王太子に婚約破棄されましたが、悲劇のヒロイン役の彼女は私の親友なので、全部計画通りです
「アリシア・フォン・ヴァインベルク! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄する!」
金の刺繍が施された豪奢な舞台の上から、アルフォンス王太子の張りのある声が、静まり返った卒業記念パーティーの会場に響き渡った。
次代の王たる彼の隣には、庇護欲をそそる可憐な少女、男爵令嬢ーーダイアナが寄り添い、その肩はか細く震えている。対照的に、王太子の指さす先に立つ公爵令嬢――アリシアは、凛々しい姿勢を少しも崩さず、ただ静かにその言葉を受け止めていた。
王家が誇る至宝とも謳われる、プラチナブロンドの髪。そして、どんな感情も映さないことから「氷の薔薇」と評される紫水晶の瞳。彫像のように整った顔立ちは、絶世の美貌と呼ぶにふさわしいが、今はその美しさが逆に冷酷さを際立たせていた。
「私、婚約破棄されるようなこといたしましたか?」
アリシアは、扇で口元を隠すこともなく、凛とした声で問い返した。そのあまりに落ち着き払った態度に、告発した側の王太子がわずかに怯んだのを誰が気づいただろうか。
「白々しい! 貴様がダイアナにしてきた数々の非道な行い、そのすべてが罪だ! 心優しき彼女が、どれほど貴様に虐げられてきたか!」
王太子が叫ぶと、彼の後ろに控えていた取り巻きたちが、待っていましたとばかりに「証拠」を運び込む。破り捨てられた教科書、インクで汚された純白のドレス、そしてダイアナの机に置かれていたという呪いの人形まがいの藁人形。これ見よがしに壇上に並べられる品々を、アリシアは冷めた目で見下ろした。
「……ずいぶんと、古風な嫌がらせですこと。もう少し、わたくしの独創性を信頼していただきたかったものですわ」
「なっ、何だと!?」
「たとえば、もっとこう……精神的に追い詰めるような、巧妙な手口があったでしょうに。これではただの子供の癇癪。わたくしの品位を疑われます」
予想外のダメ出しに、王太子だけでなく、会場中の誰もが言葉を失った。悲嘆にくれるでもなく、怒りに震えるでもなく、ただ淡々と「嫌がらせのクオリティ」について語る令嬢。その姿は、異様としか言いようがなかった。
(始まったわね……。アルフォンス殿下、思ったより声が上ずっているけれど、及第点かしら)
アリシアは内心で冷静に分析しながら、視線をそっと壇下のダイアナへと送る。
親友は、顔を伏せて震える完璧な演技を続けていた。だが、アリシアだけには分かる。あの震えは、悲しみではなく、こみ上げてくる笑いを必死にこらえている時の癖だということを。
(ダイアナ、笑いを堪えるときは、もう少し口元を引き締めなさいと、あれほど言ったでしょうに)
心の中で的確なダメ出しを送りつつ、アリシアは再び王太子へと向き直る。
「それで、殿下。婚約破棄は結構ですけれど、その後の手続きについては、宰相閣下と我がヴァインベルク公爵家とで、すでに話は通っておりますの?」
「そ、それはこれからだ! だが、これだけの証拠がある以上、貴様に否やは言わせん!」
「ええ、もちろん。否やなどございませんわ。むしろ、感謝したいくらいですもの」
ふわり、と。
氷の薔薇が、初めて微笑んだ。それは慈愛に満ちた聖母のような、それでいて全てを諦観したような、あまりにも美しい笑みだった。
「これでやっと、わたくしは自由になれますから」
その言葉の意味を、アルフォンス王太子は理解できなかった。ただ、自分の思い描いていた展開と何かが決定的に違う、という焦りだけが胸を焼く。彼は、アリシアが泣き崩れ、許しを請う姿を想像していたのだ。それを寛大にも許し修道院への追放を言い渡すという完璧なシナリオを。
この茶番劇の中でただ一人、冷静に事の推移を見守る者がいた。
王太子の側近であり、この国で数少ない常識人との呼び声高い、クリストフ・ダールシュタット侯爵子息である。
(おかしい。絶対におかしい)
クリストフは、壇上の主君と、その向かいに立つ公爵令嬢を交互に見比べながら、内心で頭を抱えていた。
(まず、なぜ断罪されているアリシア様の方が、告発している王太子殿下よりも堂々としているんだ? まるで、この展開を待ち望んでいたとでも言うように。そして、被害者であるはずのダイアナ嬢……彼女は確かに泣いているが、時折アリシア様に向ける視線に、妙な共犯者意識が混じっているように見えるのは、気のせいか?)
