するな。
1秒後に負けていてもおかしくない。
この緊張感こそが俺を支えてる。
手を動かせ。
口を動かせ。
リズムを崩すな。
リズムよく――飲み込め!!」
⸻
そしてついに。
あと二口。
残り2分。
冴島はもう両手を突き上げて叫んでいる。
冴島
「うおおおお!!いける!!いけるぞ!!」
白壁
「うんぽこ!無理しないで……いや、でも頑張れ!!」
針間
「……ッ!!」
だがうんぽこは迷わない。
最後の一切れのハンバーグを掴み、
米とキャベツを一緒に、
まるで“魂ごと”詰め込むように口へ押し込んだ。
冴島
「あっ!?無茶すんなぁー!」
針間
「……っ!??」
白壁
「うんぽこくんー!?」
周囲は理解不能だった。
あまりにも豪快すぎる締めの一口。
だがタカマサだけはわかっていた。
「それが、この丼を一番美味しく終わらせる食べ方だ」
と。
⸻
うんぽこは無言で咀嚼する。
無言で飲み下す。
一度、息を整え――
うんぽこ
「……ご馳走様でした。
本当に……美味しかったです。」
残り30秒。
勝利。
肉のタカマサの挑戦を、見事に打ち破った。
⸻
「やったーーー!!!」
部員たちが爆発するように歓声を挙げる。
冴島
「うんぽこおおおおお!!!」
白壁
「すごい……すごいよ……!」
針間
(黙って頷く。表情が崩れている)
⸻
タカマサは一歩前に出て、
深く深く頭を下げた。
タカマサ
「……うんぽこ。
ありがとう。
俺……サッカーやるよ。」
その声は、
料理人としての誇りと、
ひとりの少年としての決意が
しっかりと混じった声だった。
【陽一】
「……とんでもない戦力を手に入れてしまったのかもしれない。
明らかに化け物じゃない?肉のタカマサ。
これ……強キャラだよね?
ヌルゲーになっちゃうかな……?」
【コメント】
・能力見ようぜ
・入部おめ!
・あのフードバトル熱すぎたw
⸻
【陽一】
「じゃ、みんな……
見てくださいコレ。
身長……2.2メートル。
アルプスヒマラヤ造山帯じゃん。
歩く活断層じゃん。
人間山脈・肉屋のセガレ・肉のタカマサ!
みんなご贔屓に!!」
(ステータス画面を開く)
【陽一】
「能力も高ぇな……
キック力……バケモン。
守備力……しっかりしてる。
で、必殺技……ロングシュート持ちね。
つまり、
遠距離から“高政弾道ミサイル”撃ち込めるタイプ。
後ろも守れる、点も取れる……
万能型じゃん!!」
【コメント】
・でけぇw
・つええww
・歩く人間山脈は草
・撃たれたら止められないやつ
⸻
しかし悲劇も訪れる
【陽一】
「……ってちょっと待って!?
針間がさぁ、さっきのイベントでも“いつメン枠”みたいな顔して自己主張してたじゃん??
この能力見て!!
めっっちゃ弱いんですけどw
え??
こんな弱かった??」
(ステータス比較)
【陽一】
「いやいやいや待てよ……
俺の“ケンカキック”止めてたよな?
え、何??????」
【コメント】
・よっわw
・これゴールガバガバでは?
・イベント補正強すぎだろ
・針間は努力枠だよ
・特訓したら化けるタイプ!!
⸻
【陽一】
「くそぉ……気に入っちゃったんだよな針間……
でも、この能力じゃ試合で使えねぇ!!
鍛えるしかねぇぞ針間!!
お前は伸びる!!(多分)
全国は遠いぞ!!
まずは能力の底上げからだ!!」
コメント
・努力枠いいぞ
・ずっと応援してる
・針間がんばれぇぇ!!




