魔王軍の侵攻
空を焦がす咆哮。
大地を揺るがす足音。
天を埋め尽くす無数の翼――。
それは一国どころか、世界を丸ごと呑み込むほどの軍勢だった。
魔王の号令のもと、魔王軍がすべての領土から兵を集め、ついに「総力戦」に動き出したのだ。
荒野を埋め尽くすのは、黒き甲冑を纏った兵士の大群。
その数――千万を優に超える。
空にはドラゴンの群れ。翼竜、火竜、雷竜、古き巨竜までもが飛び交い、空を暗雲のように覆い隠す。
地上では巨人族が山を歩むが如く進軍し、その一歩で城壁すら崩れ落ちる。
さらに無数の騎獣――牙を持つ獣、鉄の鱗を持つ異形の獣たちが、波のように押し寄せる。
そしてその中心。
漆黒の魔王が高き玉座に代わり、軍馬にまたがって先頭に立っていた。
魔王の周囲には、すべての幹部たちが揃っていた。
炎を操る将軍、影を操る暗殺者、死霊の大軍を率いる屍王、千の魔法を自在に操る大魔女...etc
かつてはそれぞれが戦場を壊滅させた存在――その全員が集結し、勇者一行を討ち滅ぼすために牙を剥いている。
「聞け、我が軍勢よ!」
魔王の声が轟き、大地を震わせた。
「奴らは天より来た異邦者。
神をも凌ぐ技を持ち、この地を愚弄する者ども!
だが恐れるな。ここに全ての魔族が集いし今――
この戦こそが世界を決する!!」
その声に応じ、千万を超える兵の鬨の声が天を揺るがす。
「オオオオオオオオ――――ッ!!」
魔王は続けた。
「勇者とやらを恐れる必要はない!
星障壁はすでに発動した。
奴らの天の光は、この地には届かぬ。
勝利は我らのものだ!」
魔王の瞳が紅く輝き、全軍に恐怖を忘れさせる。
その報せは、王都にもすぐに届いた。
伝令は震える声で告げる。
「ま、魔王軍が……すべてを……すべての兵を結集させて進軍してきます!
兵の数は星を覆うかの如く……! すでに空も地も闇で満ちております……!」
王都は騒然となった。
人々は恐怖に叫び、騎士や兵は顔を青ざめる。
そんな中――勇者たちは、冷静に窓の外の空を見つめていた。
星を覆うほどの闇が迫るのを。
主人公は肩をすくめて言った。
「……なるほどね。魔王軍の軍勢を全部持ってきたってわけか」
仲間が苦笑する。
「そりゃあ、相手も本気ってことだな」
主人公は腰の電子ブレードを撫でながら、静かに呟いた。
「じゃあ俺たちも――宇宙の力を、本気で見せてやるしかないか」
その瞳には恐怖はなかった。