彼の目には、この光景が、出来の悪い三文芝居にしか見えなかった。そして、その脚本家は、おそらく目の前の「悪役令嬢」本人なのではないか、とさえ思えてくる。
「殿下、よろしければ証拠の一つ一つについて、わたくしから説明させていただいても?」
アリシアが、芝居がかった仕草でスカートの裾を持ち、優雅に一礼した。王太子は戸惑いながらも、反論の機会を与えてやる、という傲慢な態度で頷く。
「許す!言うがいい、どんな見苦しい言い訳をするのか、聞いてやろう!」
「言い訳などとんでもない。事実確認ですわ」
アリシアはすっと人差し指を立て、まず破られた教科書を指した。
「まず、こちらの教科書。確かにわたくしが、ダイアナの目の前で破り捨てました。ですが、これは彼女から頼まれたことなのです。『わたくし、教科書をすぐに汚してしまうので、予備が欲しいのです。でも、平民の身では気軽に買えなくて……アリシア様が悪役を演じて破ってくだされば、王太子殿下がきっと新しいものをくださるはずですわ』と、涙ながらに」
「なっ……」
「ダイアナ、そうでしたわよね?」
アリシアが舞台袖の女優に声をかけるように問いかけると、ダイアナはびくりと肩を揺らし、慌てて顔を上げた。その目は潤んでいるが、焦りの色が濃い。
「そ、そんなこと……! わたくし、頼んでなど……!」
「あら、謙遜なさらないで。あなたはいつも、そうやって遠慮なさる。わたくし、あなたのその慎ましやかなところが、大好きですのに」
慈しむようなアリシアの言葉に、ダイアナの顔が引きつった。
(大好き、じゃないでしょう!この悪魔!アドリブでこっちに振ってこないでって、打ち合わせで言ったじゃない!)
ダイアナの心の叫びは、もちろん誰にも届かない。
次に、アリシアは汚されたドレスを指す。
「こちらのドレスのシミも、もちろんわたくしがやりましたわ。パーティーの直前、給仕が運んでいた赤ワインのグラスにわざとぶつかって。ですが、これもダイアナの計算の内ですのよ。『このドレス、少しデザインが古くて、本当は新しいものが欲しいんです。でも、殿下にねだるのは気が引けて……』と、上目遣いでねだられてしまっては、断れませんもの」
「そ、そんなわけがあるか!ダイアナは、そんなことを言う娘ではない!」
「ええ、ええ、そうでしょうとも! 殿下の前では、決して」
アリシアの言葉は、まるで「殿下の見ていないところでは、彼女は違う顔を持っているのですよ」とでも言いたげだった。アルフォンスは純粋培養の王子様である。人の裏側など想像したこともない。彼は完全に混乱していた。
そして最後に、アリシアは不気味な藁人形を、指先でつまみ上げた。その仕草すら、まるで汚いものに触れるかのように優雅だ。
「そして、極めつけがこれ。正直に申し上げますと、これだけはわたくしの作ではございません」
「何!?」
「わたくし、このような非科学的なものは信じませんし、何より、美的センスが合いませんわ。こんなものを人の机に入れるなんて、品性を疑います」
バッサリと切り捨てるアリシア。
「では、誰がこれを!」と王太子が叫ぶと、彼女は「さあ?」と小首を傾げた。
「ですが、ダイアナは大変喜んでおりましたわ。『これでまた一つ、アリシア様の罪状が増えました! ありがとうございます、名無しの協力者様!』と、この人形を抱きしめて」
「ダイアナが!?」
「ええ。彼女、意外とリアリストですから。感傷よりも実利を取るタイプですのよ」
もはや、何が真実で何が嘘なのか、誰にも分からなくなっていた。
アリシアの語るダイアナ像は、王太子の知る健気でか弱い少女とは似ても似つかない、したたかな策士の姿だった。
(まずい……アリシア様のペースだ……!)
クリストフだけが、この異常事態の本質を理解していた。アリシアは、罪を否定していない。むしろ、全てを認めた上で、その動機を「ダイアナに頼まれたから」という、あり得ない方向に捻じ曲げているのだ。
これにより、単純な「いじめ」の構図は崩れ、「もしかして、裏で糸を引いているのはダイアナ嬢の方なのでは?」という疑惑を、聴衆の心に植え付け始めている。
(殿下は、ダイアナ嬢を聖女のように信じ込んでいるから、アリシア様の言葉を「悪あがき」としか捉えられない。だが、周囲の貴族たちは違う。彼らは、人の裏表を見てきた者たちだ。この状況、単純な断罪劇では終わらないぞ……!)
