魔王軍襲来
王都アルディアは、巨大な城壁に囲まれた繁栄の都市だった。
石畳の道の両脇には商店が並び、人々の笑顔と活気に満ちている。
俺たちが馬車から降り立つと、群衆が歓声をあげた。
「勇者様だ!」
「異星からの救世主だ!」
俺は少し戸惑いながらも手を振る。
科学技術の力を“勇者の魔法”と信じてくれる彼らの笑顔を、無下にはできない。
その夜、王立学院での歓迎会に招かれた。
王国の若き騎士や魔導士たちが集まり、俺たちを好奇と羨望の目で見つめてくる。
そこに、一人の青年が歩み寄ってきた。
漆黒の髪を束ね、鋭い目をした剣士。
「貴様らが“勇者”か」
彼は冷ややかに俺を見据えた。
「この国を守るのは、俺たち王国の騎士団で十分だ。異星の者など必要ない」
周囲がざわめく。
王国一の剣士と称えられる青年――カイン・ドラン。
彼は俺たちを露骨にライバル視していた。
「おいおい、喧嘩腰はよせよ」
ザルクが腕を組んで睨み返す。
だが、俺は一歩前に出て微笑んだ。
「安心しろ。俺たちは敵じゃない。同じ目標を持つ仲間だ」
カインは鼻を鳴らした。
「……口先だけの勇者ごっこが、どこまで通用するか見ものだな」
その瞬間、城都の外から轟音が響いた。
空が赤く染まり、爆炎が上がる。
報告に駆け込んできた兵士が叫ぶ。
「魔王軍の軍勢が城門に迫っています! 幹部クラスの魔族を確認!」
ざわめきが悲鳴に変わる。
王城の窓から見下ろせば、黒い鎧の兵士と翼を持つ魔獣の群れが街を蹂躙していた。
その先頭に立つのは――血のような赤いマントを羽織った巨躯の魔族。
燃える双眸が、俺たちをまっすぐ見据えていた。
「勇者よ……見つけたぞ」
重低音の声が王都全体に響く。
幹部級魔族の一人、〈戦鬼将軍バルザーク〉。
その手には巨大な黒槍が握られていた。
王子が蒼ざめ、騎士たちが慌てて武器を構える。
だが、相手は並の兵でどうにかなる存在ではない。
俺は腰の電子ブレードを抜き、仲間たちを見た。
リィナはレーザー・ボウを展開し、ガルドはシールドを強化。
ミリアのドローンは空に散開して索敵を始める。
「ここで退いたら、王都は終わる……!」
俺はブレードを構え、前に踏み出した。
――そして、王都を舞台にした最初の大規模戦闘が始まった。