クリストフの危惧通り、会場の雰囲気は、当初のダイアナへの同情から、戸惑いと疑念が入り混じった奇妙なものへと変化していた。
「もう、よせ! アリシア!」
ついに、アルフォンス王太子が我慢の限界とばかりに叫んだ。
「貴様の戯言は聞き飽きた! 罪を認めぬと言うのなら、それ相応の罰を与えるまでだ!」
「あら、ですから罪は認めておりますわ。ただ、動機についてご説明しただけですのに」
どこまでも噛み合わない会話に、王太子はこめかみをピクピクと痙攣させる。
その時だった。
それまで黙って涙を流していた(フリをしていた)ダイアナが、すっと顔を上げた。その瞳は赤く腫れているが、強い意志の光が宿っている。
「……もう、やめてください、アリシア様」
か細く、しかし、芯の通った声が、会場に響いた。
「わたくしのために、これ以上嘘を重ねるのは、やめてください……!」
ダイアナは、アリシアをまっすぐに見つめ、悲痛な表情で訴える。
「確かに、わたくしは不満を漏らしたかもしれません。ですが、それは、アリシア様が、わたくしのような者にも、唯一優しくしてくださったからです……。わたくし、その優しさに甘えてしまったのです……!でも、アリシア様にそのように頼んではおりません……!!おそらくアリシア様は、優しいからそのように解釈されて行動を……。」
(……来たわね、ダイアナ。最高のタイミングよ!)
アリシアの心に、賞賛の嵐が吹き荒れる。
ダイアナは、アリシアの「暴露」を逆手に取ったのだ。「アリシアは本当は優しい人。彼女の行動は、全て私のことを思ってやってくれたことなのだ」と、聴衆に思わせる一世一代の大芝居。
これにより、ダイアナは「悪だくみをすべて自分のせいに仕向けようとしたアリシアを許した正真正銘の聖女」のようだと思われ、向けられていた戸惑いや疑念を払拭し、アリシアは「ダイアナに優しくするなど、根は優しいが、嫉妬に狂って罪を犯し、それを友人のせいにしようとした哀れな悪女」という、最も収まりの良い役柄に落ち着くことができる。
「ダイアナ……あなたという人は……」
アリシアは、扇で顔を覆い、嗚咽を漏らす(フリをする)。
「わたくし、あなたのその優しさにつけ込んで……! 不満を話してしまい…、それを思った貴方はこんなことを……、ああ、なんて卑劣な女なのでしょう、わたくしは!」
壇上で繰り広げられる、二人の令嬢の迫真の演技。
王太子は「そうだ、そうだ! ダイアナは、やはり天使のような娘だ!」と感動し、聴衆は「なんと痛ましい……」「公爵令嬢も、王太子妃の重圧に耐えかねて……」と同情的な空気に包まれる。
完璧な幕引き。
予定通りのエンディング。
――ただ一人、クリストフ・ダールシュタット侯爵子息を除いては。
(……茶番だ。壮大な茶番劇だ!)
クリストフは、天を仰いだ。
なぜなら彼は、見てしまったのだ。
嗚咽を漏らすアリシアが、扇の陰で、親友のダイアナに向け、そっと親指を立てて「Good Job!」のサインを送っていたのを。
そしてダイアナが、涙を流しながらウィンクを返したのを。
(この二人……グルだ!)
確信した瞬間、クリストフは深い頭痛を覚えた。
そして同時に、猛烈な好奇心に駆られていた。
(一体、何のために?こんなに大々的にことを起こせば、ダイアナは次期王太子妃の座に座れるとしても婚約者から奪い取ったという事実は、今後悪影響を及ぼすだろうし、アリシアにいたっては公爵令嬢の地位を捨ててしまった。なぜ、彼女たちは、こんな手の込んだ芝居を打ったんだ……?)
答えの出ない問いに、彼の眉間の皺が、また一段と深くなった。
こうして、王立学園卒業記念パーティーは、歴史に残る「断罪劇」として、ひとまずの閉幕を迎えたのだった。
―・―・―
二人の友情は、十年前、まだ少女と呼ぶには幼い頃にまで遡る。
王宮の片隅にある書庫。そこが、二人の出会いの場所だった。
すでに「完璧な公爵令嬢」「氷の薔薇」と呼ばれ始めていたアリシアは、大人びた子供だった。常に期待と羨望の目に晒され、同年代の令嬢たちとは、決して埋まらない溝があった。誰もが彼女の地位と家柄にしか興味を示さず、アリシアは孤独だった。
そんな彼女の唯一の安息が、書庫で古今東西の物語に没頭することだった。
あの日、彼女はどうしても読みたい高位魔法理論書の背表紙を、高い書架の上に見つけて途方に暮れていた。完璧を求められる自分が、本一つ取れない姿を誰にも見られたくなかった。
その時、声をかけてきたのがダイアナだった。男爵家の娘である彼女は、父の使いでたまたま王宮を訪れていたのだ。
「ごきげんよう、ヴァインベルク公爵令嬢様。その本、わたくし一人では届きませんが、お二人ならあるいはとれるかもしれません」
他の子供なら萎縮するか、あるいは遠巻きに笑う場面。だが、ダイアナは違った。彼女はアリシアの肩書きではなく、その瞳の奥にある純粋な知的好奇心を見ていた。
二人は、子供らしい知恵を絞り、近くにあった踏み台と長い定規を組み合わせて、見事「難攻不落の書物」を手に入れることに成功した。そのささやかな共同作業と達成感が、アリシアの心をどれほど溶かしたことか。
それ以来、ダイアナはアリシアが唯一「ただのアリシア」でいられる存在となった。建前や社交辞令の裏に隠された本音を、ダイアナだけは見抜いてくれた。彼女の前でだけ、氷の薔薇は、年相応の少女に戻れたのだ。
この友情は、二人だけの秘密。窮屈な貴族社会で生き抜くための、共犯関係にも似た強い絆だった。だからこそ、アリシアは自分の全てを賭けてでも、親友の未来を守りたいと思った。そしてダイアナも、アリシアの本当の願いを叶えるためなら、どんな役でも演じきろうと誓ったのだ。
―・―・―
喧騒と視線が渦巻くホールを後にして、アリシアは誰にも気づかれぬよう、慣れた足取りで東棟のテラスへと向かっていた。月明かりだけが差し込むそこは、綺麗に手入れされた中庭を一望できる、彼女のお気に入りの場所だった。
「――お疲れ様、アリシア。主役の気分はどうだった?」
先に着いていた暗闇に隠れた人影が、手すりに寄りかかりながら、からかうような声で振り返る。先ほどまで壇下でか弱く泣いていたはずの少女、ダイアナだった。その目にもう涙はなく、夜空を映して悪戯っぽく輝いている。
「最悪よ、ダイアナ。わたくしの演技に、自分で鳥肌が立ったわ。『ああ、なんて卑劣な女なのでしょう!自分のやったことを友人のせいにするなんて』って思ったわ。脚本を書いたのは自分ですけれど、二度とごめんだわ」
「あら、私は結構びっくりしたわよ。私のせいだって暴露したあと私に降ってくるなんて思わなかったもの。急なアドリブに冷や汗かいたわよ」
「ふふ、どうせ、こんなことやるの最後だしちょっとおふざけしてみちゃったわ。でも計画が上手くいってよかった」
軽口を叩き合いながら、二人はくすくすと笑い声を漏らす。数分前まで国中を揺るがすスキャンダルの渦中にいたとは思えないほど、その空気は穏やかで、親密さに満ちていた。
「そうね。これで第一段階は成功ね」
ダイアナが、ほっと息をつく。
「ええ。『王太子に溺愛されるも、身分の差から正式な婚約者になれず、悪女の策略によって心に深い傷を負った悲劇のヒロイン』。完璧な役柄の完成よ。これなら、王太子殿下もすぐに婚約を、とは言えないでしょうし、周囲も同情して、あなたをしばらくそっとしておいてくれるはず」
「あなたの方は大丈夫? これであなたは公式に『国を追放されてもおかしくない哀れな悪女』よ。ヴァインベルク公爵も、お怒りになるんじゃ……」
心配そうなダイアナに、アリシアは静かに首を振った。
「お父様は、政治の道具が一つ、自分の意思で壊れたことに腹を立てるでしょう。でも、それだけよ。あの方は、ヴァインベルク家の利益にならないものは、驚くほど無関心だから」
その声には、長年の諦念が滲んでいた。
彼女たちのような、家柄だけが価値を決める世界に生まれた女に、自由な選択肢などない。
アリシアには、生まれた時から「王太子妃」という道しか用意されていなかった。アルフォンス王太子がどんなに愚鈍で、自己中心的な人間であろうと、拒否権はなかった。
ダイアナも同じだった。男爵家という弱い立場では、王太子の寵愛は栄誉であると同時に、断ることのできない呪いだった。もし彼女が王太子の求愛を断れば、それは王家への反逆とみなされ、一家は破滅する。
そして何より、ダイアナには、心に決めた男性がいた。王太子にその存在を知られれば、男爵家という家柄の彼がどうなるか、火を見るより明らかだった。
「結局、これしか方法がなかったのよ」
アリシアは、夜風に髪をなびかせながら呟く。
「わたくしが悪役となり、殿下の正義感と自己顕示欲を満たした上で、婚約を破棄してもらう。そしてあなたは、被害者の立場を貫くことで、殿下からの過剰な好意を『心の傷』を理由に受け流し、時間稼ぎをする。そうしなければ、わたくしは一生あの鳥籠の中、そしてあなたは、愛する人と引き裂かれていた」
これが、二人が半年の歳月をかけて練り上げた計画の真相だった。
誰の家も潰さず、誰の命も危険に晒さず、ただ自分たちの未来だけを手に入れるための、唯一の活路。それは、一人の少女が、国中から憎まれる悪女の烙印を押されるという、あまりにも大きな代償を払うことでしか成り立たない、危険な賭けだったのだ。
「……本当に、感謝しているわ、アリシア」
「やめてちょうだい。感傷的なのは柄じゃないわ。それに、わたくしはあなたの為だけじゃない。自分の自由の為でもあるのだから。これでお互い様よ」
素っ気なく言うアリシアだったが、その横顔は少しだけ優しかった。
「さて、第二段階に移る前に、少し休みましょう。あなたはこれから、しばらく感傷に浸る悲劇のヒロインを演じなければならないのだから、大変よ」
「あなたこそ。これから公爵様に、どう説明するの?」
「事実を、脚色を交えて話すだけよ。『殿下とダイアナの燃え上がるような恋を見て、身を引く決意をいたしました。ですが、ただ身を引くだけではヴァインベルク家の沽券に関わります。ならばいっそ、私が悪女の汚名を着て、殿下にはダイアナを救う英雄になっていただこうと……』。きっと、お父様は頭を抱えながらも、これが最善の落としどころだと理解するわ」
どこまでも計算し尽くされたアリシアの言葉に、ダイアナは感嘆のため息を漏らした。
やはり、自分の親友は、王太子妃の器になど収まるべき人間ではないのだ、と。
「……見事な筋書きだ。まるで、吟遊詩人が語る物語のようだね」
不意に、背後から静かな声がかけられ、二人は凍りついた。
月明かりの作る影の中から、ゆっくりと姿を現したのは、アルフォンス王太子の側近、クリストフ・ダールシュタット侯爵子息だった。その端正な顔には、いつものような困り顔ではなく、全てを見通したような、それでいて純粋な知的好奇心に満ちた笑みが浮かんでいた。
「いつから、そこに……?」
アリシアが、初めて感情の乗った声で問う。
「『これでやっと、わたくしは自由になれますから』。あの台詞を聞いた時から、確信していたよ。これは君が書いた脚本なのだと。だから、君ならきっと、ここに来ると思っていた」
クリストフは、驚愕する二人から数歩離れた場所で立ち止まり、優雅に一礼した。
「邪魔をするつもりはない。ただ、一つだけ教えてくれないか。アリシア様。……いや、アリシア嬢」
婚約者ではなくなった彼女を、彼はあえてそう呼んだ。
「君ほどの才女が、なぜこれほど危険な橋を渡ったんだ? 君なら、王太子妃として、いずれは王妃として、この国を実質的に動かすことだってできたはずだ。その未来を、自ら手放した理由が知りたい」
それは、純粋な疑問だった。政治の道具として生きることを受け入れてきた、彼のような貴族の男には、理解できない選択だった。
アリシアは、驚きからすぐに立ち直ると、ふっと息を吐いて、いつもの「氷の薔薇」の仮面を被り直した。
「クリストフ様。あなたも、退屈な方ですのね」
「……どういう意味かな?」
「わたくしは、誰かが敷いたレールの上を走ることに、飽きてしまっただけですわ。たとえその先が、玉座へと続いていたとしても」
彼女は、悪戯が成功した子供のように、くすりと笑った。
「それに、わたくし、人を操るよりも、自分の手で何かを成し遂げる方が、性に合っているようですの」
その答えは、クリストフの予想を遥かに超えていた。権力や地位への執着がない。ただ、自らの意思で、自らの人生を歩みたい。あまりにも純粋で、あまりにも力強いその願いに、クリストフは一瞬、言葉を失った。
「……そうか。君は、そういう人間だったのか」
彼は、初めてアリシアという人間の本質に触れたような気がして、軽い衝撃と共に、不思議な感動を覚えていた。
「安心したまえ。今日のことは誰にも話すつもりはない。君たちの『物語』の結末を、一人の観客として、静かに見届けさせてもらうことにするよ」
そう言うと、クリストフはもう一度深く一礼し、音もなくその場を去っていった。
嵐のように現れ、去っていった彼を見送りながら、ダイアナがぽつりと言う。
「……いいの? 彼に知られてしまって」
「ええ。問題ないわ。クリストフ様は、この国で最も口が堅く、最も賢明な方。彼が敵に回らない限り、むしろ心強いくらいよ」
それに、とアリシアは付け加えた。
「わたくしたちの茶番劇に、ただ一人気づいた観客がいるというのも、悪くないでしょう?」
そう言って微笑むアリシアの紫水晶の瞳は、もはや「氷」の冷たさではなく、自らの手で未来を切り開いた者の、静かな自信と熱を帯びていた。
公爵令嬢アリシアの、本当の物語は、まだ始まったばかりだった。
―・―・―
ヴァインベルク公爵家の紋章が刻まれた、重厚なマホガニーの扉を前にして、アリシアは一つ、静かに深呼吸をした。これから始まるのは、卒業パーティーの茶番劇とは比較にならない、本当の意味での戦いだ。相手は、この国で王に次ぐ権力を持つ実の父親、ラインハルト・フォン・ヴァインベルク公爵なのだから。
「入れ」
扉をノックすると、短く、威圧的な声が返ってきた。覚悟を決めて書斎へ足を踏み入れると、父は巨大な執務机の向こうで、氷よりも冷たい視線を娘に向けていた。その手には、今朝の王宮日報が握りしめられている。一面には『公爵令嬢の罪、王太子殿下、涙の婚約破棄!』という、扇情的な見出しが躍っていた。
「……説明しろ、アリシア」
地を這うような低い声だった。
「どこで計算を間違えた? お前ほどの娘が、なぜ、このような醜態を演じるに至ったかをだ」
父は、アリシアが本当に嫉妬に狂ったなどとは微塵も思っていない。彼にとって、娘の行動は理解不能な「計算ミス」でしかなかった。
「計算違いなどではございません、お父様。すべては、ヴァインベルク家の安寧と、王国の未来のために、わたくしが企てたことでございます」
アリシアは、父の真正面に立つと、淀みなく言い放った。
「何?」
「アルフォンス殿下は、次代の王たる器ではございません。そのことは、お父様もとうにご存じのはず。彼の正義感は、ただの自己満足。彼の慈悲は、己の優位性を確認するための道具。もし、わたくしが彼の妃となれば、いずれその愚かさの尻拭いをさせられ、国は傾き、ヴァインベルク家もただでは済みません」
父の眉が、ぴくりと動いた。図星だったからだ。
「殿下がダイアナ嬢に心惹かれているのは、周知の事実。このままでは、わたくしは『寵愛のない王太子妃』となり、いずれダイアナ嬢との関係を邪推され、醜聞の的になっていたでしょう。そうなれば、王家の権威も、我が家の名誉も失墜します。そうなる前に、膿を出し切る必要がございました」
「……それで、自ら悪女の汚名を着たと申すか」
「はい。わたくしが悪となり、殿下には『悪を断罪し、健気な少女を救う英雄』になっていただく。これが、最も穏便に婚約を破棄し、かつ王家の面子を保ち、我が家へのダメージを最小限に抑える唯一の方法でした。わたくし一人の犠牲で、すべてが丸く収まるのですから、安いものかと」
アリシアは、すべてを「家のため」という大義名分のもとに語った。それは嘘ではなかったが、真実のすべてでもない。だが、権力と家の名誉を何より重んじる父を説得するには、これが最も有効な言葉だった。
長い沈黙が、書斎を支配した。
やがて、ラインハルト公爵は、手にした新聞をくしゃりと握りつぶし、深々とため息をついた。
「……愚かな。王太子も、そして、お前も」
「お言葉、痛み入ります」
「もはや、王家との縁は修復不可能だ。お前の処遇だが……」
父は、冷徹な目でアリシアを射抜いた。
「表向きは、病気療養という名目で、王都から離れてもらう。アウベリィブの古びた別邸がある。そこでお前の愚かな行いを、静かに反省するがよい。二度と、私の前に顔を見せるな」
「……はい。謹んで、お受けいたします」
それは、事実上の勘当であり、追放宣告だった。だが、アリシアの心は、歓喜に打ち震えていた。
(アウベリィブ……! 計画通りだわ!)
そこは、父がとうに興味を失った、痩せた土地。しかし、アリシアにとっては、無限の可能性を秘めた「始まりの場所」だった。
その頃、ダイアナは王宮の片隅にある、古い厩舎の裏で人目を忍んでいた。やがて、足音も立てずに一人の青年が現れる。日に焼けた肌と、実直そうな鳶色の瞳が印象的な、近衛騎士団に所属するジュリアンだった。
「ダイアナ、大丈夫だったかい? パーティーでのこと、聞いたよ」
彼は、ダイアナの肩を掴むと、心配そうにその顔を覗き込んだ。
「ええ、大丈夫よ、ジュリアン。……全部、計画通りだから」
ダイアナがことの顛末を小声で話すと、ジュリアンは安堵の息を漏らすと同時に、苦渋の表情を浮かべた。
「そうか……。だが、アリシア様には、とんでもない犠牲を払わせてしまったんだな……。俺たちのために」
「違うわ。これは、アリシア自身の戦いでもあるの。彼女は、やっと自分の人生を手に入れたんだから」
そう言って、ダイアナはジュリアンの胸にそっと顔をうずめた。
「でも、少しだけ怖かった。もし、計画が失敗したら、あなたとはもう二度と会えなくなるんじゃないかって」
「……大丈夫だ。俺が、必ず君を守る」
ジュリアンは、彼女を力強く抱きしめた。
王太子は今、ダイアナを「守るべき聖女」として神聖視している。彼女が「心の傷が癒えるまで、誰とも会いたくない」と言えば、無下にはできないはずだ。その時間を利用して、二人は静かに関係を育み、ほとぼりが冷めるのを待つしかない。
道のりは、まだ遠い。だが、二人には、未来を切り開くための「時間」と、共に戦ってくれる最高の「親友」がいた。
一週間後。
一台の質素な馬車が、王都を離れ、アウベリィブの地へと向かっていた。
乗っているのは、アリシアと、幼い頃から彼女に仕える侍女のアンネだけだ。
「よろしいのですか、お嬢様。こんな……まるで追放のような仕打ちを、お受けになって」
「いいのよ、アンネ。これは追放じゃないわ。門出よ」
アリシアは、馬車の窓から遠ざかっていく王都の景色を眺めながら、晴れやかな顔で言った。
数日後、馬車は目的の別邸に到着した。そこは、噂に違わぬ古びた館で、庭は荒れ放題だった。だが、アリシアはそんなことには目もくれない。彼女は、丘の上に立つ館のテラスから、眼下に広がるアウベリィブの街と、痩せた畑、そして活気のない人々を見下ろしていた。
「素晴らしい……」
アリシアの呟きに、アンネは戸惑った。この寂れた風景の、一体どこが素晴らしいというのだろう。
「アンネ、まず何をすべきか、分かる?」
「は、はい……。まずは、この館の大掃除かと……」
「違うわ」
アリシアは、くるりと振り返ると、アンネに向かって、生まれて初めて見せるような、心からの楽しそうな笑みを浮かべた。
「まず、このアウベリィブ領全体の、過去十年分の歳入と支出に関する台帳を、すべて持ってきなさい。それと、街の商工ギルドの長と、農家の代表者を、明日の午後にここへ呼んでちょうだい」
「え……?」
「のんびりしている時間はないわ。わたくしの新しい人生、ここからが本番ですもの」
その紫水晶の瞳は、もはや氷のように冷たくはなかった。自らの知識と才覚を、思う存分に振るえる場所を見つけた、若き事業家のような熱い輝きに満ち満ちていた。
王太子妃の座を捨てた令嬢が、次に目指すもの。それは、寂れた辺境の地を、自らの手で、この国で最も豊かな場所に変えるという、前代未聞の挑戦だった。
―・―・―
あれから、二年が過ぎた。
王都では、アルフォンス王太子の「悲劇の恋」の噂もすっかり過去のものとなり、人々は新たなゴシップに興じている。ダイアナは、表向きは「失恋の傷が癒えぬ」と社交界から距離を置き、王太子からの見舞いの申し出も巧みに断り続けていた。その裏で、ジュリアンとの愛を静かに育んでいることを知る者は、まだいない。
そして、アリシア・フォン・ヴァインベルクの名は、完全に忘れ去られようとしていた。
――王国の食糧庫が、その底を見せ始めるまでは。
「……これが、現状かね」
国王の執務室には、重苦しい沈黙が垂れ込めていた。二年続いた記録的な日照りにより、王国の穀倉地帯は壊滅的な被害を受け、民衆の間では食糧不足への不安が日に日に高まっている。
「はっ。各地の備蓄は、もってあと三ヶ月。近隣諸国も天候不順を理由に、穀物の輸出を渋っております」
宰相の報告に、国王は深く眉間の皺を刻んだ。その隣で、アルフォンス王太子は他人事のように窓の外を眺めている。
「民が飢えては、国が乱れる……。何か手はないのか」
その時、一人の男が静かに口を開いた。王太子の側近、クリストフ・ダールシュタット侯爵子息である。
「陛下。一つだけ、まだ尽くしていない手が」
「申してみよ」
「……アウベリィブ領です」
その名が出た瞬間、アルフォンスが忌々しげに顔を向けた。
「あの女のいる土地か。国で最も貧しい、忘れられたような場所ではないか」
「それが、殿下。最新の報告によりますと、アウベリィブは日照りの被害をほとんど受けておらず、それどころか、二年連続で驚異的な豊作を記録。巨大な備蓄倉庫をいくつも満たし、その余剰穀物は王国全土の一年分に匹敵する、と」
「「な……!?」」
国王と宰相が、絶句した。アルフォンスは「馬鹿な! 報告の間違いだ!」と叫ぶ。
クリストフは、動揺する彼らを落ち着かせるように、続けた。
「間違いございません。かの地では、二年前から徹底した水利工事と土壌改良が行われ、日照りに強い新品種の作物が計画的に栽培されていたのです。すべて……アリシア嬢の指揮のもとに」
室内の誰もが、言葉を失った。
国が認めた悪女、追放同然に王都を去った令嬢が、国を救うほどの偉業を、誰にも知られず成し遂げていた。
しばらくの沈黙の後、国王が重々しく口を開いた。
「……クリストフ。使いに行け。国の名において、アウベリィブに食糧支援を要請するのだ。条件は、全て呑む、と伝えよ」
二年の月日を経てクリストフが訪れたアウベリィブは、彼の記憶にある寂れた土地とは、まるで違う場所に生まれ変わっていた。活気あふれる市場、整備された水路、そして何より、人々の顔が明るい。
領主の館で彼を迎えたアリシアは、もはや「氷の薔薇」の面影はなかった。実用的ながらも洗練されたドレスを身にまとい、その立ち居振る舞いは、公爵令嬢というより、若く有能な女王の風格を漂わせている。
「ようこそ、クリストフ様。お話は伺っておりますわ。この国が、わたくしの助けを必要としている、と」
彼女の紫水晶の瞳には、全てを見通したような、穏やかな自信が宿っていた。
「……見事と言うほかない。君は、本当に国を救う英雄になったのだな」
「英雄などではございません。わたくしはただ、わたくしの民が、豊かに暮らせるように努めただけですわ」
クリストフは、国王の言葉通り、彼女に国の窮状を訴え、支援を要請した。
アリシアは静かに頷くと、「ええ、もちろん協力いたしますわ」と、あっさりと請け合った。
「ただし、条件が三つございます」
「聞こう」
「一つ。わたくしの罪状を全て取り下げ、公式に名誉を回復すること。表向きの理由は『領地の不正を調査するための極秘任務だった』とでもすれば、王家の面子も保てるでしょう」
「……承知した」
「二つ。ダイアナ・アシュリー嬢と、男爵家の出であり近衛騎士ジュリアン・クラーク卿の婚姻を、王家の名において承認し、祝福すること」
その言葉に、クリストフはわずかに目を見開いた。彼女は、自分のことだけでなく、親友の幸福も、この交渉の切り札にしていたのだ。
「……それも、陛下にお伝えしよう」
「そして、三つめ」
アリシアは、窓の外に広がる自分の領地を見やりながら、きっぱりと言い放った。
「わたくしは、王都には戻りません。このアウベリィブの統治権を、ヴァインベルク公爵家からわたくし個人へと正式に委譲し、その自治を認めていただきます。これが、わたくしが差し出す穀物への、正当な『対価』ですわ」
―・―・―
アリシアの条件は、すべて受け入れられた。
国王は、息子のプライドよりも、国民の命を選んだのだ。
王宮の大広間では、アリシアの名誉回復を祝う式典が開かれた。国王自らが、彼女の「功績」を称え、深々と頭を下げる。その隣で、アルフォンス王太子は、屈辱に顔を歪ませ、唇を噛みしめることしかできなかった。
自分が断罪した女。
自分が救ったはずの女。
その全てが、壮大な茶番劇だったという事実を、彼はこの数日で嫌というほど突きつけられた。ダイアナは、彼ではなく一介の騎士を選んだ。そして、国を救ったのは、彼ではなく、追放したはずのアリシアだった。彼の信じていた「真実」は、音を立てて崩れ去ったのだ。
これは復讐劇などではない。ただ、それぞれの人間が、自分の人生を選び取った結果に過ぎなかった。
数日後、王都の教会で、ダイアナとジュリアンのささやかな結婚式が執り行われた。
純白のドレスに身を包んだダイアナは、涙を浮かべて、ただ一人式に参列した親友の手を握った。
「ありがとう、アリシア……。あなたのおかげで、夢が叶ったわ」
「礼を言うのは早いわよ、ダイアナ。あなたには、アウベリィブとの交易窓口になってもらうのだから。これから、しっかり働いてもらうわ」
悪戯っぽく笑うアリシアに、ダイアナも「お手柔らかにね、領主様」と笑い返した。
王都での役目を終え、アウベリィブへと帰る馬車に乗り込むアリシアを、クリストフが見送りに来ていた。
「これから、君はどこへ向かうんだ?」
「どこへ、ですって? 決まっているではありませんか。わたくしは、わたくしの国へ帰るのですわ」
そう答えたアリシアの顔は、今まで見たどんな表情よりも、誇らしく、輝いていた。
「……アリシア嬢」
クリストフは、どこか吹っ切れたような、清々しい笑みを浮かべた。
「いつか、君の国に、正式な使者として訪れても?」
「ええ、歓迎いたしますわ、クリストフ様。その時は、最高のワインを用意してお待ちしております」
馬車はゆっくりと走り出す。
遠ざかる王都に、もう未練はなかった。
公爵令嬢でもなく、王太子妃でもない。ただ一人の人間として、自らの足で立つ場所と守るべき民を得た彼女の未来は、どこまでも明るくどこまでも自由だった。
かつて「氷の薔薇」と呼ばれた令嬢は、誰にも知られず、痩せた大地に、豊穣という名の美しい花を咲かせた。
ーーその花は、何よりも気高く、彼女自身の生き方そのものだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
悪役令嬢と王太子の想い人のヒロインが親友だったら?というテーマで作ってみました!
ちなみに裏話として、アルフォンス王太子はダイアナに対して、一目惚れし一方的に好きになったという経緯があります。元々好きな人がいるダイアナに対して、権力を使ってグイグイ迫ったアルフォンスに対して、アリシアはあのように低い評価を下しているという訳です!
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